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戦天女の黙示録  作者: 平平
二章 夜叉の子 那由多
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其の五

 闘いが終わると宴会をする決まりでもあるのだろうか?

 浩介は料理を作りながら考える。

 自分が暴走した手前、黙々と料理をしているのだが、この神々の宴に文句を言いたくて仕方がない。

 それは、全員酒癖が悪いという事だ。

 前回まともだった空臥は、那由多のせいでボロボロだ。向こうの上下関係の影響なんだろうが、それはもう、酷い扱いである。見ている浩介は変わりに泣いてやる事しか出来ないのだ。

 新しく加わった那由多は絡み酒だった。酒が入る前までは、今でも奥で寝ている桃華の心配ばかりしていたのに、今は空臥と凛を困らせている。

 どうやら、那由多は桃華の事が気に入ったらしく、自分が鍛えて強くさせたいらしい。那由多曰く「桃華は最高だ!」という事だ。

 那由多の入れ込みようが気に食わないのが瑠璃である。

「お姉様はきっと那由多にベッタリになるわ。強い人達っていいわね……」

 そう言い残し、ひたすら自棄酒を煽っている。

 吉祥天と弁財天はこの前と同じだ。楽しく喋っていたと思えば突然弁財天が切れる。これを壊れた玩具の様に何度も繰り返している。

 炎輝は桃華の様子を見にいったり、瑠璃を慰めたり、吉祥天に餌を運んでは弁財天との揉め事に巻き込まれたり、那由多に絡まれたりと、大変な様子だ。

 韋駄天がいない影響で、浩介は料理の手を休める暇がない。色々聞きたい事もあるのだが、そんな暇はないようだ。

 そうそう、杏を忘れていた。杏は、早々に別室に逃げると、お気に入りの特大クマのぬいぐるみを抱いて(抱かれて)寝ている。

 その風貌も相まって、ただの園児にしか見えない。


 賑やかなのはいい事だ!


 そんな事を考えながら、浩介はひたすらフライパンを振るう。

 浩介の目に映る神々の宴会は、やはり一家団欒にしか見えなかった。


                 ●


 須弥山のとある廃屋に一人の男が立っている。

 男は、廃屋に入ると、朽ちかけている椅子に腰掛けた。

 右手には野球ボール大の水晶玉を手にしている。その水晶玉の中には炎の様なものが揺らめいている。

「ただいま、父さん」

 不気味な笑みを浮かべるその男は、瞳を閉じると音楽を聴き入っているかのようにリズムを取りながら思い出に浸る。

 暫くすると、男は突然立ち上がり、目の前のテーブルを蹴り上げた。その後、部屋にあるありとあらゆる物を叫びながら破壊し始める。

「くひっ! ふひひひっ!」

 奇妙な笑い声を上げながら、埃が舞う部屋に立ち尽くす男。

「もう少し……もう少ししたら……僕が殺しにいってあげるよ、父さん!」

 高笑いをしながら水晶玉を掲げる手に力が入る。

 そのまま握り潰してしまうのではないかと思うくらい力を込めるが、その水晶玉は絶対に壊れる事はない。

 この水晶玉を消し去る方法は唯一つ。


 継承法具で触れる事。


 これは、神の信仰力を封じ込めた水晶玉。

 そして、これを手にしている男の名は……


『飛舞』


 梵天の力を奪った男。

 須弥山でただ一人、業魔の力を得た男。

 飛舞の高笑いは須弥山全土に響き渡るのではないかと錯覚してしまう程、大きな声だった。


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