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何処からか声が聞こえてくる、騒がしいおどおどした声が俺の耳に刺激する。


「夏樹さん! 夏樹さん!」


この声は…テイラ、なんで俺を呼んでいるんだ、…何か背中が固いし手が温かい、テイラが手を掴んでいるのか、ちょっとまてよこの状態は寝てるのか俺は…あ、そうだ思い出した、そうか俺はまたここに来たんだな。

とりあえず目を開けよう。


夏樹は真っ暗だった視界をゆっくりまぶたを開けたことにより、太陽の日差しがとても眩しく感じていた。



横に目をやるとテイラが夏樹の手を両手で握っていて、顔が涙でくしゃくしゃになっている。女心を分かっていない夏樹は最初の放つ言葉が「何で泣いてるの?」だった。

夏樹はすっと体を起こして座る。


「よっ」

「よっ、じゃないですよ! いきなり倒れたから心配したんですよ!」


ばかばかと夏樹の胸を叩いては泣く。夏樹の思考は1日しか経ってないのになんでこんな慣れなれしいの? だった。

でも固いのが嫌いな夏樹はその慣れなれしく振る舞ってくれることが嬉しく感じている。

テイラの頭をポンポンと手を置き口を開いた。


「お腹空いた」

「へ? それならそこら中にあもんの実が」


あもんの実を採ろうと立ち上がろうするが夏樹がそれを止める。


「テイラの手作りを食べたい」

「となると」

「おう、いってら」


言葉を察したテイラは再度立ち上がり、笑みを見せて一言交わしてから宿へと歩き出す。

夏樹はこうしてテイラと話して無機質な世界で起こったことを気にしていないように見えるがそれはただ表に出さないだけで内心ではかなり苛立ちを持っている。

だから別にお腹を空かせているのではなく少し一人になりたいと思いテイラをここからおいだしたのだ。


しばらくその歩くテイラの背中を姿が見えなくなるまで見つめていたが見えなくなった所で上から何かが降ってきた。



地面に落ちてパサッと開く、それは1つの本で内容がギュウギュウ詰めなのかやたら分厚い、タイトルが異世界攻略と書いてありそれがよけい夏樹を狂わせた。


夏樹は立ち上がり本を拾う、そして。


「くそぉぉぉぉ!!」


今までにない叫びを上げて本を投げつける。

神が作った本なので投げただけでは壊れない、破ろうとしても固定された紙は破る事も出来ない、それでも暴れまくっていた。


しばらく時間が過ぎてようやく夏樹も落ち着きを保ち、力が抜けたように地面にドサッとため息混じりに座る。

すると何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきて夏樹の目線は前を見る。


「落ち着きました?」


無言で夏樹は前を見続ける。

少し間が空いて空気が重い、辺りは風に揺られる葉っぱの音が響いてるだけだ。


「本…読まないのですか?」


ここでも無言。


「雪野さんの事を少し調べさせてもらいました」

「はぁ!?」


これについては驚きの顔をして立ち上がった。


「調べたのかよ!」

「はい」


神は冷淡な返事をして、夏樹ははぁとため息を吐く。


人の個人情報を勝手に調べるなよ、ぜってぇあいつ俺に不本意な条件出すだろ、なにあれか、そんなに俺が魔王を倒せってか、あいつは虫か、人に取り巻く虫か、しつこいんだよ、だいたい何で俺なんだ。


「病気でおいなくなりになったのですね、運がないようで」

「知ったような口を開くな」


ちっ、神って何でもありだなクソヤロー。

まぁでも確かに運がないことは否定出来ない、何も無いところに転けるし、財布は落とすし、ひったくり犯を捕まえて警察に報告するのはいいが自分が犯人と疑われるしな、あの時は俺とダチで必死に警察に説得したっけ。


夏樹は昔を思い出して少し顔が綻び快晴の空を眺める。

そして雪野の病気の事を自然と夏樹の口からでていた。


「あいつが倒れたと聞いて俺は急いで病院に駆け出したんだ。白いカーテンに揺られ複数の点滴があいつの腕にたくさんついていた、それはもうショックだったよ」


神は真剣な表情で話を聞く、当然テレパシーで会話をしているので夏樹にはそんな表情をされているとは気づいていないが勘、何となくとだけど夏樹は話を聞いてくれていると感じていた。


