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守護者育成機関ガーディアン

飛行機に揺られれながら、俺、伊佐樹彩牙いさきさいがは下に広がるでかい島を眺めていた。そこは

「守護者育成機関ガーディアン、か」

数年前、突如現れた招かれざる客、不悪魔ファグマ。名前の通り、その姿は異形で悪魔としか例えようのない人類の敵だった。不悪魔ファグマは人々を喰らいすべてを壊す。過去に、一番最初に不悪魔ファグマが出現したのは日本、アメリカ、ロシアの三国だった。当時、何も対抗策のなかった人類はただ喰われるだけの餌でしかなかった。そして、同時期に神鉱石となずけられた特別な石が地中の奥深くから発掘された。そして、子供の体のどこかに神紋と呼ばれる幾何学的なアザができた子達が現れた。不悪魔ファグマの殺戮から二年、たった二年で人類の四割は殺された。七十億人いた世界の人口はたった二年で約四十億にまで減少した。しかし、それだけではない。世界の化学技術も神鉱石のおかげで急成長を遂げ、遂に不悪魔ファグマへの対抗策ができたのだ。そして、それを行うのが神紋を授かりし子供たちなのだ。俺はそっと右手を見る。それは黒い革手袋に覆われている。しかし、この中には神紋が刻まれている。そう、俺も神紋を授かりし子供の一人なのだ。俺は再度、島に目を向ける。守護者育成機関ガーディアン、ここには神紋の出現が確認された子供たちが世界各国から集う場所だ。要は世界の守護の要でもあり唯一の中立地帯。ここの他にも、世界には守護者育成機関があるが主にみんなここからの卒業生ということになる。つまり、ここが俺にとっての最初の道なのだ。

「やっとだ、五年も待ったんだ。これで俺は…」

俺は心のうちに燃えるものをたぎらせるのだった。

飛行機が降り立ち俺は、この島、デアガルナ島と名付けられた神紋を授かりし子供達が通うこの地に足を踏み入れた。



街は至って普通だった。いくつか高層ビルが見えるも技術の発展があったとはいえあまり変わりなかった。しかし、いくつかハイテク機器というべきものはあるが。立体ホログラムやシュミレーター、電子デバイスの進化。日常的な科学な進化は急成長していた。この島に住む人たち当然のことだが全員が神紋の持ち主というわけではない。俺は再度、見ゆく人々を見てそれを確認する。見た感じ神紋保持者は誰もいなかった。警官なども調べたが持っていなかった。やはり、子供にしか発現しないのだろう。俺はその子供達が通うガーディアンに向けて歩き出す。


数十分歩いてそこについた。守護者育成機関ガーディアン、島の三割を占める学校。いや、訓練所か。俺はその大きい門を通りガーディアンに入る。すると、そこで待ち受けてたかのように黒服をビシッと着用した若い女の人が近づいてきた。顔は凛としていて目鼻も整っていて美人だった。後ろで長い黒髪をポニーテールにして縛っていた。見た感じ二十前半ぐらいだろう。女は手に持っていたファイルと俺を見比べて喋り出す。

「君が伊佐樹彩牙だな?」

「あぁ」

「ふむ、これから君の上官になる者としてその返答は頂けないな」

「?」

「申し遅れたな、私は西篠深守さいじょうみかみだ、深いに守るとかいて深守みかみだ。覚えておいてくれ。これから君のクラスの担任もとい教官だ」

「そうか、あんたが俺の教官か。よろしく頼む」

俺は右手を差し出すが西篠教官は顔を渋らせたまま手を出してこない。

「さっきもいったが一応、私は君の教官だ。言葉には気をつけたまへ。いくら学生がここを指揮してるとはいえこれでは大人として示しがつかないからな」

そういって西篠教官は手を出して握手を交わした。握手を終えると西篠教官は学院内に向けて歩き出したので俺はそれについていく。学院内に入る途中、俺はいくつか気になるところがあったので聞いてみる。

