紅一点が一番
私たちが、ログアウトしたのは、メンテナンス開始から9時間が経過した頃だった。
まあ、ローウェンの脳筋とカズは、レベルがまだ初心者帯だからってことで、開始1時間もしないうちに帰らされたけどね。
…え?悪口?ああ、これは彼が自分で行ってること。「俺は考えるよりもまず体が動くだから、こんなレベル判定なんだな。だから、俺の肩書きは脳筋だ。俺のことは脳筋ローウェンと呼べ。」って高らかに言い放つんだもの。
でも少なくとも10年はご近所なんだから、ほぼ一緒に居るし、彼が言うほど脳筋ではないと私も知っている。でもゲーム内ではこう呼ばないと彼の機嫌が悪くなるから、呼んでいる。
そういえば、今回何で、私が、こうしてるかというと、カズが、風邪引いて講義にでれないから、私とローウェンで見舞いに来てるというわけ。
というわけで、今回は私、アレサが案内します。
冒険者ギルド
まあ、ありきたりな冒険者の拠点。無い作品も多いけど、このゲームでは、国家行政の一部として組み込まれているから、その国その国において特色有るギルドが展開されている。
その中でも、最も権威有る影響力の高いギルドがラウサに本部があるこのザイラ王国総務省冒険者庁。30階建てのビルを有し、その中だけで数千人が働く。訪れる冒険者の数はゲーム内最大で、一日に数万人単位で新人冒険者が旅立っていく。
そして、このザイラ王国総務省冒険者庁が、強い影響力を有する理由の一つとして、国際冒険者支援機構という国際機関の総本部をその本庁舎ビル内に入居させ、相互に情報、人員などのやりとりを行い強固に連携しているからと言うのがある。
「アレサ・サルイーデン、貴公の優秀にして、心強い助力により、予定時間を遙かに上回る速度で、王国領土静定が完了したことをここに感謝申し上げる。
今回の報酬として、王国政府より、特別叙爵を行い、侯爵に任ずる。
領地経営義務は付随する物ではないが、貴公には、一定の領地が与えられ、一定額の税が、貴公の収入として、納められることになる。
メタい話だが、現実通貨に変換されて、あなたの口座に入金されますけどその際の入金者名は『ザイラ王国府国庫管理院(蒼藍王国総務省王立銀行)』ですので。
また、今回の静定任務に関わった功績より換算し、貴公のレベルがSCUKG加盟条件を超えたことをここに伝える。」
玉座に結構居心地悪そうに座る女性。私たちをラウサに導いてくれたパーティのリーダーで、この国の王の名を有する人。
「とりあえず、拒否権無いのでごめんなさい。…神子、ちょっと座ってみてもらえます?」
こう見ると威厳もへったくれもない。見た目より少し落ち着いた感じがするだけだろう。
「座り心地わりーなこれ。クッションへたってるし、スプリングが、上地越しにもろに当たるし、枠の金属部分はざらざらだし。取り替えないとなあ。ここ使うのって予定では次いつだ?」
「再来月です。」
銀色の髪と瞳をした女性が悪態付きながら傍らの同じ色した女性に問う。
「よし、宮廷長官と財務相は後で、国王執務室に来い。予算はかけずに座り心地の良い玉座を発注する。」
「そうだ。馬鹿騒ぎで忘れるとこだったが申し訳ない。これは、おまえの新しい冒険者登録証だ。」
真っ赤な髪と瞳を持つイケメンが手を出してきた。手の上には何も乗ってなど居ない。
「透過率100%って言うめちゃくちゃな素材でできているからな。」
とりあえず手を出す。それなりの重さと物が触れた感触がある。
ギルドが発行する最高ランクの冒険者カード。本当の意味での透明なカード。所有者がレベル5000を超えたことを意味している。




