7勉強会
翌日。父さんが言った通り、林原さんが家にやって来た。むちゃくちゃ困った顔して、俺の部屋に入ってきた。
ちなみにアキは、遊びに行っていていない。
「 きみのお父さん変わってるね。」
「 ごめんなさい。 無理を言って。」
「 まあ、別に僕としては、嬉しいけど。」
「 へっ?」
「 いや、なんでもない。それより、勉強を始めようか。」
林原さんは、無理やり話題を変えた。なんか、適当にはぐらかされた気がするけど、まあ今は、編入試験対策が先だ。
俺は、机に参考書や問題集ノートを出す。
「 お願いします。」
「 夕陽ちゃん。得意な科目と苦手な科目は、何かな?」
「 俺の得意科目は、数学で、苦手なのは、英語です。」
「 じゃ英語から始めようか。どんなとこがわからないのか知りたいから、問題集のこのページの問題解いてみて。夕陽ちゃん。」
この前あった時も、ちゃん付けで呼ばれたんだっけな。なんか慣れないから、くすぐったい。
異世界にいた時も、夕陽ちゃんって呼ばれてたけどさ、なんか違うんだよ。異世界でちゃん付けて呼んでたの、町のおじさんやおばさんだけだったってのもあるけど。
同年代しかも歳上の人から呼ばれた事ないせいかも。
俺は、そんな事を考えながら問題を解いていく。
「 終わりました。」
「 答え合わせするから、待ってて。」
林原さんは、俺から問題集を受けとると、答え合わせをする。
しばらく、林原さんが赤ペンで丸ばつをつける音だけがしていた。
「 はい。終わったよ。間違えたところ、僕が解説するから、その後やってみてね。」
「 あっはい。」
俺は、間違えたところを直す。どうやら、手取り足とり教えてくれる訳じゃないみたいだ。
アキとアキの彼氏みたいなシュチュエーションで勉強してたら、俺は、集中出来なくなるから、ありがたいけど優しそうな見た目と違って、林原さんって意外と厳しいのかもしれない。
――でも、ちょっとだけ、優しくしてくれてもいいんじゃないかな?
「 今日はありがとうございました。」
「 いや、別にたいした事じゃないし。」
一通り試験対策の勉強を終え、お礼もかねて、お茶をしていた。
「 そういや、夕陽ちゃんって、俺っ子なんだね。なんで? 」
唐突に訊かれて、俺は、一瞬答えに詰まるが、父さんと一緒に考えた嘘の事情を話す。
「 えーと、兄さんがいるから。雫ちゃんから聞いたと思いますけど、俺、兄貴以外身寄りないんですよ。色々あって、最近この家に引き取られたんです。」
林原さんは、俺の話した嘘に納得してるけど、俺は罪悪感で一杯だ。
まあ、実は元男です。一度死んで、異世界転生で、女の子になりました。色々あってこっちに戻りましたなんて言えない。
いつか話さなきゃいけないかなあなんて、俺は、考えていたのだった。




