2 叔母さんと再会
俺がトイレから戻ると、パンツスーツをピシッと着た女性がいた。
俺の叔母さんで、名前は、音無瞳子。職業は医者だ。
瞳子叔母さんは、眼鏡の奥の目をまん丸くして、呟いた。
「 夕陽、よね?」
その声は、驚きに彩られてる。 驚くのは、無理もない。事故で死んだはずの甥っ子が目の前にいるんだもんな。
「 うん、夕陽だよ。叔母さん」
「 顔は、変わってないけど、ちっちゃくなってるし、ちょっと、いい?」
叔母さんは、そう言って、俺を抱きしめる。 体の感触確かめてるのは、気のせいか?
「 女の子になってるし、さっき見た時、体のラインが丸いなって思ったのよね。
夕陽、なんでこうなったのか、説明してくれる?」
「 うん。」
俺は、異世界転生からの出来事をざっくばらんに話した。
「 普通なら、信じないけどね。夕陽は、うそつけない性格だし。それに、おしゃべりする猫ちゃんいるしね 」
瞳子叔母さんは、がつがつと猫ご飯を食べてるそらを見る。
そらは、視線を感じたのか、食べる口を止めて、ぎゃいぎゃい喚き始めた。
「 たったこれぽっちじゃ足りにゃい~、もっともっと、ご飯下さいにゃー」
「 足りんって、どんだけ食べりゃ気ぃ済むんな。かなり大盛にしてやったんでよ」
「 ……ごめん。この3日まともに、食べさせとらんのよ 茂兄さん」
「 夕陽、お前のう。しゃあないのお、ほら、食べんさい~」
猫好きな茂兄さんは、そらのお皿に、猫ご飯を盛ってやってる。
「 うわっキモ! にゃんこ相手に、ニタニタ笑いよるし」
「 えかろうが、( いいだろ)別に、猫好きなんじゃし」
「 それにしても」
「 ハイ、喧嘩はやめてね」
俺の事そっちのけで、喧嘩を始めたひなと茂兄さんをピシャリと、瞳子叔母さんは、黙らせた。さすがは、三人の子を持つ母親だ。
喧嘩を止めた瞳子叔母さんは、茂兄さんを部屋から出して、俺を診てくれた。
「 特に、異常はないわね。 ねっついでに、胸の大きさとか測ってもいいかしら?」
瞳子叔母さんは、鞄からメジャーを取りだして訊いてきたんだ。
確か瞳子叔母さんには、服作りの趣味があったな。
「 いいけど、趣味の服作りの為?」
「 そりゃ、夕陽が着てくれるのら、作りたいけどね。そうじゃなくて、ブラのサイズが知りたいのよ」
「 ブラって、ブラジャーの事?」
「 そうよ。まさか、あっちじゃ着けてなかったの?」
「 うん」
異世界で、パーティーを組んでいたユリカには、散々着けろと言われたけど、俺は、断固として着けなかった。理由は、恥ずかしいからなんだけど。だから、今も下着は、キャミソールとパンツしか着てない。
「 着けなきゃ駄目、形が崩れるから」
「 そうなの」
道理で、ユリカが煩く言う訳だ。
「 ――まあブラを着ける理由は、それだけじゃないけどね 。さっ測るから、恥ずかしいかも知れないけど、Tシャツ脱いでね」
「 うん 」
着けなきゃいけない他の理由も気になるけど、とりあえずTシャツ脱がなきゃ。
Tシャツを脱いで、キャミソール一枚になる。
メジャーで測ってもらったら、Aの65との事。これが、大きいのか小さいのかは、俺にはわからないけどな。
「 じゃ、ひなちゃん。夕陽戸籍を用意したりするから、夕陽の事、数日間よろしくね」
「 わかりました。兄さんにも伝えときます」
「 俺の戸籍用意するって、大丈夫なん?」
「 その辺は、大丈夫 。まあ、うちの養子になるけどかまわない?」
「それは、いいですけど」
「 ならいいわね。学校は、近くの公立高校に編入すればいいし」
「 それは、無理にゃ」
俺の今後について、話がまとまりかけたのに、そらが口を挟んできた。
「 どうして? そりゃ、見た目は、高校生に見えないけど」
「 見た目の問題じゃないにゃ、夕陽、日本に戻る時、神様にそらを連れてく事お願いした。その代償に、知識奪われてるにゃ。詳しく言うと、ガッコで勉強する事にゃ。ええと、そら神様から聞いたのは、中一の一学期で習う知識しかないにゃ、嘘と思うなら、試しに問題解いてみるにゃ」
「……わかった」
俺は、ひなから問題集を借りて、問題を解いてみたけど、さっぱりわからない。
習ったはずの内容について、何一つ知らない事になってて、ショックだった。
「 学校は、中学校に行くしかないわね。そこ含めて、また連絡するわ」
瞳子叔母さんは、そう言って帰っていった。
「 仕方ないよ。よし、学校に行きはじめて、困らんように、ここにおる間は、私が、勉強教えてあげるよ。けど、その前に」
「 その前に、何?」
「 フフ、お風呂に入ろうかね。ほら、もう夜になるしね。私と一緒にお風呂入ろうねっ」
「 うっうん」
なんだろう、ひながむちゃくちゃ怖いよ。お風呂入るだけなのに、嫌な予感がするのは、気のせいか?




