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29 遅いクリスマスプレゼント。

「 やっと治った。」


二日も寝たら、風邪は全快した。俺は、起きるとパジャマからシンプルなグレーのセーターと黒いキュロットに着替える。

拓人さんと今日改めて会う約束をしてる。クリスマスは終わったけど、どうしても渡したい物があったし、三学期に入ると拓人さん忙しくなるみたいだから、会える時に会っとこうって、昨日電話で話したのだ。




「……早過ぎたかな。」


待ち合わせ場所の公園。約束の十時より十分も早く来てしまった。

まあ、この前よりはましなんだけど。


「 待った?」

「 いやそんなに待っとらんよ。」


とお決まりな会話を交わしながら、俺と拓人さんは公園から商店街に移動する。


「 どこに行く?」

「 んー。やっぱりいつもの所かな。」

「 ハイハイわかりましたよ」


俺の言ういつもの所とは、商店街の外れにあるファッションビル。

レディースやメンズファッションはもちろんのこと雑貨や本屋もある。地下には食品売り場やファストフード店やレストランまで入ってる。――そして何より。


「 みにゃー。ふわふわモフモフ生物がいっぱいにゃー」


ペットショップが最上階に入ってるんだ。

わんこににゃんこ。ハムスターやウサギやらたくさんいる。毎回真っ先にここに来るんだ。

後ろからついてくる拓人さんは、呆れ顔だ。

でも俺は気にしない。男だった時は恥ずかしくて、外じゃモフモフ生物達を見てもはしゃいだりしなかった。

今は、モフモフ生物達を見てはしゃいでも全然平気だ。


「 あ~、可愛い。撫でたい。モフリたい」


ケージの向こうにいるにゃんこを見ながら、ニマニマしていた。


「 本当に夕陽は好きだよな。猫や犬。」

「 好きだよ~。特に、にゃんこ。一日中見てても飽きないもん。」

「 へーじゃ、僕と一日中いるのと、にゃんこと一日中いるのどっちがいいの?」

「 そりゃ、決まっとるじゃろ。拓人さんよね。」

「 てっきりにゃんこって、答えるかと思ったのに。」

「 そっそんな訳なかろう。なんでそんな事言うん」

「 ごめん。ちょっと意地悪しただけ」

「 んもう!」


俺がぷうっと頬を膨らませると、拓人さんは、笑いながらごめんごめんと言ってきた。


俺達は、ペットショップから移動して、雑貨屋さんや服屋を見てまわった。



「 遅くなったけど、クリスマスプレゼント。」

「 ありがとう。開けていい?」

「 どうぞ」


俺は、丁寧に包装紙を開けると、中から丸い飾りがついたヘアゴムが出てきた。


「 これって、天秤座?」

「 そう。夕陽の星座だよ。」


ヘアゴムの丸いコインのような飾りには、俺の星座である天秤座のモチーフが施されていた。


「 本当はネックレスとかにしようと思ってたんだけど、夕陽そういうの抵抗あるかなって思ったから、ヘアゴムにしてみたんだけど。」

「 ありがとう。ヘアアクセの方が嬉しいよ。普通のアクセだと着けないと思うし。」


元男というのもあるけど、実用性のない物はあまり好きじゃない。自分でも、服や鞄以外で買うのはヘアアクセだ。

ヘアアクセなら、休みの日に着けたり出来るから嬉しい。


「 じゃ今度は俺ね。」


俺は、鞄からプレゼントを出して渡す。


「 これってマフラー?」

「うん。まあ。」


拓人さんに俺があげたのは、手編みのマフラーだ。密かに一月前から少しずつ編んでた物だ。

でも手編みの物を嫌う人もいるんだっけ? 訊けばよかったかも。


「 嬉しいよ。これで疑われなくなる。彼女がいるって言っても信じない連中に自慢してやる。」


ってなんなんだよ。最後の一言は。まあ喜んでいるからいいか。

――このマフラーは、ずっと先の未来結婚してもずっと使いづけてたのは別の話だ。





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