「西篠教官、ここは学生が指揮してるとはどうゆうことだ?」

「君は敬語を知らないのか?全く…。ここを指揮してるのは理事長の娘のレミア・ラジェルローナだ。彼女は守護者ガルディアとしても優秀でここの総司令を任されている。さしずめ、私たちはその補佐だ。彼女の所属する司令塔には他に副司令の金沢颯花かなざわはやかと副司令補佐の桜蘭華夜おうらんかやがいる。現状、不悪魔ファグマが出た際の総指揮官はレミア・ラジェルローナが行っている。つまり、ここでは彼女のいうことが絶対だ。わかったか?」

「…そんなので大丈夫なのか?」

不安だ。ましてや同じ学生ならなおさら。いくら優秀だとしても長く生きてきた大人と違ってその経験は浅いはずだ。理事長の娘だからという理由では納得出来ない。

「安心しろ、君が思ってることは充分にわかるが彼女は本物だ。なにせ、階級レベルⅢの不悪魔ファグマが出た際に、彼女はその実力と結果を見せつけてくれたのだからな」

「その結果は?」

「死者数はなし、重傷者もなし、軽傷者が何人かいるがそれも階級レベルⅢの不悪魔ファグマに対してだ。いままでレベルⅢの不悪魔ファグマと戦った際の平均的な死亡者及び重傷者は少なくとも十は超すのだ。それを彼女は死者どころか重傷者さえ出さずに倒してしまったのだからな。彼女の指揮能力、実力はSクラスだ。そういえば、まだそこら辺については説明を受けてなかったな?」

「いえ、だいたいわかるんで平気」

「敬語を使えといってるいるだろう、伊佐樹彩牙」

「……」

俺が沈黙するのを見て西篠教官はため息をつき歩を進める。レミア・ラジェルローナ、階級レベルⅢのファグマに対して死者なし、重傷者なしの高成績、か。しかし、必ずしも間違いがないわけではない。レベルⅢはそれですんだかもしれないがレベルⅡになったら?やはり不安だ。俺はそんな気持ちでガーディアンに入るのだった。



場所は変わって職員室、西篠教官は何を思ったのか

「じゃあ伊佐樹、脱げ」

「……」

なんだ、残念教師か。俺は振り返り職員室を出ようとすると肩をつかまれて止められた。

「まて、どこに行くつもりだ?いいから身体検査するから脱げ」

「なんだ、そうゆうことか……」

「お前は一体なんだと思ってたんだ?」

西篠教官はため息をついて俺の身長と体重を測っていく。しかし、目線はずっと一点に集中していた。俺はさして気にすることもなく身体検査を済ませていく。そこで、ようやく西篠教官は我慢出来なくなったのか問い詰めてくる。

「伊佐樹、その右腕に巻いている包帯と革手袋を取れ。神紋がチェックできないだろ」

そう、俺は身体検査中ずっと右腕に包帯と右手に革手袋をつけたまま行っていたのだ。

「神紋のチェックはここに来る前に終わらしたはずだ」

「それでも私が確認する必要はあるだろ?」

「ない」

「教官命令だ」

「断る」

断固として拒否する俺に西篠教官は眉を寄せる。むむむと唸った後、やがて大きなため息をついて諦めた。俺は身体検査が終わったのを確認して服を着る。

「お前はもう少し年上を敬うことだな、それと、今日はこれで終わりだ。制服もお前の寮に置いてあるから明日はそれを着てくるように。男子寮は学院内から西の方だ。他に質問はあるか?」

身体検査が終わると今日の用事はそれで終わりらしい、西篠教官はざっとここについて説明してくれた。

「レミア・ラジェルローナはどんなやつだ?」

「まだ疑っているのか?そんなのではパートナーどころか友達もできないぞ?」

俺は顔を逸らす。疑っているわけじゃない。ただ単純に任せられないだけだ。それに、友達なんて……。

「まぁいいさ、それについては明日わかるはずだ。朝はお前達新入生の歓迎式に顔を出すからな。ま、明日までに誰か寮で友達でも作ることだな」

そう言って西篠教官は職員室を出ていく。あいにく職員室には誰もいなかった。だからだろう、すこし、言葉が漏れてしまった。

「友達はもういないんだよ、誰一人としてな……」

頭が少し痛い、今日は指定された寮をチェックして寝よう。明日からが俺にとって大事な最初の一歩なのだから。俺は職員室を出て学院から西側にある男子寮に向けて歩き出す。この時に職員室の中にいた一人の女性に伊佐樹が気づく事は無かった。


