23 誕生日と黒歴史と
「 夕陽が落ちついた所で、パーティーはじめましょうか。」
「 本当は料理を作りたかったけど、時間が無かったから買ってきてた物ばかりで悪いけど」
拓人さんとひなは、スーパーで買ってきてたオードブルやケーキを並べた。
その脇で、おにゃんこさんがじ~っと食べ物を見ている。
「 おにゃんこさん。こっちにおいで。人間の食べ物は食べられんの」
「 んなー」
おにゃんこさんは、抗議の鳴き声をあげるけど、人間の食べ物は塩分が多いから体に良くない。オードブルの中には玉ねぎなど猫が食べちゃ駄目な物も入ってるから、近付けないように抱っこする。
「 ほら、おにゃんこさん。お前はこっちな」
「 んななー」
拓人さんは、ケーキと猫ご飯をおにゃんこさんの前に置いた。おにゃんこさんは嬉しそうな鳴き声をあげると、食べ始めた。
ちなみに猫向けのケーキがちゃんとあるんだそうだ。
この日の為に用意したらしい。
「 おにゃんこさんも誕生日なんだよ」
「 へぇそうなん。おにゃんこさんおめでとう。」
「 んなー」
おにゃんこさんは、食べる手いや口を止めると、ありがとうと言うみたいに鳴く。
「さてと、こっちも始めるか」
拓人さんの一言で、ひながジュースの入ったグラスを渡してくれた。
乾杯をすると、テーブルに並べらんだ料理を食べ始める。
「 あっそうだ。プレゼント」
ひなは自分の側に置いていたバッグから包みを渡してくる。
形からして本みたいだ。
包装紙を丁寧にあけると、中から出てきたのは猫の写真集。
「 うわこれ。ずっと欲しかったやつじゃん。ありがとう」
「 いや探すの大変だったよ。有名な写真家の写真集なんでしょ? この辺の本屋五件くらいまわったよ。でものうて (なくて)ネットでやっと見つけたんよ。喜んでくれて嬉しい」
「 今度は、僕からな。約束してた猫のぬいぐるみだよ」
「 ああ。そらそっくりなぬいぐるみだあ。やったー」
これで、おにゃんこさんとそらが揃ったよ。帰ったらベッドの脇に飾ろう。
俺が二人からのプレゼントを見ながらニマニマしてたら、ひなが意地悪な笑顔で一冊のアルバムを出してくる。
「 昨日ね、紫織おばさんからあずかったたん。ぜひとも、林原さんに見てもらいたいって」
「 ちょっとまて、そのアルバム。」
俺は、ひなの手からアルバムを奪おうとするが、ヒョイッと交わされた。
ひなは、拓人さんにアルバムを渡してる。ああ、あのアルバムには俺の黒歴史が満載なのに。
「 なんだこの写真。くく、可愛いじゃないか。夕陽。」
「 いっちゃん (一番)見られとおない写真ばかりなのに。」
拓人さんが持ってるアルバムには、紫織母さんの手に寄って女装させられた俺の写真がたくさんあるんだ。
紫織母さん、ひなになんて物渡すんだよ。
「 んー。でも今のが可愛いよな」
「 本当!」
「 うん。本当!今日の服と髪型とっても可愛い」
「 ありがとう」
俺と拓人さんがそんな会話してると、おにゃんこさんとひなが冷たい視線で俺達を見ていた。
「 おにゃんこさん。完全にうちらの存在忘れとるね。あの二人」
「 んなんな」
忘れてない忘れてませんよ。だから、そんな視線で俺達を見ないでください。
「 あっアルバムありがとうな。服部さん」
「別に。私とおにゃんこさんは、しばらく外に行ってます」
そう言うと、ひなはおにゃんこさんを連れて、外に出ていってしまった。
「 怒らせちゃったかな?」
「 いや、ひななりの配慮だと思う。怒ったんなら、怒鳴って捨て台詞はくだろうし。」
「 そうなんだ。」
「 ねっ、ひな達帰ってくるまで、さっきのアルバム見ない?」
「 いいのか?」
「 ええよ」
俺と拓人さんは、ひな達が戻ってくるまで、一緒にアルバムを見たりしながら二人だけの時間を過ごした。
このあと、ひなに二人で何をしていたのか訊かれて大変だった。




