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36 バレンタインじゃー。その3

更新遅くなってごめんなさい。


「 うし 」


朝、起きて顔洗って気合いを入れる。今の俺の気分は、討入りに入る武士の気分だ。

昨日お風呂で髪に念入りにトリートメントし、寝癖がつかないように乾かしたお陰で、今朝は、寝癖もアホ毛一本も立ってない。

髪はあとで結ぶから、今は軽くブラシを通しておく。


朝食を食べると、自室へ戻り昨日準備した勝負服に着替える。

淡いイエローのカーディガンに白いブラウス。ピンクベージュのミニスカートと黒いニーソックスという。いつもモノトーンの服や制服しか着ない俺だけど、今日は百八十度違う服装だ。


この前、春物揃えるのに見つけた物なんだ。本当は、2月12日に着る予定だったのに。拓人さんてば、日付急遽変えるんだもん。


髪をいつも通り結ぶ。 朝起きた時より、丁寧にとかしてから結んだ。

ふと、鏡に写る自分と目があった。鏡の中の俺は、とても彼氏に会いにいくと思えないほど、ふて腐れた顔をしていた。

拓人さんに会ったら何言われるかな。まぁいいか、今回変なお願いしてきた拓人さんが悪いんだ。


俺はそう思うと、スマホとお財布を入れた小さな斜めがけのバッグとチョコを入れた手提げの紙袋を持って家を出た。



10時ジャストに、いつも待ち合わせに使ってる公園についた。

待ち合わせ場所の時計台の下には、拓人さんと見知らぬ男子高校生二人。あの二人が、(くだん)の後輩か。


「 待った?」

「 いや、全然」


お決まりなやり取りをしてると、拓人さんのやや後方から、見知らぬ男子高校生二人が、こそこそ話してる。「うわっ、ちっさいな」「 中学生らしいけど、ふけ顔の先輩と並ぶと、サラリーマンと小学生に見えるぜ、よくケーサツに通報されないな」とか、聞いてれば、ムカツク内容だ。


「 拓人さん、チョコ持ってきたよ」

「 ありがとうございます」


拓人さん、敬語になってるし。ムチャブリしたもんだから、俺が怒ってるのわかってるみたいだ。


「 スゲー、本当に持ってきたよ」

「 イヤイヤ、中身確かないと。この娘が、マジで先輩の事愛してんのか証明出来ませんよ」

「 それも、そうか 。つうわけで、先輩、今、チョコを出して見せてくださいよ」

「 お前らな、夕陽が来た時点で、納得する約束だったろ、話が違うじゃないか」

「 でもねぇ」


拓人さんと拓人さんの後輩二人が、やり合ってる。昨日、急遽チョコを準備する羽目になったのは、あの二人のせいなんだ。なんでも、俺と付き合ってるのは、拓人さんが脅して付き合ってるんじゃないかとかという、なんだかよくわかんない噂が、拓人さんが所属してるバスケ部内で、流れてるらしく、拓人さんが、噂を否定したら、今拓人さんと言い争ってるおバカ後輩AとBが、俺に手作りのバレンタインチョコを持って来させるように言ってきたらしいんだ。

拓人さんは、埒が明あかないと思ったのか、さっき渡した紙袋から、ラッピングしたチョコを取り出す。




「 ……仕方ないな、そこまで言うなら、開けてやるよ」


――冗談じゃない! 苦労して作ったチョコ他人にされされてたまるもんか!


「 ちょっと待って!開けんといて! これなら、文句無いでしょ」


俺は、拓人さんを無理やり、しゃがませ、頬っぺたにキスしてやった。

拓人さんはもちろんの事、おバカ後輩AとBも固まってる。



「 この人の事、私、超愛してるの。これで、わかった?」

「「はい」」


おバカ後輩AとBは、呆気にとられた顔したまま俺達の前から去っていった。


安心したせいか、俺はペタんと地面に女の子座りしてしまった。


てか、俺何やってんだろ? とっさだったとは言えさ、女言葉使ったり、『私』って言ったり、ましてや人前で、キスしちゃったりさ。――恥ずかしい、穴があったら入りたい。


「 ごめん。夕陽。恥じかかせるような事して」


そう言って、座りこんでる俺に手を差し出す拓人さん。拓人さんの手を借り立ち上がる。もう怒ってない。恥ずかしい気持ちのが大きいけど、わざとむくれてみせた。


「 ホンマよ。もう無いと思うけど、こんな恥ずかしい気持ちは、こりごりじゃけんね」

「 本当にごめん。これクリスマスにあげたやつ?」

「 うん、そう」


俺は、頭に付けてるヘアゴムを取った。

コインのような丸い飾りのついたヘアゴム。飾りの部分には、俺の星座である天秤座のモチーフが施されてる。拓人さんがクリスマスにくれた物だ。

最初は、休みの日だけ使おうかと思ってたんだけど、なんとなく無いと不安なんで、学校へ行く時も、制服のポケットに忍ばせてるし、家でも、手首に付けてるから、お守りみたいになってる。ちなみに、先日ゴムの部分がみょんみょんに伸びてたんで、似た色を探してきて、付け替えたばかりなんだ。


今日も、あの二人が納得しなかったら、見せつけてやるつもりで、髪に付けて来たんだ。だけど、結局は、俺が拓人さんにキスするという結末になってしまった。


「 それは、そうと夕陽」

「何?」


振り向き様に、頬っぺたにキスされたし。


「 さっきのお返し」


ニヒッと、拓人さんは笑った。俺は、恥ずかしいやら嬉しいやら、よくわからない気分になった。


生まれて初めてのバレンタイン。最初から最後まで、めちゃくちゃだったけど、これはこれで良かったのかもしれない。

めちゃくちゃなバレンタインの話になってごめんなさい。

次は、番外編です。とある人が主人公です。

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