「雪野はそんな俺の表情を気づいたのか、ごめん倒れちゃった、てへっ、て笑みを浮かべさせて言ったんだ、その笑顔で最初はただ貧血か何かで倒れたんだろうと、直ぐにでも退院できるだろうと思っていた」


夏樹の表情が少し曇るがそれでも空を見つめる。


「でもしばらくたっても病気が治らなかった、咳は酷くなるし熱は出るしで治る処かどんどん病気が悪化しているようにみえたんだ。だから俺は医者にどんな病気か聞いた結果が死に関わる病だと、治るのは限りなく少ないと宣告された」


あの時は雪野に何で死に関わる病と教えてくれなかったのか激怒しながら聞いたんだっけな。

で、苦笑いでで張れちゃったかとあいつが答え、全てを話してくれたんだよな、それが皆に心配掛けたくないと言ったのをよく覚えてる。


それで俺はその言葉に怒る気にならなくなった。

あいつは俺とダチの心配かけたくないという俺達の為にだまってたんだし何よりもそれがあいつの気持ちだから。

でもせめて俺だけでも教えて欲しがった気持ちが正直だ。

そうすればあいつだけその気持ちだけ背負わなくても俺も背負う事ができた。


「あいつはいつも明るくて優しいんだよ、誰も心配をかけたくないからその事をだまっていたんだ」

「そう…何ですか」


小さい声と同時に同情する。


「なぁ、そんなあいつに俺は1つ質問したんだ、死ぬのが恐くないのかってな」


神は首を傾げて考えて少し間が空く、閃いたのか手をぱんと合わしてこう言った。

当然夏樹にはそのしぐさは見えない。


「やっぱり怖いとか」


夏樹は半分正解と答えた。

さっき暴れてたのが嘘みたいに夏樹は神に話している。


それは今言ったように暴れたのがよく効果が効いているのがきっかけ、もう1つあるのだがそれは先程神がいっていた、「私だって大切な人はいます」と言った言葉に夏樹は少し驚いていた。

夏樹の考えには神にも神の考えが合ってのことだろう、何事も気にしない派のこともあるので特に先程の怒りはない。

だがそれでも多少の苛立ちはまだ持っているようだが。


話を続けて夏樹はこう言う。


「正解は皆が私の側にいてくれるから恐くない、夏樹は私の彼氏であり大切な人でもある、そりゃあ死ぬのは怖いよ、でも夏樹が私の事を忘れないなら私は何も恐くない」


あの時を思い出したかのように顔が綻び、夏樹はトゲトゲとした口調でこう言う。


「だから俺はずっと近くにいるし、雪野の事を忘れたりもしねぇ、毎日墓参りやお盆の日に何か家にだって訪れていた」


神の口がごもる。


「それをテメーがこの世界に連れてきたことにその約束が破れかけてるんだよ、さっさと日本に帰しやがれ!」

「帰しませんよ」


ここは深く宣言した。

ちっ、と夏樹は舌打ちをして冷めた目付きになる。


まぁ多分そんな感じの返事が返ってくると思ったよ、俺があんなに頼んでも了解してくれないし…てことは早ぇとこ魔王とか言う奴を殴り殺して日本に帰る。そうと決まれば早速魔王退治だ。


「おい神、俺は今から魔王を殴り殺しに行く、何処にいるか教えろ」

「ヤル気出てくれたんですね!」

「勘違いするなよ、俺はただ早く日本に帰りたいだけだ」

「うん、やっと分かってくれて私は嬉しいです」


神の声のトーンが凄く高くなり、嬉しそうな表情になる。

夏樹はさっさと教えやがれと急かすので神はこう告げた。


「魔王はまだ復活してあません、夏樹さんはまず魔王の復活を企んでいる組織を潰してください、そうすれば魔王復活は妨げられ世界は平和になると同時に夏樹さんは日本に帰れます」


ちっ、組織と言うことは複数いるじゃねぇか、時間が食われる。


「で、そいつら何処」


不意に俺の声が妨げられ代わりにテイラの声が聞こえてきた。


「夏樹さん、弁当を持って来ました」


テイラの右手には弁当を持っていて夏樹はこう思う。


そうだった、テイラにお腹空いたっていったんだっけな、ちょうどいいや、神と話しているうちにも腹が減ったし、早く組織を潰してぇが腹が減っては何とかだ、先に腹越しらへだな。




















感想、評価を待ってます。


次回はまさかの村が滅びる!?

何ですが少し投稿が遅れます、すみません。




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