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遅くなりました。
では、どうぞ。
目の前にいる奴等は1.2.3と7人、いや8人だ、俺は首を左右に回し、1人の動く影を捕らえた、
さっきのしょんべん野郎は茂みに隠れて身を潜めていやがるな、首を奴等の方へ戻すと相変わらず奴等が俺を睨む。は、いい面してるな、ギロギロ俺を睨んでるなんて。
「ふっ」
つい顔が綻びてしまう。瞳孔が開き心が踊ってる。
何年ぶりだろうな、俺に喧嘩を売ってくる奴等なんて、日本じゃあ皆俺にびびって強者か馬鹿しか向かって来なかったもんな。
バットが無いことに残念だが、素手でも俺は充分に闘える。
よし、燃えてきた。
「さぁ、どっからでも掛かって来いよ」
盗賊たちは童謡してるのか周りの奴等と耳打ちをしている、当然のように1人の相手に盗賊達は負ける気は全くもってない、だが夏樹のあの自信に満ちた態度が盗賊達を童謡させているのだ、そうとも知らず夏樹は両手を広げ、好きだらけな格好で更に盗賊達を童謡させた。
等の本人はそんな気は全くないし、ただ夏樹はこの異世界初の喧嘩で血が騒いでいるだけなのだ。
「い、行け、お前ら!」
1人の盗賊が剣幕な形相でそう言うと残りの盗賊がうぉぉと叫び一斉にして夏樹に襲い掛かる。夏樹はまるでそれを待っていたように満面な笑顔で向かいうち1人腹に強烈な蹴りを食らわせ、後ろにいる奴を3人を巻き沿いに吹き飛す。
吹き飛ばされた奴等は木にぶつかって、サンドイッチになり2人が気絶し残りの二人は低い声で呻くが、その時夏樹は1つの不満を抱いていた。
は? なにこいつら弱すぎるだろ、一撃食らわせただけであんなに飛ぶか?
そう思いながら顔を傾げる。
ま、まぁ奴等もまだ本気を出していないんだろうな、はは、じゃなきゃあ本当に期待外れだぞ。
…えっと。
さっき指事をした奴がリーダーと感づいた夏樹は奴の立っている方へ歩き、こう言う
「よぉ、あんたがリーダーだな」
目の前に立つ。
髪型ツンツン立たせ赤髪に輝いて顔はなかなかのイケメンで目が垂れ目。服装が黒いマントを身につけ、頭には自衛隊が着けるようなパンダナを着けて、リーダーらしき人はくくっと笑いだし傲慢な表情をする。
見くびっているのだ、奴はさっきの蹴りはたまたまツボにはまったまぐれ当たりと勘違いをしている。
数ヶ月ここの森や草原、村を支配してきた奴はそのような考えしかないのだ、もし夏樹が自分より強ければとっくに殺られている、そんな夏樹が今まで奴を倒しに行かなかったのは夏樹より自分のほうが強者。
奴はそう思いだから自分が負けるとは思っていない、自分こそが強者と思っているが、残念ながら夏樹は今日何者かの仕業でこの世界に召喚された人間だ。
勝負の行方はまだ誰も知らない。
「悪いな、俺はこの大陸を支配して一度も負けた事がない、勿論お前に負けるつもりもないぞ、ははは!」
盗賊は勝ち誇ったように高笑いをする。
「…お前それ完全にフラグ立ってんじゃねぇか」
はぁこれは完全にお手上げだ、絶対こいつら弱い、ちっ、と舌打ちをして冷めた目付きで睨む。
「何だテメぇ、俺様に睨むとはいい度胸だな、おい」
「ごたくはいいから早く来いよ」
「何だと?」
どうやら何処かの脳に亀裂が走ったみたいで、奴はいきなり殴り掛かかった。当たるとそう思い奴はニヤリと勝ち誇った悪い笑みを見せるが。
それが一平にして蒼白な表情に変わった。
「ぎゃあああ!」
「何このパンチ、舐めてんの?」
夏樹は冷めた目付きのまましっかりとそのパンチを受け止めて、同時に夏樹の握っている手を力強く奴の拳に圧縮し、ボキボキと骨の折れた鈍い音が響いき、その瞬間周りにいた盗賊達は蒼白に変わる。
辺りが静かでより鈍い音が響き、あまりにも鈍い音に皆が引いている。1歩2歩とずるずると下がり逃げようとするが1人の盗賊が足元にあった木の枝を踏む。
音が夏樹の耳を刺激し、その方角へ視線を向けると奴等は化け物を見たような表情をして言葉になっていない奇声を放ちながら猛然と馬車へと走り抜けた。
あ、馬車にはナグ達が…ちっしゃあねぇ。
リーダーらしき人の手を離し、体を持ち上げそのまま半回転。頭から地面に埋めようとすると。
「おい、な、何をする気だ!」
「えっ、何って埋めるんだよ」
イケメンの顔が涙と鼻水でくしゃくしゃになっているが夏樹はそんなことをお構い無しに地面に埋める。笑顔で。
次に隣に立っている木に近づくと夏樹はその木にパンチを披露して木を倒すと丁度盗賊達の向かっている方角にじわじわと倒れ、盗賊達はそれに気づかずに逃げる。
「な、何だ!」
盗賊達が必死に走っているところで1人の男が目の前に現れる影に気づき後ろを振り向く。
その瞬間男は木がこっちに倒れているのにようやく気づき蒼白の表情のまま仲間に知らせようとするがもう遅し、知らせる前に木がドーンと音が鳴ると同時に盗賊達を下敷きにした。
危な、危機一髪じゃねぇか、馬車に当たらなくてよかった。
そんな考えが束の間、馬車に着いてるドアからひょいとナグが顔を出し倒れた木に気づくと、蒼白な表情をして俺の顔を見る。
てかお前らはどんだけ顔色変われば済むんだよ。
「おい、なんの音と思って見てみたら木が、これあと数センチ近かったら馬車に激突だぞ!」
「はは、生きてるから良いじゃねぇか、良かったな馬車ごと下敷きにならなくて」
「他人事みたいに言うなよ!」
ちっ、何だよこの敗北感、せっかく全滅してやったのに何で怒られるの?
