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24 お祭り

10月の終わりのある放課後。

部活が休みだという拓人さんと商店街のドーナツショップでお茶してた時の事。



「 文化祭?」

「 うん。うちの学校のじゃなくて、中島高校の文化祭に行かない?」

「 ええけど……なんで?」

「 仁のやつがクラスの模擬店の売り上げに貢献してくださいとか、変なメールを送ってきたんだよ。」

「 ふーん」



拓人さんと仁は、中学時代部活の先輩後輩の間柄で、たまにメールとか無料通話アプリで連絡を取り合ってるみたいだ。

今回も何だかよくわからないけど、文化祭に来て下さいってメールがきたらしい。


「 それで、中高(なかこう)の文化祭っていつなん?」

「 えーと、今度の日曜日だな」

「 明後日か。何時くらいに待ち合わせする? 」

「 そうだな、向こうに11時くらいには着いていたいから、9時くらいかな。中島市まで2時間近くかかるからな。」

「わかった。」




日曜日。久しぶりに二人だけで出かけるというのもあって、浮かれ過ぎた俺は、待ち合わせ時間30分も前に駅にいた。

ちなみに、今日の俺は動きやすさを重視して、グレーのパーカーと紺のキュロットという組み合わせだ。

早く来すぎた俺は、リュックからカバーをかけた一冊の本を出す。

本は、アニメ化された異世界トリップがテーマの少年向けのラノベ。女の子になったからといって、漫画やラノベの趣味が変わる訳じゃない。

ただ最近は、前と違ってBL好きの雫ちゃんの影響で、BL的な楽しみかたもするようになってしまった。ちょっとヤバいかな?


ラノベを読んでると拓人さんがやってきた。腕時計は、9時少し前を示していた。


「 今日は制服じゃないんだ? 」

「 うん。制服のスカートって動きにくいけぇ。拓人さんも制服じゃなくて、私服なんじゃね」

「 まあね。多分動きまわるからね」


拓人さんの服は、示し会わせたように、俺と同じようにグレーのパーカー下は紺のジーンズだ。

結果的にペアルックになってしまって、ちょっと恥ずかしい。


「 ……いや普段からファッションの事気にしてないから、こんな服持ってないんだよ」


照れ隠しなのか拓人さんは、そう言い訳してる。


「 俺も似たようなもんだよ。それよりはよ行こう」

「 あー、まてそんなに引っ張らないでくれ」


俺は、拓人さんの手をぐいぐい引っ張って、切符の自動販売機に向かった。


電車に乗る事約1時間とちょっと、中島高校の最寄り駅である三城駅(さんじょうえき)に着いた。

ここから、20分ほど歩く。


「 なんか、人多くないか?」

「 中島市の数少ないイベントだからね。地元の人が沢山くるんよ。」

「 そうなんだ。」


俺が住んでいたこの街 中島市には、驚くほど大きなイベントが少ない。

中島市最大のイベントといえば、さっき降りた三城駅(さんじょうえき)周辺で行われる酒まつりくらいだろうか。

あとは、各地域ごとに行われる夏祭りか秋祭りがあるぐらい。それらの祭りも年々規模が縮小されたり、祭り事態行われなくなった地域も沢山あるみたいだから、地元の公立高校の文化祭だけどかなりの人が集まる。

俺と拓人さんは、人混みに苦労しながら、中島高校に向かった。


中島高校。仁やひなが通ってる公立高校だ。俺も数ヶ月前まで通ってた学校。



「 なんか変な感じだな。」

「 どうして?」

「 だって、数ヶ月前まで通ってた学校なんよ。今回、部外者として来るとは、思っとらんかったけん、変な感じがするんよ」

「 そっか」


俺達は校門をくぐり校舎に入る。仁から教えて教室に向かった。


「 第二家庭科室。ここか」


仁とひなの所属するクラスが模擬店をしてるらしい。何の模擬店かは来ればわかると仁は言ってたらしい。

拓人さんが、ドアを開ける。


「 お帰りなさいませ~。ご主人様、お嬢様」


俺達を迎えたのは、メイドさん姿のひなだった。


思わず、拓人さんと俺は、顔を見合せちゃったぞ。なんと言うか、見てはいけない物を見てしまった気分だ。


可愛い声で、俺達を出迎えてくれるから、別人じゃないかと思ってしまうんだ。



「 服部さんだよね?」


拓人さんの質問に、若干ムカついたようで、ひなは、ちょっと顔をひきつらせてる。



「 ほうですよ。林原さん。ちょっと、夕陽、あんた何笑うとんね」

「 いや、だって、ひながメイドさんとかやるとは思わんかったし。」

「 似合っとらんの分かっとるけぇ、ゲラゲラ笑いさんな!」


ひなは、盛大に顔をひきつらせて怒ってる。

でも怒るのも仕方ない。身長165センチありかつ大人っぽい雰囲気のひなが、肩まで伸ばした黒髪をみつあみにし、頭にはヘッドドレス。黒いミニスカート丈のワンピースとフリルたっぷりの白いエプロンとニーハイ。はっきり言って似合わない。

家庭科室内を見ると、客の注文をとってる女子の中には、パリッとした執事服を身に着けてる人がいるところをみたら、女子は必ずしもメイドさんとい訳じゃないみたいだ。


「 なんで、メイドさんなん?」

「 ……仕方ないじゃろ。クラスの女子全員にメイドさんやってって言われたんじゃもん。私は、執事になりたかったのに、それじゃ面白くないけぇ、メイドさんになってって頼まれたんよね。」

「そうなん。」

「 それより、二人を席に案内するね。あっそうそう。ここ、メイド 執事喫茶じゃないけんね。メイド&執事お好み焼き屋じゃけんね。」

「お好み焼き屋」


拓人さんは呆れて周りを見てる。確かにお好み焼きしかない。


ひなは、空いた席に俺達を案内すると、メニューを渡して、簡単に説明してくれる。


「 一応、広島風と関西風。あとトッピングは選べるよ。」

「 じゃあ広島風で。豚玉でお願い。」

「 僕も同じ。」

「はーい。かしこまりましたぁ。しばらくお待ち下さい。」


さっきまでのぶっきらぼうな振る舞いと違って、可愛い笑顔と声でそう言ってひなは去っていった。


「 お待たせしましたぁ。広島風お好み焼きでぇす。最後にひながぁ愛情込めてソースかけまーす。」


ひなは、終始笑顔で言ってるが目は笑ってない。

ひなのラブラブパワー注入なんてセリフに至っては棒読みだ。

そんなひなを俺と拓人さんは、笑いをこらえて見ていた。


「 あー。お腹いっぱい。」

「 僕は物足りないけど。」


家庭科室を出たあと、俺達は他のクラスの模擬店を見て歩いていた。


「 あっわたあめ。買おっと。」

「 お腹いっぱいじゃないのか。」

「甘い物は、別。」


俺は、わたあめを買う為に列に並んだ。


「 夕陽。」

「 ひなと仁。」


振り返ると、制服に戻ったひなと仁がいた。


「 私ら当番済んだけぇ、一緒にまわらん?」

「 ええけど。」

「 という訳で、仁あんたが林原さんに伝えてきんさい。」

「 はあ、お前が言ってこいや。」

「 おだまり。あんた今日は、私の言うことなんでも聞かんといけんのじゃろ。」

「 ……わかりましたよ。行ってくるよ。」


仁はそう言って拓人さんの所に走って行った。


その後、俺と拓人さんは仁やひなと一緒にまわる事になった。





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