番外編 父さん嫌い!
「 のう、最近林原くんと上手くいっとんか?」
「 上手くいっとるよ。」
とある日曜日。自分の部屋じゃ集中出来ないという理由で、リビングで勉強してた俺に急に話をふってきた父さん。
いきなり何だろう?
「 ふーん。そいや、この前誕生日パーティーしたって言うとったが、どうじゃった? 」
「 楽しかったよ。おにゃんこさん。拓人さん家のにゃんこも、誕生日だったんだって。一緒にパーティーに参加してた」
「 にゃんこの話はええけ。二人きりなったんか?」
「 なったよ」
……本当になんだろな?さっきから、イラっとくる質問ばかりしてきてさ。
まあ、ここでキレるのも大人げないしね。
父さんは、ニヤニヤしながら、質問を続ける。
「 ほんなら、キスしたんか?」
俺は、その質問にブチィっとキレた。
さっきまで我慢してたのが、馬鹿馬鹿しい。
「 キスしたとか訊いて最低じゃろ! だいたい、さっきから何なん? 酔っぱらいみたいに絡んできてから! もう、父さんなんか嫌い! 」
俺は怒鳴りつけると、勉強道具を持ってリビングのドアに向かう。
ちらりと振り返ると、俺の嫌い発言にダメージを受けて、リビングの隅っこでしくしく泣いてる父さんがいた。
嫌いは言い過ぎかなと思うけど、デリカシーの無い質問する父さんが悪い。
俺はそう納得し、部屋に戻った。
「 疲れた。英語の予習と数学の復習終わり。さあて、そらモフりに行くかな」
俺は、勉強に一区切りついたので、リビングでゴロゴロしてるであろう愛猫と戯れようと、部屋を出た。
「 ひぃ!」
部屋のドアを開けると、ゾンビじゃなくて、体育座りしてしくしくと泣いてる父さんがいた。
「 父さん。なんでおるんよ」
「 だって、夕陽が嫌いって言うんじゃもん。雫やアキとちごうて ( 違って) 夕は嫌いって言わんと思うとったのに」
そう言って、さめざめと泣く父さん。
「 なんで俺なら嫌いって言わんと思うっとたん?」
「 だって、元男じゃけ父さんの気持ち少しは、解ってくれるって思ったんよね」
「 何を根拠に。だいたい、雫ちゃんもアキも嫌いって言ったん父さんが変な事したけぇじゃろ? さっきみたいに、デリカシーの無い質問するとか。」
父さんはギクリと体を震わせた。
「 ……した事あるんだ?」
「 だって、彼氏が出来たとたんに、父さんの事かまってくれんのじゃもん。母さんとは仲良く話しとるのに。じゃけ、ちいと (ちょっと)意地悪しちゃろうかなって思ったん。いけんか?」
開き直って言う事じゃないし。てか子供かよ。
そりゃ嫌いって言われるわ。
「 あのさ父さん。そういう事すりゃ、嫌いって言われるよ」
「 へじゃあ、どうすりゃええんね?」
「 普通に話すりゃええが。ほんなら、今から俺と話す?」
「 ええんか?」
「 うん」
それから、俺と父さんは沢山話をした。
とはいえ、普通の父娘の会話ってのはよくわからない。
まあ、とりあえず、俺と父さんが好きな野球の話題や学校の出来事なんかを話した。
父さんは、終始笑顔だった。
最近、雫ちゃんやアキに距離を置かれて寂しかったみたいだから、俺との会話は楽しかったみたいだ。
「 夕陽」
「 んー?」
「 キスしたら報告せいや」
またデリカシーの無い事を言いやがる。
せっかく普通に会話してたのに。
台無しじゃないか。
「 父さん。大嫌い!」
俺は、必殺技を放って、リビングから退出した。
父さんは、しばらく放心状態だったらしい。