…まぁ、とにかく村長のいうテイラ救出が成功してよかったよ、余裕だったけど。
視線を倒れているほうを見てはぁとため息を1つ。
結局奴等全然弱かった。てかこんな雑魚にあの村は支配されてるのか? てことは村人はこいつら異常に弱い事になるよな。
あ、いや、人の言う言葉は絶対だったか、小説で見たことあるが獣人族は人間より身体能力が非常にたかいとかなんとかだから戦えば獣人族が勝つかな。
「よしナグ、いまから俺と戦え!」
「は? 何で急にそうなるだよ」
ちっ、冷めた目付きで俺を睨んできやがる。
今日だけでけっこう疲れたから別に戦いはもういいや、芋虫に遭遇して災難にもなったし、それにしても腹が減った早く帰って猪肉の宴だな。
「おい、ナグそろそろ帰ろうぜって何でそんなキョロキョロしてんだよ」
今言ったようにナグは何かを探すように首を左右に回し周りを見る。
「いや、盗賊の姿が見えないと思って…」
「ああ? それならそこの木が下敷きにしてるぞ」
指を木に指すとナグはその指された指の方角を見ると同時に呆れた表情をして俺をガン見。
「俺はもうツッコミを入れないからな」
おい、何処かで聞いたような台詞だな、それ。
「お、お兄ちゃん?」
不意に顔と猫耳がぴょこっとドアから出てきた。
こいつがナグの妹か、うむ、可愛い女の子だ、整った顔立ちにクリクリとした青い瞳、髪は黒髪でリンスでもつけたのかと思わせるほどサラサラしている。そんな女の子がキョトンと俺を見るが…何だ? 何か涙目になりながら今でも叫びそうに低い声で呻いてるんだけど。
俺は女の子に近づき挨拶をしようとするが。
「ひっ、もう止めて下さい」
初対面でいきなり嫌われたんだけど!
俺も女の子に嫌われたことに涙目になるがぐっとこらえ誤解を解くために手を伸ばすけどそれでもやはり怯える。
「お前、テイラを泣かしたな」
「おい」
夏樹がナグに低い声をだして睨むと流石に悪ふざけと思い謝罪しながら苦笑いし、夏樹もナグとテイラの再開に手伝ったのにこの結末はあまりにも酷いことだろう。更にナグがテイラの内に入るのは苛立つのも無理がない。
「テイラ、こいつは永良夏樹と言って、俺の代わりに盗賊をやっつけてくれたんだ」
「えっ? 嘘だよねお兄ちゃん」
細い目で夏樹を見つめるテイラは半信半疑で疑った。
テイラの心には何時も正義感が高く、優しいお兄ちゃんが嘘を吐くはずがない、そんな思いが1つともう1つが人間が獣人族を守るはずかない、そんな思いがテイラの心を鉛のように重く閉ざされている。
だからこれらの思いで夏樹が盗賊を倒すはずがないとテイラは見ている。
テイラは夏樹を獣人族ではないと一発で見破り怯えた。
村では夏樹を見たこともないし何よりも猫耳と尻尾がないことが見破られた原因。
もし、夏樹が村の人だったら素直にお礼も言えるのに人間と気づいたら人を疑うことしか出来ない。
獣人族がそのような考えが出来ないのはそのぐらい昔から人間に酷い仕打ちをされて来ただからなのだ。
「まぁ、今まで人がお前らの獣人族が酷い仕打ちを受けてきたのは充分に承知してるから信じられねぇのも分かる。
別に疑われようが俺に関係ないがな、そんな事より村で早く宴しようぜ」
悪いなとテイラの事をナグは謝り宴を賛成する。ナグはこの頃あまり食事をしてないのでお腹がすいていた、夏樹も村に来ると知ったテイラは嫌々ながらお兄ちゃんの言うことを聞いて、一緒に村へと帰るため足を運ぶ。
その時テイラの視界に不可解な物体を見て目を疑う。
「人が地面に埋まってる…」
目を擦るが人が埋まってる風景が変わらず、思わず固唾を飲む。
まさか本当に…
一瞬思うが直ぐに首を左右に振りこの考えをそらす。
これはきっと仲間割れでもしたんだ、そうに違いない!
ナグはテイラが足を止めてる事を気づいてないのでみるみる距離が広がりそれに気づいたテイラは急ぎでお兄ちゃんの後を追った。
夏樹達がこの場をさっていった頃、茂みに怪しげな影がざわめく。
夏樹はまだ知らなかった、いやこんな事になろうとは恐らく誰も気づかないだろう。
夏樹が倒し損ねた…いや、忘れていた盗賊の一味が明日、村に事件を起こす事を。
次回はついに夏樹がこの世界に来たのか、記憶が蘇ります。
お楽しみに。