翌日、小鳥のさえずりと共に目が覚めた。俺は昨日、寮について寮母さんから簡単に説明を受けて寮部屋の鍵を受け取って早速中に入った。ちなみに、相部屋ではなく一人だということで楽だった。そして、ある程度物をチェックしてそのままベッドにダイブした。長旅で疲れたというのもあるが、他にも理由はあった。心臓の鼓動が妙に早い。興奮とはまた違う別の物。とりあえず、俺はそれを落ち着かせるためにもそのまま寝るのだった。俺は時刻を見る、現在朝の六時。学院にいくには充分時間がある。少しストレッチをして時間を見計らって朝食を食べに食堂に行くのだった。

「ふむ…」

食堂にきたまではいいが何にしようか困る。なぜならメニューが多すぎる。学院の食堂とは普通メニューは少ないはずでは?と思わせるぐらいに多かった。とりあえずここは無難にフレンチトーストを選ぶことにした。食券を買ってそれを食堂のおばちゃんに渡すと五分ぐらいして頼んだメニューがきた。色味は鮮やかで香ばしい匂いがするとてもおいしそうなフレンチトーストがでてきた。適当に空いてる席に座って食べてみると、驚いたことにすごく美味しかった。ふわふわしてトロっとした食感だった。フレンチトーストじゃないみたいな食感だった。そんな驚きとともにフレンチトーストを食べてると誰かが反対側の席に座ってきた。

「ここ座っていいか?」

俺はそれを無言で返す。それを肯定と受け取ったのか朝からカレーという胃に重そうなものを選んできたガサツという言葉が似合いそうな男は座った。

「俺は仁川真にかわまことだ、日本から来た。お前は?」

そう自己紹介してきた仁川は俺にも自己紹介を促す。俺は渋々それに答えることにした。

「…伊佐樹彩牙、日本だ」

「おぉ!彩牙もやっぱり日本人だったか!そうだと思ってたぜ!」

同じ出身地というのが嬉しかったのだろう、仁川は俺に握手を求めてくる。俺はそれを無視する。

「なんだよ、つれねーな。まぁいいや、これからよろしくな彩牙」

(初対面でいきなり呼び捨てとはこいつなかなか礼儀知らずだな)

伊佐樹が言えたことではない。とりあえず、俺と仁川は朝食を食べ終えて学院に向かうのだった。その道のり。

「なぁなぁ、彩牙は何県出身なんだ?」

「…東京」

「まじか!俺は大阪だ!」

そこで俺は仁川を見て納得する。なるほど、大阪出身だったか、それなら無駄にテンションが高いのも頷ける。大阪人はノリがいいというしな。どうりでフレンドリーな感じだったわけだ。

