26 百合?
「 ここはこうやって解くんよ。わかった?」
「あっうん。」
二学期もあっという間に過ぎて、気づけば期末テストの準備期間になっていた。
今俺は、リビングで、アキと一緒に勉強中だ。
お互いに苦手な教科を教えあいこしてるのは、いいんだけど、アキの体がくっつきすぎなのは気のせいですかね?
どうも落ち着かないないから、俺は身をよじって離れようとするんだけど、アキは離れてくれない。
痺れを切らして、俺はアキに言ってみた。
「 ねぇ、なんでくっついてくるん?」
「 だって、夕陽の体やおいんじゃもん。( 柔らかいんだもん。)」
「 じゃけって、くっつかんでや。離れんさいや。」
「 い・や・よ・ね。むしろ抱きつきたいくらいなんじゃけ。」
「 んあー。とにかく今は駄目ー。気になって勉強に集中出来んじゃろー。」
「 ああん、わかったよ。その代わり後で抱きしめさせてぇや。」
「 あーハイハイ、後でなんぼでも (いくらでも) 抱きしめさしてあげる。」
「 やったー。約束だよ。」
アキはそう言うと、俺から体を離した。
――それにしても、アキって。こんな娘だったっけ? 俺が男だったときも、なついてたけどさ、人に体くっつけるような娘じゃなかったよな。これ以上考えるのは、よそう。なんか百合な展開になりそうだよ。
俺はそう思うと、再び勉強に集中し始めた。
「 はあ~。夕陽ってほんまいい匂いするよね~。」
「 はあ。そうですか。」
「 この髪も触りごごちいいし。」
さっき約束した通り、俺はアキに抱きしめられてる。
まあ、抱きしめられてるといっても、さしづめ巨大なぬいぐるみといったところだろうか。
頭を撫でたり頬擦りしたりしてる。
アキは約5分くらい俺を抱きしめて、満足したのか解放してくれた。
「 ありがとうね。変なお願いきいてくれて。」
「 まあ別にええけど。なんで急に抱きしめさせてって言うたん?」
「 久しぶりに甘えたくなっちゃった。それだけだよ。」
「…‥‥ ほんまに?」
俺はジト目でアキを見る。姉妹の禁断の恋に目覚めた訳じゃないよな?
「 ほんまよね。学校じゃ、夕陽のお姉さんって事になっとるじゃろ。じゃけんか知らんけど、一部の人から音無姉なんて呼び方されとるんよ。それがむっちゃストレスになっとって。じゃけ、夕陽に甘えたくなってしもうたん。」
「――なるほど。じゃったら、そう言えばええじゃろ。あんな事したら、疑いたくもなるじゃん」
「 ごめん」
「 わかったんならええよ」
俺はそう言うと、昔よくやったみたいに、アキの頭をくしゃりと撫でてやった。
「 ありがと。ゆう兄」
アキは昔の呼び名で、もう一度お礼を言ってきたのだった。




