20 覚悟はあるんか?
「 そんな事もあるんよ。紫織母さん」
「 本当に、夕陽なの? 」
「 ほんまに、夕陽なんか?」
「 うん、俺だよ。隆史父さん」
紫織母さんも隆史父さんも戸惑いを隠せてない。
まあそうだよな、死んだハズの息子が生き返るだけでも、あり得ないのに、中学生くらいの女の子になってるなんて、すぐに信じられないよな。
「 瞳子夕陽。 こりゃどういう事な?説明してくれんかの?」
紫織母さんは、まだ呆然としてるけど、隆史父さんは、我にすぐに戻って、俺と母さんに説明を求めてきた。
母さんと再会した時もそうだけど、隆史父さんも事態を冷静に受け止めるのは、早いな。やっぱり兄妹だ。
「 あんね。今から話す事は、ほんまの事じゃけ」
「 おう」
俺は、事故で死んでからの事を一通り話した。
「 ほいで、この姿なんよね。」
「 ほうか。漫画みたいな話じゃのう。
もういっぺん訊くが、ほんまに、夕陽なんか?」
母さんと違って疑い深い……というより、俺に質問してみて、どんな反応するのか確かめたい。そんな考えなんだと思う。
「 うん。なんなら、俺に質問してみてや」
「 ああ、ええで。」
隆史父さんは、俺と隆史父さんの二人しか知らない事を質問し、俺はその全てに答えた。
「 うーん。やっぱりほんまの夕陽じゃ。」
「 疑うんは、仕方ないけど、ちいと疑いすぎじゃないん。……今の俺が答えにくいエロ本の隠した場所とか、質問せんでほしかった」
「 そうよ、今の夕陽は、女の子なのよ。そんな事訊かんのよね」
やっと我に返った紫織母さんが、隆史父さんをしかってる。
紫織母さんは、にまりと笑って、こう言ってきた。
「 ねぇ、夕陽は、好きな男の子いないの? 」
「 なっ母さん。まだ早かろうが、夕陽おらんよの? そんな人。」
クラスの女子と同じ反応なんですけど、紫織母さん。その反面、隆史父さんは、女の子の父親としての顔になってるし。
――本当、こういう時って、男の人と女の人の反応って違うよな。
「 おるよ。 それどころか、付き合ってるもん。」
「 まあ」
「 どんな奴じゃ。今すぐ連れてこいや」
予想通りだよ。紫織母さんは、純粋に喜んでるけど、隆史父さんは、女の子の父親としてのテンプレな反応してるよ。
「 林原くんについて来てもらって正解ね。兄さんなら、絶対こう言うって思ってたわ。今すぐ連れてこいや。って言ったら本気で連れてこないと、納得しないから。夕陽、林原くん呼んでおいで」
「 わかった」
俺は、車の中で待機してる拓人さんを呼びにいった。
「 連れてきた。」
「 はじめまして、林原拓人と申します。」
「 まあ、ええ男さんじゃ。」
紫織母さんは、拓人を見てうっとりとしてる。
隆史父さんは、拓人の目を見つめて、満足そうに頷いてる。
「 ほんまに、ええ男じゃのう。 のう、林原くん。もちろん夕陽の秘密は知っとるよの?」
「 はい、知ってます。」
「 夕陽の秘密を知った上で、夕陽の全て受け止める覚悟はあるか?」
隆史父さんは、剣呑な目付きで、拓人さんにそう問うのだった。




