33 勉強
「 ふああ、眠い~。学校行くんたいぎい( めんどう)」
「 ……ウチも。」
アキと俺は、洗面所で髪を整えながら、そんな事を呟く。
お正月が終わって数日。今日から学校である。お正月にだらだらしてたのがいけない。冬休み残りの数日も何となくだらだら過ごしてしまった。
――正直反省してるよ。
俺とアキは、洗面所を出てキッチンに入る。
ちなみに我が家は、朝食は一応各自用意する事になってるけど、俺がこの家に来てからは俺が準備してる。まあ、料理は嫌いじゃないから苦にならないけどね。
父さんは、昨日遅かったみたいでまだ寝てるし、母さんは当直だし、雫ちゃんは、朝はヨーグルトひとつで済ませちゃうから、俺とアキのぶんだけ準備する。
今朝は、トーストと卵焼きとサラダ。インスタントのスープという簡単な物だ。
「 そういや明日テストじゃん。」
「 ……やな事思い出させんでや。」
俺は、トーストをかじりながら、嫌な顔をする。
「 そう言うわりには、夕陽、ソファーでゴロゴロしながら、勉強しようたよね。」
「 だって、ああした方が頭に入るんじゃもん。ついでにゴロゴロも出来るし。」
「 机にかじついっとったウチへの当て付けか!」
「 別にそういう訳じゃ、ありゃせんのじゃけど。」
そんな会話を交わしながら、朝食を食べ終えると、皿を片付けると学校に行く。
学校に向かう道すがら、アキと俺は、いつものようにおしゃべりしながら、学校に向かっていた。
「 ねぇ、夕陽。今日さあ、香澄と勉強する約束しとるんじゃけど、夕陽も一緒にせん?」
アキは、そんな風に誘ってくれるが、俺は先約があるから断る事にする。
「 ごめん。他に約束があるけん無理。」
「 むぅ、さては、林原さんと勉強するんじゃろ?」
「―― ほうよ。」
「 はあ、ほんなら無理じゃね。はああ、ええな、ウチも夏樹先輩と勉強したいけど、夏樹先輩部活で忙しいんよね。」
「 そうなん。」
やがて教室に入ると、アキと俺は、それぞれ自分の席に荷物を置いて、仲の良い友人の元の行く。
いつもなら、おしゃべりをしてる時間だが、明日のテストに向けて皆テスト勉強を一緒にしていた。
朝のホームルームの後は、始業式のみですぐに学校は終わった。
帰りのホームルームが済むなり俺は、ソッコーで、拓人さんの家に向かった。
「 お願いします。」
「 今日もビシバシいくからね。」
「 はい。」
アキは、羨ましがっていたけど、正直言って、勉強を教えてくれる時の拓人さんは厳しい。あるはずの無い鞭が何故か俺には見えるんだ。
アキの彼氏 夏樹先輩みたいに優しくない。
「――やっと終わった。」
テスト範囲である冬休みの課題を復習を終えた俺は、机に伏せっていた。
「 お疲れ様。」
そう言って、拓人さんは、俺の側にココアを置いた。
「 ありがとう。」
猫舌の俺は、ココアを吹いて覚ましながら、チビチビとココアを飲む。
うん、頭を使った後のココアは最高でーす。と、某プロ野球選手の口癖で心の中で感想を言ってみる。
ココアを飲み終えて、俺はいつも疑問に思ってる事を口にする。
「 拓人さん、いつもこうやって、俺の勉強見てくれるけど、拓人さん自分の勉強は、いつしょうるん? (いつ やってるの?)」
「 勉強は特にしてないな。強いて勉強らしい勉強って言ったら、その日のノート見返すくらいかな。大体、勉強なんて授業きいてりゃ何とかなるだろ。机に何時間もかじりつく意味がちょっとわからないな。」
「 普通は、授業聞いただけじゃ不十分だから、家で復習するんじゃけど。拓人さんみたいな人って、ごく稀なんじゃけん。」
拓人さんの意外な所を見つけてしまって、ちょっとだけ悔しいなと思ったのは秘密だ。




