28 お見舞いの裏側
「 失礼します。」
僕はそっと夕陽とアキちゃんの部屋に入る。
今朝、夕陽から風邪をひいたから会えないというメールをもらった。
心配だけど、お見舞いに行くほどじゃないと判断したんだけど、学校から帰る間際、うちの学校の校門で待ち伏せしてた雫のやつに取っ捕まった。
そのままここまで引きずられ来た訳だ。
ちなみに、今アキちゃんはこの部屋にいない。
ドアを開けて、左側が夕陽のスペース。
間仕切り代りの本棚からそっと覗くと、
クウクウと寝息をたてて寝てる夕陽がいた。熱の為か頬の辺りが赤い。
いつも耳より上の髪が結んであるんだけど、髪が今日はおろされてる。
そのせいか、幼い頃妹に、読んであげた絵本の白雪姫か眠れる森の美女を思い出した。
「 どっちも王子様のキスで目覚めるんだったな。」
僕はそう呟く。とある欲望が生まれた。
「 額の辺りにキスしても大丈夫かな。」
――まあこんだけ熟睡してりゃ起きないだろうな。 そういやこの前どっかのバカのせいで、キスしそこねたし。
この時の僕はどうかしてたと思う。
夕陽が起きなくても、雫やアキちゃんがやって来る可能性があるのにかなり大胆な行動だ。
しかし、僕の頭からそんな考えは一つも思い浮かばず、ただキスをしたいその一心で、夕陽の額にキスをした。
「 んう?」
夕陽がみじろいだ。どうやら今ので目覚めたらしい。
ヤバいな。 ばれないよな?
「 調子どうなんだよ。夕陽。」
「 にょえ? 拓人さん? 朝より調子ええよ。」
ボヘーっとした顔でそう答える夕陽。
――バレてないっぽいな。
そう思ったのもつかの間、夕陽が爆弾を投下してくれた。
「 ねぇ、俺の頭に触るかなんかした?」
「 へっはあ?! 何にもしてないよ。うん。断じてしてない。」
夕陽の質問しどろもどろに答える僕。
怪しさ満点だが、夕陽は僕の答えに疑い一つ持ってないみたいで、すぐにこの話題から離れて、僕にスポーツドリンク取ってと言ってきた。
――大丈夫だな。バレてないよな。
その後、夕陽はだるいから寝るねと言ったので、僕はおいとました。
「 はあ。もうあんな事しないぞ。」
うん。キスはそういう雰囲気になってからしよう。僕はそう誓ったのだった。




