とりあえず、戦い
[いきますよ。]
朝日がまだ遠くの山から登り切るか切らないかの頃に僕たちは、ギルド登録と、正式な冒険者登録のためにこのゲーム世界で最も大きな街へ向かうために最初の村を出発した。周りには同じ目的なのだろうか、僕のようなペーペー装備のプレイヤー達が数百人単位でいた。
「ラウサの街までの最短はネーレの街から鉄道に乗ることですが、あいにく皆さんの路銀ではこれが使えません。よって、これから合計16時間計2日間徒歩の旅となります。」
リンさんが断言する。げんなりする僕たちに対してマスミさんが僕たちを集めた。
「とりあえず他のプレイヤーとはばらけなあかん。ここは初心者マップやからそうそう強いのはでえへんけど、ここで死んだら正式登録も済んでへんのやから、ゲームオーバーで一ヶ月間の再アバター作成停止や。そやから、とりあえずばらけたら転移魔法で、ラウサまですたこらさっさやね。」
要は、他のペーペープレイヤーにばれないようにということだろう。
「だからって何でばらけてうちらしか居なくなったらこれ出てくるのかねえ。」
「馬鹿なんでしょ。」
僕らの目の前には巨大な小山ほどもある赤黒いトカゲが居た。
「ミコさん、あれなんですか?」
「ん~?あ~ベヒモスサラマンダーの幼生。要は地怪龍の子供。」
大地の怪物と言われるオオトカゲの子供。
「あれ?何で神子さんは武器を出さないんですか?」
「この子が戦う気になると、この子の味方側の勝ちは確定するから。これかなりのチートでね。ゲームバランスを崩壊させかねないの。だから、この子を極力戦わせないようにしてるんだ。それと、そこらのフレイムスライムは、君たちでも倒せるよ。」
リョウコさんが言ったとおり僕らのへっぽこ武器でも朱色のスライムはプチプチつぶれてくれた。
「だめだこりゃ。」
全くもってオオトカゲに傷がつかない。
「ハルナ、もう良いかな。」
ハルナさんに視線を向ければ、呆れ顔でうなずいていた。僕の腕に呆れているのか、オオトカゲの堅さに呆れているのか。
「ミコ、撃って良いよ。」
何を撃つのか。
「45砲用意。」
『武器パッケージのダウンロードを承認しました。パッケージネーム『3700口径4500cm三連装高度術式魔導砲』4基展開します。』
アナウンスが流れ、神子さんの左右に巨大な砲塔が現れる。
教科書で見たことがある物だ。
「あれ?」
「コーウェリア級旗艦専従戦艦主砲3700口径4500cm三連装高度術式魔導砲。その試験砲塔4基がこの子のメインウェポン。実物大。」
それは発射時の爆音もなく爆風さえもなく、ただ静かに敵たるオオトカゲにゼロ距離射撃となり、地形ごとオオトカゲを跡形もなく消し飛ばした。
「サーバ負荷がものすごいんだこれ。」
そう神子さんが笑っていた。
そうこうして僕たちは途中細々した雑魚をつつきながら、ここらで一番栄えているネーレの街に着いた。
まあ、街には入っていないけどね。