35 バレンタインじゃー。その2
放課後。俺達は商店街の外れにあるファッションビルに来ていた。
平日の夕方だけど、最上階のバレンタイン特設の売り場には、思ったより女性がいた。
俺達みたいな中学生や高校生から大学生や20代から50代くらいの女性がいた。
「 とりあえず、今日はどんなのがあるのかだけ、チェックしようか」
「 ほうじゃね。( そうだね)明後日休みじゃけ、その時また来ようか」
今日は下見という事にして、俺達は、売り場をぐるっと回って見た。
拓人さんの事ばかり考えてたけど、よくよく考えてみたら、隆史父さんや朝陽兄さんにも、チョコ送った方が喜ぶよな。
俺は、拓人さんの手作り用のチョコの材料選びより先に、二人の分を買っておく事にした。――今買っとかないと、忘れそうなんだよな。
一旦アキと別れて、既製品のチョコのコーナーを見て回って気づいたんだけどさ、やたらハート型のチョコが多くないか?
まぁバレンタインだから当たり前なんだろうけど。
たまに違う型があっても、キャラクター物だったり、動物のモチーフだったりするんだ。ちょっと可愛い過ぎるな。
女の子は、可愛い物がいいって思うんだろうけど、受け取る側としては、やや抵抗があるかも知れない。
俺はそれを踏まえてチョコを選ぶ。
「 これならいいかも」
リーフ型のチョコ。これなら可愛い過ぎないし、値段もお手頃だ。
これを二つ購入して、平原家へ送る手配をした。バレンタイン当日は、平日だから行けないのだ。 後で、紫織母さんに連絡しとこう。
「夕陽、終わった?」
「 ごめん。終わったよ」
アキと合流し、手作りチョコのコーナーに向かう。俺とアキは、材料や道具にいくつか目星をつけて、今日は家に帰った。
後日。アキと再びファッションビルの特設売り場に向かい、先日目星をつけておいた材料と道具を購入した。
「作るのは、来週にしよ 」
「 ほうじゃね」
ファッションビルから自宅マンションに帰ると、拓人さんから携帯にメールがきてた。メールの内容を読んで、一瞬息が止まりかけたぞ。
「 アキさーん! お願いでやんす。今すぐに、チョコ作りしましょうや」
「 えっ何なん?急に? てか、夕陽おかしい日本語で、話しとるん?」
「 ちょっと、このメール読んで」
「……何、この理不尽な要求は。わかったよ。夕陽の為だ。今すぐ作ろうか」
拓人さんの無理な要求を叶える為、急遽、バレンタインのチョコ作りを俺とアキは、始めたのだった。
手作りといっても、シリコン製の型にチョコを流しこんで固めるだけだから、手間事態そんなにかからないんだけど、ただ、今日もともと作る予定じゃなかったから、準備に思いの外、手間どったよ。
それでも、きちんと綺麗なチョコが出来て良かった。
「 それにしても、林原さんも、むちゃくちゃな要求するね。バレンタイン当日は、進路指導の面談で会えないから、12日の日曜日指定してたのに、明日急にチョコもってこいなんてね」
「 まあね」
チョコを作り終えて、アキと一息入れてるとこだ。メール読んで、事情知ってるけど、アキは納得出来ないみたいで、ぷりぷり怒りながら、文句を言ってた。
俺も、色々と予定が狂うから、文句言いたいけど、事情が事情なので仕方ないと諦めめてる。
「 むぅ、しかし服どうしよっかいの。この前、買った服着るしかないか」
「 あっ、夕陽。服もじゃけど、あれ忘れさんなよ」
「わかった」
その日の夜。明日着る勝負服と忘れないように、ある物も一緒に準備してから、俺は眠りについたのだった。




