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神から授かりし武器

俺は今、第七研究所というところに来ていた。理由は

「いやはや、みせてもらったけど君のその自信は一体どこから湧いてきてるんだろうね?初級生が司令官に決闘を挑まれるなんてイレギュラーなケースをお目にかかれるとは思ってなかったよ。伊佐木彩牙くん、君には特別に武器を速やかに用意する必要がありそうだね」

「…」

目の前にいる白衣を着て眼鏡をかけた女性、歳は同い年にしか見えないし実際同い年なのだろう。髪は何も手入れされてないのか伸び放題な上にボサボサで服も乱れている。というか、そのご自慢であろう大きい胸が服をはちきらんばかりに主張している。どこぞのグラビアアイドルみたいな体型で目のやり場に困るやつだ。そいつは指の腹でずれた眼鏡を元に戻し自己紹介をする。

「申し遅れたね、私はロシア特別神紋研究部門、エクセプションの開発・研究を行っているサリア・レフェルフだ。ここでは君専用のエクセプションの調整・開発を担当させてもらってるよ。これからよろしく頼むよ、Ostavhiyesya v zhivykh posle chuda。奇跡の生存者くん」

俺はその言葉により一層黙る。睨みつけてるわけじゃないが子供の頃から目つきが悪く、ヤクザと間違われて泣かれた経験もある。そんな眼光の鋭さにサリアは少したじろぐ。

「そ、そろそろ本題に入ろうかな。そういえば、君の父親・・と名乗る人物からこれを渡されたのだが…」

そう言ってサリアは足元においてあった黒塗りのアタッシュケースを持ち上げ俺に渡してくる。俺はそれを無言で受け取る。

「中身は見るなと言われたから見てないが、音を聞かせてもらったけどそれは一体何が入ってるんだい?研究者として非常に興味がある。ぜひここでみせてもらいたいんのだが?」

「こいつはお前達に見せるような代物じゃない、それ以上の詮索はするな」

「そう言われると暴きたくなるのが人の性なのだが…、まぁいまはその件については置いておくことにしておくよ。それよりもこれが君のエクセプションだ」

サリアはポケットから真ん中に青い宝石がついたチョーカーよりのネックレスを渡してきた。俺はそれも無言で受け取る。

「一応、君のあるゆる情報元に調整を加えたが基本は君の体になじませるしかない。君が知ってるかどうかは知らないがエクセプションは生きてるからね。相性の問題もあらわれるから気をつけて使用したまえ」

「…そうか」

俺はあらかじめサリアからエクセプションの説明を聞き整理する。簡単に言うとこうだ。

1 神鉱石を加工し武器にしたものがエクセプションである。

2 神鉱石には意思がある。それ故にエクセプションには相性というものがある。相性がよければその能力は通常の数十倍以上もの力を発揮し、逆に合わなければエクセプションは反応すら見せずに武器になることはない。

3 武器は本人に一番最適に合う形として形成される。

以上がエクセプションについての説明だった。

「以上がエクセプションについての説明だったけど、なにか質問はありゅか?」

嚙んだ、決して噛むような場面じゃないのに噛んだよ、こいつ。サリアはも格好つけるところでまさかの噛むという失態をし、その顔は羞恥と噛んだ痛みのせいで涙が出ていた。傍から見たら俺がなにかこいつに辱めを受けさせてるようにしか見えなかった。俺はサリアに背を向けて帰ることにした。

「ちょ!こほん、質問はしていかなくいいのかい?それに、訓練場はそっちじゃない」

どうやら無理に博士キャラを演じようとしてるようだ。なぜだかは知らないが。

「質問はない、訓練場にもいかないから場所をいう必要は無い」

「な、君はまだエクセプションを使ったことがないはずだ。それにまだ、君がそのエクセプションとの相性がいいと決まったわけじゃないぞ?」

「…」

サリアは心配したようにそう忠告してくるが、俺はそのまま無言でその場を立ち去った。



「全く、なんて礼儀知らずな奴なんだ。日本人は礼儀正しいと聞いていたのに。これは残念だな」

サリアは去っていった伊佐木の背を見つめる。

「奇跡の生存者、その救済方法は未だに不明。決して助かるはずのないところで生き延びた少年。国波の唯一の生き残り。そして、父親となのる第三人物。彼の謎についてはとても興味深いね」

