人に絶望した花
久々の投稿です。これから定期的に投稿していきたいと思います。
今回のお話は、二回にわけておおくりいたします。
-暇だ。
遠山病院は今日も平常運転である。受付では先程から、菖蒲と睡蓮が楽しそうに話している。たまに聞こえてくる話の断片から察するに、恋愛の話しをしているようだ。いわゆる女子トークというやつだ。遠山は中学から高校まで男子校に通い、大学も医学部であったため女子との関わりは希薄であった。いや、ほとんど関わりがなかった。正確にいうと、0だ。そんな遠山が、今では自分が経営している病院で女性二人を雇っている。奇跡といっても過言ではない。
-しかしな、、、、。女性と一緒にいるというのは、もっと、こう、心の踊るものだと思っていたんだがな。
女性というものに幻想を抱く。男子校出身の人間によく見られる傾向である。遠山も例外ではない。女性と一緒に働くといのは、もっと夢のような世界であると考えていた。「先生、お疲れですか?肩でも揉みましょうか??」とか、「これから、、先生のお家にいってもいいですか?」とか、、、もっとフワフワした世界を夢に見ていたのだ。しかし、現実とは常に無情なものである。菖蒲は遠山に対していつも強気だし、間違っても「お疲れですか?」とか、「すごいですね!!」とか、いたわったり労ったりなんてことはしない。先ほどから聞こえてくる女子トークも、かなり辛辣な内容が多い。こんなものを男子校の中高生が聞いたら、きっと卒倒してしまうだろう。
男子校では、女性の生態系について学ぶ授業をやるべきである。そんなことを考えていると、不意にドアにつけられた鈴がチリンチリンと音を立てた。音のする方へ目を向けると、そこにはほのかに茶色がかったショートヘアの少女が立っていた。制服から考えるに睡蓮と同じ学校の生徒であろう。遠山は少女を見て少し気が重くなった。確信は無いが、少女はどうやらアッチ系の問題を抱えているようだ。美少女とまではいかないが、容姿は整っているし、立ち姿からは気品も感じられる、しかし、目が、明らかにおかしい。全く生気が感じられない。視線は確かにこちらに向けられているのだが、どこか虚空を見つめているように見える。
「こんにちは。今日はどうされましたか?」
初めても患者さんであるとハリキッた様子で睡蓮が少女に話かけた。
「、、、、。」
-反応なしかよ。
目の死んだ少女は遠山のほうを見つめたまま全く動かず、睡蓮の存在など気にしていないように見えた。
「えっとー、、、」
始めても患者さんにいきなり無視をされて、睡蓮は途方にくれているようだ。このまま、ほっといて自信をなくさせればバイトを辞めるのではないか、などという考えがチラリと頭をかすめた。しかし、途端、背後に冷たい殺気を感じた。振り返らなくても誰から向けられた感情なのかはわかる。
-しょうがないな。
ため息をつきながらも遠山は謎の少女と戦闘を繰り広げることにした。
「『孤独は、知恵の最善の乳母である。』と哲学者マックス・シュルティルナーは言った。君はどう思うかね?」
遠山は唐突に少女に質問を投げかけた。すると、いまだ虚空を見つめたまま少女は口を開き始めた。
「孤独は自分について知るために必要なもの。でも、自分をしることに意味はあるの?」
その声には感情というものが感じられなかった。
「自分について知ることはとても大事だと思うがね。」
そう言いながら遠山は少女に椅子をすすめた。少女は椅子に座りながら応える。
「自分について知ったって悲しくなるだけ。そして、それは他人に関しても同じ。」
「それは、つまり知れば知る程人間が嫌いになるということかな?」
「人の考えが聞こえるようになれば、先生もわかりますよ。」
アドバイス、批判等なんでも受け付けています!!