プロローグ
鬱蒼とした森の中、俺ことルーク・ノートはたった1人脇目も振らず走っていた。
草木を掻き分け、木の根を飛び越え、飛び込んでくる攻撃を躱しながら前に前にと走り続けた。
身体は至る所に怪我があり、特にひどい右足は肉が抉れ骨が見える程の傷でかなり痛む。
傷の度合いから今すぐ治療を施さなければ後遺症が残る代物だ。
それでも俺は走り続けた。背後から迫ってくる絶望から逃げるために。
背後からはいくつもの違う唸り声と争うような音が聞こえる。確認はしていないが間違いなく、俺を追っているのだろう。
どんな奴が追っているのか、どれ程の数なのか、好奇心とは少々違うもののそういった気持ちも溢れたりするが、一度でも振り向いたら心が折れてしまうと、確信があった。
25歳の短くも長い人生の中で、これ程のピンチは無く、現状の打破は不可能だと感じた。
何を間違えたのだろうか?
頭に過ぎるその言葉に、俺はこの依頼を受けた事だと、自問自答する。
何をすれば良かったのか?
また、頭に過ぎる言葉に、俺はこの依頼を受けなければ良かったと、後悔する。
そんな自問自答は続き、過去について考えているのだから、これは走馬灯になるのだろうか?と頭に過ぎったりと、もう俺の頭はもう諦めたかの様に無駄な事を考えてしまう。
そしてまた、自問が過ぎる。
何か思い残すことはないだろうか?
また、頭に過ぎる言葉に俺は……………………………………………ある‼︎沢山あるんだ。まだやりたい事もやり残してる事も言わなきゃいけない言葉も‼︎
たった一つの自問で俺の心が、燃える様に熱くなった。
現実逃避気味だった頭が、少しマシになった。
しかしながら、依然として背後からの追走から逃れる術は思いつかない。
助けを期待したいが、此処はそんな期待をことごとく踏みにじる場所だ。
此処はロムウェル王国に位置する立ち入り禁止区域、厄災の森の奥地。
そんな所にいる俺を助けてくれる可能性はゼロだ。
だからこそ走る。この誰も助けてくれないこの地から生き残る為に。