表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/42

16 母親の気持ち

「 夕陽本気?」

「 うん。本気だよ。」

「 そう」


母さんは、俺を抱きしめた状態でだまりこんでいた。

心なしか、さっきよりきつく抱きしめられてる気がする。

俺の唐突な提案に、戸惑っているというか、動揺してるのかな。

母さんの不安な気持ちが、母さんの体ごしに伝わってくるんだ。

沈黙に耐えきれなくなった俺は、母さんに話しかけてみる。


「 母さん?」

「 ごめんなさい。考え事してボーッとしてたわ」

「 何の事考えようたん?」

「 いやね。隆史兄さんや紫織義姉(ねえ)さんにあなたを返してって言われたらどうしよっかって思ったの。」

「 えっ嫌だよ、俺は、ここにおりたいよ」


母さんの思わぬ一言に、戸惑って本音が出でしまう。

俺は、今の環境で生活していく覚悟を決めた。だから、本当の家族の元に戻る気は、一切ない。

本当の家族が嫌いな訳じゃない。今でも、大好きだ。

本当の家族の元に戻る気は、無くとも、せっかくこちらに戻ってきたんだ。元気で頑張ってるよと、伝えたい。

母さんは、俺の思いに気づいたのか、自分の気持ちを吐露し始めた。


「 そりゃもちろん、物じゃないからね。返してくれって言われても、はいそうですかって訳にはいかないわ。でもね、紫織義姉の気持ち考えたら、返せなきゃ駄目かなって思うの。だって、お腹を痛めて産んだ子だもの。どんな形であれ、我が子に会えて嬉しくない母親は、多分いないと思うの」

「あー、ほうじゃね」


俺は、自分の事しか考えてないな。親なら、我が子に会えて嬉しくないはずないのに。本当の母さんが、夕陽()を見て、一緒に暮らしたいって思うかもしれない。


「 夕陽が家族に会いたいって気持ちは、わかる。でも、1人で行くのは、やめてほしいの。母さんと一緒に行くのは、駄目かしら?」

「 ええけど、なら拓人さんも一緒じゃ駄目?」

「 それは、林原くんと話しなさいな。私は、どちらでもいいわ。」

「 ほいじゃ、明日にでも、話しようっと、」

「 好きになさい。」


母さんは、呆れてそう言った。

話が終わったから、俺は、自分の部屋に戻る事にする。

さっきまで、忘れていた生理痛が襲ってきたからだ。

母さんから、俺の年齢でも飲めるという市販の鎮痛剤をもらってから、ベッドに横たわった。


ベッドの中でうつらうつらしながら、拓人さんにどう切り出そうか考えていたら、そのまま眠りについたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