9 どうするの?
昨日までの発熱が嘘みたいに、朝起きたら、すっかり下がった。
今日は、念のために家で大人しくしとくけど、勉強したくないからマンガでも読もっかな。それとも、そらをモフろうかな。
俺は、そんな事を考えながら鼻歌を歌いつつ、今日の服を選ぶ。家にいる予定だから、Tシャツとキュロットでいいか。
クローゼットから紺のTシャツと白いキュロットを出す。――汗かいたし、キャミソールも変えとこ。
パジャマ代りに着ていたTシャツとキャミソールを脱いでたら、間仕切り代りの本棚の向こうから、声をかけられた。
「 夕陽おる? 」
振り返ると、雫ちゃんの双子の兄 音無仁がいた。俺は、キャミソールを握ったま思考が停止した。
キャミソールも脱いでるから、上半身裸だ。当然仁には、胸が見えてる。
仁は、俺の頭から、胸へと視線をスライドさせて、胸をガン見してくれた。
「 仁! 人の胸ガン見しょうらんと、 (してないで、)はよ、出てけ!」
「 ごめん。夕陽が女の子なん忘れとった。」
謝りながら引っ込む仁に、俺は、足元に置いてた、週刊少年漫画雑誌を仁に投げつけてやった。仁は、頭に雑誌を食らったみたいだ。唸り声をあげてる。
ほの少しだけ溜飲は、下がったけど、まだまだ気分は、収まらない。
泣きたい気分半分怒り半分な気分で、着替えると、本棚の向こうで唸り声をあげてた仁の前に、仁王立ちして詰問する。
「 仁。お前さ、わざとじゃろ? 俺が女の子になっとんの知っとって、覗きに来たんじゃろ?」
「 じゃけ、ほんまに忘れとったんじゃって」
「 じゃあなんで、胸ガン見したん?」
「 ほんの出来心です。 可愛い ぐは!」
これ以上問題発言されちゃ困るから、最後まで言う前に、みぞおちにパンチを食らわしてやった。
「 で、仁は、なんでおるん?」
復活した仁に、俺は、質問する。
仁は、一学期の後半に急に俺の通っていた高校に編入したはず。 ここから通うのは大変だから、俺の実家から通ってる。
「 母さんや雫に帰ってこいって言われたけぇよ。 」
「ほうなん。」
「 それは、そうと夕陽。いつまで、伯父さんや伯母さん朝陽兄さんに黙っとくん?」
「 それは、」
俺は、仁のすぐ質問に答えれない。仁の言う伯父さんと伯母さんは、俺の実の両親で、朝陽は、俺の実の兄。
まだ今の俺の事は知らない。そもそも、会ってがいいのかさえ、わからない。
というのも、一度死んだはずの人間だし、性別も変わってるし、本来の年齢よりも幼くなったりしてるから、色々複雑過ぎる。何より、家族がどんな反応するのか、怖いんだ。
そんな事考てたら、仁が俺の視線にあわせてこう言ってきた。
「 ごめん。そうすぐ答えれんよね。お兄ちゃんが悪かった」
「 うわキモ。自分でお兄ちゃんとか言うなや」
お兄ちゃんだって。確かに、戸籍上兄貴だけどさ、お兄ちゃんとかキモい。大体今まで、そんな事言った事ないのに。まあ、仁のお兄ちゃん発言のお陰?か沈んだ気分は、やわらいだけど。
「 ――会ってみたいとは思ってる」
「 そうか。」
後日家族に会って、色々と大変だったのは、別の話だ。




