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22 お誘い


「 僕の家こない?」

「 へ?」


それは突如のお誘いだった。


事の発端は、10月に入ってすぐのある日の放課後。

一緒に帰ってた拓人さんが何気なく俺に訊いてきた一言からだ。



「 そういやもうすぐ夕陽の誕生日だな。」

「 うん。10月10日。……昔の体育の日」

「 大人はそう言うな。それよりはいいとしてさ、その日休みだけどどうするの?」

「 えーと、夜にケーキ食べるくらいかな。」


俺の両親は言わずとも医者。二人共に休日出勤になったみたいで、俺の誕生日に出掛ける計画が無駄になったと嘆いていた。

それを聞いた俺は、内心ホッとした。もう小さな子じゃないから、親に動物園や遊園地に連れて行ってもらってもあまり嬉しくない。

両親は本気で俺を連れてく気だったみたいだけど。

その事を拓人さんに話したら、冒頭のやり取りだ。


「 行っても大丈夫なん?」

「 大丈夫だから誘ってるんだ。」

「 行きます。」


俺は返事してから想像してしまう。

口に出して言えないあーんな事やこーんな事になりやしないだろうか?

拓人さんは、普通に誕生日祝ってくれるはず。いやいや、拓人さんも男子高校生だし、興味が無いわけないよな。


「 ……なんか妙な想像してるみたいだけど、普通に誕生日祝うだけだからな。」

「 ですよねー。」


拓人さんに呆れられてしまった。

拓人さんの性格考えたらそんな事起こる訳ないよな。


「 また詳しい事はメールするから。」

「 あっうん。」


色々考え事してる内に自宅マンションに着いてしまった。

拓人さんとエントランスで別れた。




誕生日当日。約束の12時前に拓人さんの家に着いた。

今日の俺は、シックな黒いワンピースだ。いつも動きやすさを重要視してキュロットを穿いてる俺としては、学校以外でスカートを穿く事に違和感ありありなのだが、彼氏と祝う誕生日なのだから気合いの入った格好をしろと雫ちゃんに言われてこの服装だ。髪も同じ理由からいつもしない髪型になってる。

耳より上の後ろ髪を黒いリボンのついたバレッタで纏めてハーフアップと呼ばれる髪型にしてる。


俺は、深呼吸してからインターホンを押す。

少しすると拓人さんがどうぞと言ったので、家に入る。


「 んななー。」

「 何故におにゃんこさん。」


俺を出迎えたのは、拓人さんでもなく拓人さんのお母さんでもなく、林原家の飼い猫 おにゃんこさんだ。おめかしのつもりか首には蝶ネクタイがしてある。



「 まあいいや、お邪魔します。」

「 んなん。んなな。」


おにゃんこさんは、いらっしゃいこちらへどうぞと言うように、ぽっちゃりボディーを揺らしながら歩いて俺を導く。


「 んなな。」


おにゃんこさんは、とある部屋の前にお座りすると、前足でドアを示す。

まるで開けてごらんって言ってるみたいだ。


「 開けるよ。」


俺は、部屋のドアを開ける。


「「 ハッピーバースデー! 夕陽。」」

「 うひゃ?」


ドアを開けると同時に、降ってきたカラーテープ。

びっくりして一瞬目を閉じた。

すぐに目を開けると、拓人さんとひながいた。


「 驚いた? 」

「 驚くよ。てか何で、ひながおるん?」

「 そりゃ林原さんに頼まれたから。でなきゃ来んし。」

「 怒るなよ。僕一人じゃ何をしたら喜んでくれるかわからないから、服部さんに協力してもらったんだ。」


俺は思わずうつ向く。ヤバい嬉し過ぎて涙が出そうだ。実際俺の目からは涙が出てる。普通なら彼氏と二人きりのが嬉しいのかも知れないけど、俺にとってどっちも大切なんだ。そんな二人が誕生日を祝ってくれるのが嬉しい。



「 何? いきなり泣くってどゆことだよ。」


拓人さんは、おろおろとしてる。その脇でひなは呆れ顔だ。

俺が涙もろいのを知ってるからだろう。


「 嬉し過ぎて泣けてくるんよ。」


俺がワアワア泣くというハプニングから誕生日会はスタートしたのだった。


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