「つかさ、東京のやつってそんなにテンション低いわけ?」

どうやら温度差が激しいことにいまさら気づいたのだろう、仁川が聞いてくる。

「別に…」

「ふーん」

そこから話が途切れて仁川も黙ったまま学院に向かう。

「でけーな、やっぱ」

仁川が感嘆の声をあげる。そう、ここガーディアンはでかいのだ。なにせ島の三割を占めているからな。そして、収容できる人数は五千を超える。そして、ガーディアン生徒は現在ニ千人強だ。男子と女子で三対七の割合らしい。男子はほとんど各国のガーディアンに派遣されるのだとかで女子の割合のほうが多いらしい。それを聞いた仁川は飛び跳ねて喜んでいたがな。俺達は学院内に入り歓迎式が行われる司令館に向かうのだった。司令館内はとても簡素な造りだったがニ千人強全員を収容でき、なおかつ全員に司令官が見える状態にできるよう作られていた。要はドーム状の司令館だ。中は暗く真ん中だけがライトで照らされていた。俺と仁川は適当に空いている席に座って待つ。しばらくして真ん中の壇上に誰かが立った。美少女だった。綺麗な金髪を三つ編みにして後ろにまとめている。西篠教官とはまた違った美しさがあった。まるで西洋人形みたいに顔が整っていて身にまとっている雰囲気は誰も近づけないような。端的にいうと近寄り難いやつということだ。そして、もう二人壇上に上がってくる。金髪の子とまではいかないが両方とも綺麗だった。片方は髪を後ろにまとめてその茶髪をちょこんとポニーテールにしている。そして、マイクを持ってキリッとしている。もう一人はおとなしそうにそのポニーテールの子の隣にいる。髪はポニーテールの子よりも短くセミロングというのか?しかし、優しそうな顔たちをしていた。そして、マイクを持ったポニーテールの子がスイッチ入れて喋り出す。

「よくここに集ってくれたな新入生。我々は……」

と、よくある歓迎式のおあつらえなセリフを言い出した。しかし、そこに遅れたきた生徒がやってきた。

「お、遅れてすみません」

ほんのちょっと後ろでそんな声が聞こえた。そこで壇上のセリフが止まっているのに気づいた。そして、遅れてきた生徒に指を指した。

「おい、そこの生徒!初日から遅刻とはどうゆう了見だ!」

「す、すみません!」

俺は後ろに振り返り遅刻してきた生徒を見やる。声でわかっていたが女子だ。紅髪のロングヘアーで壇上の人達みたいに縛っていない。しかしその美貌は真ん中でそれを眺めている三つ編みの子と同じか、それ以上の魅力があった。端的にいうと美少女だ。その子は必死にペコペコと謝っていた。

「気が緩んでいるな、そんなやつはここにはいらない!誰か一人がミスをすれば何人もの死者が出るのだぞ、貴様は退学だ!」

「そ、そんな……」

いかなりの発言に美少女は膝からその場に崩れ落ちた。そりゃそうだ、初日に遅刻しただけで退学とはたまったもんじゃないだろう。

「いいか、私は副司令の金沢颯花だ。貴様ら全員に退学命令をだすこともできる!それをよく胸に刻んでおけ!」

なるほど、あいつが副司令の金沢颯花か。なら、その横にいるのはおそらく桜蘭華夜。そして、真ん中で偉そうにしてるのがレミア・ラジェルローナ、だな。俺はそう推察してそれぞれの実力を見極める、が。

(ダメだな、レベルⅢのファグマを倒したとは思えない)

その体は三人とも華奢で、特に桜蘭華夜に関しては華奢とかそういうレベルじゃなかった。ただ、単純に筋肉がない。他の二人はまだマシなほうだ。指揮力があったとして実力はそれに釣り合ってないはずだ。それに、余計なことだが金沢颯花とレミア・ラジェルローナは胸がでかいのが欠点だな。それに関しては桜蘭華夜は貧乳までとはいかないが普乳ぐらいで動きやすいだろう、司令の二人は動きづらそうだ。俺がそう冷静に見極めていると後ろで遅刻した美少女がそこをなんとかと泣きわめく。

「お願いします!どうかまだ……」

「だめだ、貴様は既に退学命令をだしたはずだ。ここからでていけ」

「お願いします!」

美少女は必死に頭を下げるが金沢颯花はそれを許さない。そして、そこに俺の本音がすこし、というかもろに漏れてしまった。

「それぐらいのミスもカバーできないのか」

「なんだと?」

俺の声が聞こえたのだろう、副司令が俺の方を見るなり睨みつける。横に座っている仁川は「お、おいやべぇって…」と焦って止めさせようとするが俺はつづける。

「お前らがほんとにレベルⅢのファグマを倒したというのなら大抵のことはカバーできるはずだろ、それともそれができないのか?」

「貴様ぁ!上官にたいして無礼だぞ!私だけならまだしもレミア様まで侮辱したのは許さん!お前にも退学命令をだす!ここからでていけ!」

「笑わしてくれるな、そんな短気な性格でレベルⅢに勝った?よくまぁ勝てたものだな。どうせ、レベルⅣの成り上がりだろ」

「な、な、なっ!」

俺の返す言葉に金沢颯花は口をぱくぱくさせていた。そして、思いきり何かを叫ぼうとしてそれをレミアに止められる。レミアはそのまま金沢颯花からマイクをとり俺に話しかける。