そう、伊佐木のデータを呟きサリアもマントを翻し研究に戻った。



第七研究所を出た後、真っ直ぐ自分の寮に帰ろうとするがその道先に誰かが立ちふがっていた。その子は俺が庇っているということになってしまったあの子、最初の歓迎式の時に遅れてきた子がいた。

「あ、あの…」

そう、彼女は勇気を振り絞って俺に話しかけてくる。ここで無視するのも可哀想なので彩牙は暇つぶしに付き合ってやることにした。

「なんだ?」

「ご、ごめんなさい!」

そう、彼女は頭を下げた。

「私のせいでこんなことになってしまって…。迷惑をかけてほんとにごめんなさい」

そう、謝る彼女の姿を見て俺はイイヤツだなとしか思わなかった。こんな堂々と面と向かってちゃんと謝れる人なんて現代ではなかなかに少ないだろう。しかし、これは俺がやりたくてやったことだ。謝れる筋合いも礼を言われる筋合いもないのでそこはちゃんとしておこう。

「なんのことだ?俺はただ事実を言ったまでだ。あの程度で司令官などと笑すなってな。別段、お前をかばったわけじゃないから謝れる道理はないぞ」

「そ、そうだとしても!その、あなたのおかげであの時助かったのは事実です。ありが…」

そう礼を言おうとした彼女の言葉を俺は遮る。

「言っとくが、俺はお前に何かをした覚えはない。礼を言われる筋合いもない。それに、明日の試合に負けるかのせいだってあるんだぞ?お前らからしたら俺があのお嬢様にかつ確率なんて一にも満たないだろうけどな」

「それでもです。あの時、なんだか私を庇ってくれたようでうれしかったんです。あ、えとこれは個人的な見方なので気にしないでください。あなたは私をかばった覚えはなくても私はあなたに助けられたんです」

「…そうか」

食い下がらない彼女に逆に彩牙が食い下がってしまった。ま、いいか。と俺は思い先を歩こうとすると。

「待ってください!もし、もしよろしければお名前を教えてくれませんか?」

そう止められた。俺はそれで開放されるならと思い名を名乗ることにした。

「伊佐木彩牙だ」

「伊佐木、彩牙君ですね。私はたちばな恋音れんなといいます」

そう彼女、恋音も名乗る。俺はチラッと恋音を見やった後歩を進めて寮の帰路につくのだった。



伊佐木は自分の寮の扉を開け中に入る。特に何かものがあるわけでもなくガランとしている。外をほっつき歩いているといつの間にか日が暮れて開けられた窓からは月の光が差し込んでいた。

「はぁ…」

そう溜息をついてベッドに座り込む。すると、不意に心臓が急激に痛み出す。

「うぐっ!」

あまりの痛さに片手で心臓の部分を鷲掴みにする。自然と呼吸も荒くなる。この現象はただの病なんかじゃない。それは伊佐木がよく知っていた。そして、この痛みの辛さも。しかし、それでも慣れない痛みにベッドに倒れる。

「はぁ…はぁ…」

この心臓の痛みは収まらない。まっていても、時間が経ってもきっと収まることのない痛みだ。そこで俺はさっき持ち帰った黒塗りのアタッシュケースをみる。

「ちっ…」

それを見た彩牙は舌打ちをする。あの中には、この痛みを抑えるある物が入っている。しかし、それに手を出すのは十年経った今でも慣れることが出来ない。でもこれは自分の、唯一の復讐心を抑えるものでもあるのだ。激しい心臓の痛みに耐えながら俺は、黒塗りのアタッシュケースの所まで行きそれを開けるのだった。

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