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もし私が神なら  作者: 福竹
薄ら寒い何か
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宝箱を見つける

 自然のままに伸びて絡まりあった茂みをかき分けて進んだ先にポッカリと直径十メートルほどの円形の空間が開いていた。ハイキングコースを逸れて二十分程度下ったところにあったその場所は白い花で覆われていて、見上げても樹木に遮られて空以外何も見えず、まるで秘密の花園といった風だった。


「いい場所だねえ」


 芳生のその意見には春でさえ「やぶ蚊さえいなけりゃね」と言った程度で、いつものような全面的な否定はしなかった。蝉の声は人外の領域に忍び込んだ者たちへの警告のように体中を包み込み、彼らの会話はいつもより少し大きくなった。


「この辺りだと思うんだけどなあ」


 地図には麓に鳥居のマークが書かれた山が描かれていて、そもそもこの近所で麓に神社のある山といえばここしかなかった。この山はパソコンを買ってもらう前の大喜と芳生が秘密基地をあちこちに作った根城のような場所で、決して精密とは言えない地図に書かれた大まかな目印でも、それを頼りにして大して迷うことなくここまでやってくることが出来た。それでも小学生が遠足で登る程度の小山とはいえ、道を外れた所は急な傾斜か人の手の入らない自然林で、四人のジャージは枝や刺であちこちにほつれて濃い汗の染みができていた。


「ねえ! これじゃない?」


 宝と聞いて先程から俄然やる気の春が、円のほぼ中心で何かを見つけた。三人が近寄ってみると彼女が指差していたのは、すべすべとした拳大の丸い石であった。


「怪しすぎる。地雷とか埋ってるんじゃないだろうな」


 担いで来た小型のスコップを昨日見た紳士のように地面に突き立てて芳生はじっと石を見つめた。


「つべこべいわず掘れ!」


「あと一時間くらいで日が暮れちまうし、ここを掘って何もなかったら今日は引き上げにしようぜ」


 男子が掘っている間、女子はレジャーシートを広げて持ってきた麦茶をのんびりと飲んで待った。


「ワクワクするねえ!」


「でも、絶海の孤島とかならまだしも、ここってハイキングコースがあるくらいだから市有地でしょう? 小判が出てきたとしても貰っちゃうわけには行かないんじゃない?」


「興ざめ! まったくあんたは……萎えだよ。萎え! 萎えキャラ!!」


「そのうち萎えキャラブームが」


「来るかボケー! 来たらその時はこの国も終わりよ」


「俺も人をがっかりさせる才能があるって言われたことあるんだけど」


「お前は存在自体がガッカリなんだよ! 黙って掘んなさい」


 その時大喜の突き降ろしたスコップが何か硬いものに当たる音がした。


「この音を待っていた!」


 スコップがぶつかった周辺を手で払うと、樽のように丸みを帯びた明らかな人工物の一部が現れた。


「これはどう見ても宝箱」


「本当にあったぜ……」


 穴を覗く二人の鼻や顎からは、締りの悪い蛇口のように汗が落ちた。しかしそれはもう報われた汗だった。


「芳生くんじゃないけど、あっさり行きすぎてちょっと怖いね」


「思ってたのより小さそうなんですケド」


「文句言うな。だいたいがケチな野郎がくれたものなんだし」


 完全に掘り出すと大喜はそれを雄叫びと共に頭上に掲げ、その他は拍手した。箱は猫が一匹入る位の大きさで、防腐処理がされているのか土に埋まっていた割には木もまだしっかりとしていて、角を守る金属に掘られた装飾もその線を保っていた。しかし鍵がかかっているようで、爪の入る隙間もないほどぴったりと閉じられた箱は四人がかりでもびくともしなかった。

 四人は代わる代わる鍵穴を覗いたが、木々に囲まれた場所に差し込む光もいよいよ弱くなってきていて、その先はまるで深い井戸を覗きこんだように何も見えなかった。


「とりあえず家に持って帰ろうよ。なんか残念なくらい軽いし」


「あなたもかなりの萎えキャラだよね」


「私は正直なだけ」


「よし撤収!」


 四人はチョークでつけた目印をたどって元の道に戻った。途中よじ登らなければいけない場所で、ね子は芳生に手を貸そうかといわれたが大丈夫と断った。

 見上げる空の色は深い青に変わろうとしていた。ね子は自分と芳生の手を、そして昼と夜の境目を何度も振り返って見た。


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