「例え、レベルⅣの成り上がりだとしてもレベルⅢを倒したのには変わりありません。それに、私たち以上の成果をあげれる力があなたにあるとでも?もし、その子を庇っての言葉ならいますぐに取り消しなさい。痛い目を見たくなければね」

凛とした透き通る声でレミアはいった。その言葉にざわついていた周りの生徒が一瞬で静かになる。まるで凍えたように。

「じゃあ逆に聞くがそのレベルⅢのファグマは完全に消滅をしたのを確認したのか?」

そんな空気の中、伊佐樹は構わずレミアに言葉を返す。レミアも凛として答える。

「もちろん、私達はこの目でその消滅を確認しました。なんなら、この場にいる戦闘に参加した生徒が証言になりますが?」

伊佐樹はおもった。いや、正確にはその思い込みは当たっていた、甘い。甘すぎると。もはやここにいる意味は無いだろう。

「そうか、だったらそいつの言う通り出ていってやる」

俺は席を立ち出口に向かう。が、レミアの言葉にそれは止められた。

「待ちなさい、私は先程の言葉を撤回しなさいと命令したはずですが?聞こえなかったのですか?私はアメリカ出身ですが日本語はこれでもみなさんと同じぐらいに喋れますが、もしかして言葉の意味がわからなかったなどとはいいませんよね?」

明らかにレミア・ラジェルローナは煽ってきている。俺はその煽りに乗ってやることにした。

「もちろんわかってる。だが、誰もその命令に従うとは言ってないが?まだまだ勉強が足りないみたいだな、お嬢様」

背を向けたままそう言い返してやる。レミアはこめかみをぴくぴくさせているが、それでも冷静に言葉を返す。しかし、今ので彼女の堪忍袋の緒が切れたのだろう。声のトーンは先程よりも低く、威圧するように

「わかりました、決闘です。先にいっておきますがあなたに拒否権は存在しませんから。いいですか?私が勝ったら先程の言葉の前言撤回とあなたを私の下僕にします。」

その言葉に周りがざわつき始めた。決闘、そのまんまの意味。ローマがコロッセウムで剣闘士を集いその神聖な地で闘うように。つまり、俺とあの総司令官であるレミア・ラジェルローナと戦うということだろう。この学院でおそらく一番最強であるレミアとまだ武器すらも持っていない新入生の俺が。それはみんな驚くはずだ、そしてもう一つ驚く言葉があった。下僕、今彼女はそう言ったのだ。俺のことを自分の下僕にすると。ま、こき使わされるのは目に見えてるんだが。けどまぁ、ちょうどいいだろう。俺はその決闘に、挑発にのったお嬢様の実力やらとを測ることにした。

「いいだろう。しかし、俺が勝ったら遅刻してきた彼女を許してやることだな。俺が負けたら焼くなり煮るなり好きにすればいい」

「随分と威勢がいいみたいですがやはり彼女をかばってのことみたいですね。謝るならいまのうちですよ?」

「ほざけ、あくまでもついでだ。俺がお前らに要求することなんて何一つとしてないからな。しかし、それじゃあ不公平だろう?だからこうしてやっただけだ。それぐらい気づけ」

ピキッ、と空気を割いたような音が聞こえるぐらいにレミア・ラジェルローナの圧力とでも言えるべき気迫に周りの生徒達が怯え始めた。

「いいでしょう。明日の午前九時に第一訓練場に来てください。そこであなたを後悔させてやります」

レミアはそう言い終えると壇上を降りていきこの場から姿を消した。それを慌てて副司令の金沢颯花と桜蘭華夜が追いかける。そうして、壇上には誰もいなくなった。場は静まり返り静寂が訪れた。誰も何も言えない。先生達は慌てて生徒にそれぞれ指示を出してこの新入生歓迎式は過去最悪の幕を切って終わりを告げた。

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