38 お願いします。
「改めて言います。僕と結婚を前提に付き合って頂けませんか?」
「 お願いします」
俺はそう言って、頭を下げていた。
前告白した時は、もっと軽い感じだったけど、今はキチンとした感じで返事した方がいいかなって思ったから、こんな返事になったんだけどね。
パチパチと、拍手が聞こえてきた。
隆史父さんと紫織母さんは、笑顔で、朝陽兄さんは、ブスくれた顔のままで拍手してくれてる。
なんか恥ずかしい。でも祝福してもらえて嬉しいな。――若干1名程そうじゃない人もいるけど。
その後、お祝いって訳じゃないけど、紫織母さんが、ごちそうを作ってくれる事になった。 せっかくなので、俺も手伝う事にする。
「 なんか変な感じね。夕陽とは、何度も一緒に料理してるけど、まさかこんな形で、女の子になったあなたと料理するとは、思ってなかったわ」
「……そうじゃね 」
男だった頃も、しょっちゅう台所立ってな。あの頃は、すぐにお腹が空くんで、自分でも簡単な料理が出来りゃ、いいかなって思って、料理覚えたんだよな。
「 そう言えば、林原くんには、何か作ってあげたの?」
「なっ 何?藪から棒に訊いてくるん?」
紫織母さんの質問に驚いて、危うく包丁で、指切るとこだったぞ。
「 そんなに驚かなくても、いいじゃない。ねっ作ってあげたの?あげてないの?」
「 あるよ。簡単なお弁当とか、バレンタインには、手作りのチョコあげた」
「 あらそう。美味しいって言ってくれた?」
「 うんまぁ」
「 やー、ねっその時の事聞かせてちょうだい」
「 ええっ!やだよ」
「 そんな事言わずにねっ?」
「わかったよ」
料理をしながら、紫織母さんと恋ばなで、盛り上がってしまった。
すべての料理が出来上がり、盛り付けながら、紫織母さんが、こう言った。
「 今日の服、花嫁さんみたいね。いつか絶対に花嫁衣装見せてね」
「 うん」
俺は返事だけした。今日の服、「 白いワンピース着て来てね」って拓人さんが言ってたのは内緒だ。また紫織母さんが騒ぐかもしれない。
その後、紫織母さんと俺が作った料理を食べながら、隆史父さんや朝陽兄さんとも沢山話しした。ただ、朝陽兄さんは、最後まで不機嫌だったけど。
隆史父さんは、俺と拓人さんが付き合うきっかけになった出来事を聞いたあと、紫織母さんとのなれそめを聞かせてくれた。
「 じゃあね。また来るね」
「 おう、待っとるけぇの」
「 夕陽だけでいい」
「 朝陽、いつまではぶてとんな (すねてるんだ) 」
「 まあまあ」
隆史父さんや紫織母さん、朝陽兄さんの会話が終わった所で、おいとました。
「 ありがとうね。拓人さん。どんな贈り物よりも嬉しかった」
「 こっちこそ。ありがとな」
「 あっうん」
返事したとたん、俺はつい泣いてしまった。
「 どうしたんだよ。急に」
「 あっいや。こうやって、大事な人といられる当たり前って、すごい大事な事なんだなっ思ってさ」
そう、本当ならあのまま終わってた人生。だけど、神様の手違いで、異世界へ転生したけど、結局日本へ戻ってくる事になった。最初は、女の子として、普通に生活するのに、背一杯だった。まあ今も大変な事も、まだまだあるけどさ。
異世界で生活しとっても、良かったかもしれない。でもね、異世界でチート能力使わなくても、十分幸せに生きられるんだよ。 家族、友達、仲間あるいは恋人。
現実世界でも、自分の大切な人といられると俺は思うんだ。
だから――
「 これからも、ずっとずっとよろしくね」
「 ああ、死ぬまで、ずっとな」
本編は終わりです。最後1話で終わりです。




