10 初登校
成宮りんさんから頂きました。
※使用許可は頂いてます。
夏休みも終わり今日から二学期だ。
俺は、旭ヶ丘学園中等部の制服に着替えていた。
今は、九月という事もあり制服は、夏服。半袖のブラウス。襟元には、黒いリボンを結ぶ。
最後に黒いプリーツスカートを穿いて、靴下を履いておしまい。着替え終え、鏡に写った己の姿を見て一言。
「 なんか似合っとらんし」
それもそのはず、今現在、俺の身長は、145センチ。制服は、今後の成長に配慮して、今の体より少々大きめに作られていている。だから、ブラウスもスカートもちょっとブカブカだ。 ――スカートがブカブカなんよねって、雫ちゃんに言ったら、ため息まじりに『羨ましいこと言わんといて』だって。なんでだろー。ブカブカじゃない方がいいのに。まぁいいか。
朝食を終えて、学校まで雫ちゃんとアキや一緒に向かう。自宅マンションから学校までは、徒歩で20分くらいで着くらしい。
「 どしたん。夕陽、いつもと違って、内股で歩きよるね。」
俺の脇を歩くアキは、小首を傾げて訊いてくる。
余談だが、アキはショートボブが似合う可愛い女の子だ。今の小首を傾げてる姿も愛らしい。
「 スカートを穿くの今日が初めてじゃけ、歩くのが難しいんよ」
「 なるほど」
アキは、納得したように頷いてる。かくいうアキも、中学に入るまで、スカートを穿いた事なかったから、思い当たる節があるのかもしれない。
それはともかく、俺の目下の悩みは、制服のスカートである。
アニメや漫画なんかじゃ、制服姿の女の子が軽々とアクションをこなすシーンがあるけど、はっきり言って現実じゃ無理だぞ! ( きっぱり )
ウチの学校の制服のスカート膝丈なんだけど、足にまとわりつく感じがして、裾捌きが難しい。
雫ちゃんに、校則違反だけど、スカートを短くしたらと言われ、ウェスト部分で折って短くするけど、今度は、太股をさらして歩くのが、恥ずかしいのと、パンチラが気になって、ますます歩きヅライ。
俺は、そんな風にスカートと格闘しながら、学校に向かった。
校門の所で、雫ちゃんと別れて、アキに連れられて、職員室に行った。
しばらく待ってると、女性の教師が来た。
「 あなたが転入生音無夕陽さんですね。私は、担任の中崎です。」
「 はい。俺です。よろしくお願いします。」
「 リアル俺っ子ですか。いいですね。ふふふ。」
中崎先生は、ニヤニヤと1人笑って呟いてる。ちょっと大丈夫か? こんな人が教師で、旭ヶ丘学園は、変な人が多いって雫ちゃんから聞いてけど、この人はヤバい気がする。
俺が中崎先生をヤバい物を見るような目で見てたら、先生は、ハッとなり、咳払いをして、教室に行きましょうかと、俺を連れて、教室に向かった。
俺のクラスは、1年C組。中崎先生が先に教室に入った。
先生に呼ばれて、教室に入ると、クラスの人の視線が俺に集まる。隅を見ると、アキがいた。小さく手を振ってる。
小さい。可愛いという声が聞こえる。
「 はい。静かに! じゃ自己紹介をお願い。」
「 俺は、音無夕陽です。 アキとは、義理の姉妹になります。ちなみに、俺が妹です。よろしく。」
自己紹介を終えると、指定された席に座る。周りから、リアル俺っ子きたーとか言うやつや、アキと俺の関係を聞きたがる素振りを見せる子とかいたけど、この後、始業式という事もあり、先生は、生徒を整列させて、体育館に向かわせた。
今日は、始業式だけという事もあって、午前中で終わりだ。
アキと帰りに少し寄り道しようかと、話してたら、話 かけられた。
「 なあ、音無妹。僕と付き合ってくれよ。つか付き合え。」
「はあ?! 」
名前は、知らないが、眼鏡をかけた痩身の男子生徒だ。いきなり付き合えとか意味不明だし。
「 なんで、俺がお前と付き合わんといけんのん。だいたい、人の名前を覚えとらん人間と付き合う気ないし。」
「 む、この僕、田中ヒロシの告白を断るとは、いい度胸だな。音無妹!」
「 じゃけ、俺は、付き合う気ないの!だって、俺には、」
「 林原さんていう彼氏がおるけん無理よ! 田中。」
「 なにい? なら、早く言えよ。」
田中は、そう叫ぶとガックリと肩をおとして、俺の前から去っていった。
「 アキありがとう。」
「 どういたしまして。 でも、ごめん。林原さん勝手に彼氏って事にしちゃった。」
「 別にいいよ。」
アキと俺は、そんな会話をしながら鞄を持って教室から出る。
「 でもさ、さっきの田中じゃないけど、夕陽に告る人出てくると思うよ。今日男子何人か、夕陽と喋りたそうにしとる人がおったし。」
「 えっ?俺と? 」
「 自覚ないね。 まあ、いいか。ねっいっそのこと、林原さんに告れば? 嘘から出た実じゃないけどね。彼氏になったら問題ないよね。」
「 ええ! 」
アキが、飛んでもない提案してきたよ。
告白とか無理だし。どうしよ。困ったなぁ




