19 家族と再会。
母さんに拓人さんもついて行く事を話すと、日曜日に会うように調整してくれた。
表向きの要件は、養子にした俺を連れて挨拶に行くといもの。
実際は、父さんや母さん、それと俺の兄貴に俺の正体を話して、再会を果たすといもの。
拓人さんは、話が終わったら来てもらう予定だ。
「 さあ、着いたわよ。」
「 緊張する。」
「 じゃ、僕は、ここで待ってます。」
「 ごめんね。林原くん、無理を言って。」
日曜日。母さんの運転する車で、俺の実家にやって来た。
予定通り、拓人さんは、話が終わるまで、車で待機してる。
故郷の広島から引っ越したのが中2の時。それから高1の夏までは、普通に暮らしいた家。離れていたのは、たった数ヶ月なのに、何年も離れてた感じがする。
車から降りて、母さんが玄関の呼び鈴を鳴らす。
しばらくすると、俺の実の母親が出てきた。名前は、平原紫織。
俺は、母さんの後ろに隠れて、紫織母さんの様子を伺ってる。
ショートボブの髪に柔らかい目付き。お気に入りの白いシャツにデニムパンツという姿は、記憶の中と変わらないけど、なんか大分老けた印象だ。
「 こんにちは、紫織さん。急にごめんなさいね。」
「 いいえ。後ろに隠れてる娘が噂のゆうちゃんね?」
「 ええ。ゆう。隠れとらんと、ご挨拶なさい。」
ちなみに、ゆうというのは、言わずとも俺の事だ。わかりやすい偽名である。母さんの設定で、人見知りで大人しい事になってる。
「 はじめまして、音無ゆうです。」
母さんの後ろから出てきて、紫織母さんに挨拶する。
「 っ?!」
俺を見て、紫織母さんが息を飲んでる。
「 びっくりしたわよね。夕陽そっくりでしょ、この娘。」
「 ええ。瓜二つよ。夕陽を女の子にしたらこんな感じかしらね。」
紫織母さん。俺のそっくりさんどころか、本人です。
ああ早く、正体をばらしたい。罪悪感たっぷりな俺は、そう思いながら、人見知りで大人しい、音無ゆうを演じていた。
「 まあ、立ち話も何だから。上がって。」
「 はい、お邪魔します。」
母さんに続けて俺も家の中に上がる。
リビングに通されると、実の父親である
隆史父さんと実の兄 朝陽がいた。
俺が、入ってきた途端に、隆史父さんはぎょっとした顔になってる。紫織母さんと同じ反応だ。しかし、朝陽兄さんにいたっては、弟そっくりな女の子が入ってきたのに、無反応だ。まあ、この人に関しては、こんなもんか。何が起きても、動じないからな。多分家に隕石が落ちても、動じない。
「 兄さん。朝陽くん。いきなりごめんなさいね。この子が」
母さんがいい終える前に、朝陽兄さんが座ってたソファーから、腰を上げると、俺の前に立つ。
むぎゅ。
いきなり抱きついてきたんだ。突然の行為に、俺は、もちろん。母さんも隆史父さんと紫織母さんも固まってる。
朝陽兄さんだけが、冷静に俺の体の感触を確かてやがるし。
「 茂の言う通り夕陽が、女の子になっとるし。」
「 はよ離せ、アホ兄貴。人に何セクハラ行為をしとんじゃ。」
「 おお、その反応は、やっぱり夕陽。やー会いたかったよ。弟いや妹か。」
「 そがな事 ( そんな事)は、ええけ、はよ離せ。紫織母さんの鉄拳くらうで。」
「 ええじゃろ。もう少し、堪能させろ。」
どごん。
ヤバい音の後、頭を抱える朝陽兄さんと、笑顔で拳を握る紫織母さん。
あー、懐かしい光景だ。
10歳も年が離れていたせいか、朝陽兄さんは、弟である俺に異常なまでのスキンシップを求めていた。
で、毎回やり過ぎて、紫織母さんの鉄拳を食らってた。
「 朝陽! いきなり、よそのお嬢さんに抱きついて。何を考えとるの? 」
「 よそのお嬢さんじゃのうて、この子、夕陽で、母さん。」
「 はい?」
なんで朝陽兄さんが、俺の正体を知っているかは、ともかく、紫織母さんは、再び固まってしまった。
「 何を言うとるの。夕陽が生き返るなんて事ある訳。」
「 そんな事あるんよ。紫織母さん。」
予定に無い展開だけど、ここで、俺の正体をばらしてしまおう。




