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戦天女の黙示録  作者: 平平
一章 風神、雷神
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其の十七

 桃華の元へと歩いていると、地面にキラっと光る物を発見した。

 浩介はそれを拾うと空にかざしてじっくりと眺める。

 大きさはパチンコ玉程で、小さな水晶球のようにも見える。

「綺麗だな、これ」

 記念に持って帰ろうとポケットにしまった瞬間、浩介の視界が揺れる。

 ……バタッ。

 突然倒れた浩介に、全員が慌てて駆け寄って行く。

「おい? どうした?」

「浩介ちゃん!?」

 皆が心配そうに声を掛けるが、その声は浩介には届かない。

(どうなっているんだこれ? 何かフワフワしている。暗い……とても暗い。そうだ! 目を開けてないんだ!)

 ゆっくりと閉じた瞼を開けていく……

 眩しさに目がついていっていない。

(うっ……目が痛い……って、何処だここ?)

 慣れてきた目に映った光景は、先程まで居た場所とは全く違っていた。


 目の前には八人の神々が座している。よくは分からないが神だと認識していた。

 中央には釈迦如来(しゃかにょらい)、その左右に阿弥陀如来(あみだにょらい)薬師如来(やくしにょらい)。そして、五智如来(ごちにょらい)と呼ばれている五人の前で自分は片膝をつき頭を下げている。

 これは浩介ではない。どうやら弥勒菩薩の記憶らしい。それだけは理解出来た。

 何か話をしているのは分かるのだが、声が聞こえてこない。

 弥勒菩薩が話を終えると同時に薬師如来が勢い良く立ち上がる。他の如来達が項垂れたままピクリとも動かない。

 一体どんな話が繰り広げられたのか理解出来ないが、不穏な空気が流れている事だけは分かった。

(何なんだよ、これは? 身体は動かねぇし、声も出せない……)

 弥勒菩薩は立ち上がると、この場を去ろうと如来達に背を向ける。

(これを俺に見せてどうしたい? 答えろよ、弥勒! 俺に何かさせたいんだろうがっ! まどろっこしい事するんじゃねぇよ!)

 苛立つ浩介の声は誰の元へも届かない。

 そのまま目の前が真っ暗になった。


 浩介が再び目覚めると、そこには見慣れた顔ぶれが一堂に会していた。

「……どうした? みんなで俺を見つめてさ。照れるじゃねぇか」

 軽口を叩きながら、上半身を起こす。

「どうした? はこっちの台詞よ。何があったのかしら?」

 先程、何かあったら報告しなさいと言われたばかりだ。弥勒菩薩の記憶を見せられた事を伝えるべきなのだろう。だが、浩介は思いとどまった。

 伝えるべきではないと、浩介の中の弥勒菩薩が訴えていたからだ。

「あ、あぁ、ちょっと目眩がしただけだ。問題ない」

 不審そうに見つめる吉祥天だったが、とりあえず浩介の言葉を信用したのか、その場を離れていく。

 集まった中で一番心配そうにしていたのが、空臥と凛だった。

 どうやら、受けた恩を返す前に居なくなられては困るという理由らしいが、本当のところは二人にしか分からない。

「まぁ、これからの結果次第で恩もくそもなくなるかもしれないがな」

「先に居なくなってもらっては困るのよ」

「ん? どういう意味だ?」

 その問いかけに二人は何も答えず、これから始まるであろう闘いに備え始めた。

 結局、浩介の元には二人の子供だけが取り残されていた。

「御守り担当か」

 その言葉に二人は即反応する。

「あの……一応、僕は浩介さんより年上なのですよ?」

「……お前……嫌い」

「おっ、心の声が漏れてしまった。まぁ気にするな」

 二人の頭をワシャワシャすると、視線を桃華達に移す。

「宇賀ちゃんはどう見る?」

「……その名で……呼ぶな。……本来の力……発揮出来るなら……阿修羅王の娘と瑠璃の圧勝」

「ほぉ」

「……でも、二人共経験が足りない。……阿修羅王の娘……三面六臂(さんめんろっぴ)じゃない。……瑠璃は全てが硬すぎる。……二対二ではダメ」

「タイマンに持ち込まないとキツイって事か」

「……タイマン?」

「一対一の事さ。風神雷神ってニコイチってイメージだもんな。コンビネーションよさげだし」

「……お前の言葉……分からない」

「ふむ。それは済まない。横文字だと分からねぇよな」

 今まであまり考えた事はなかったが、改めて住んでいる世界の違いを実感する。

「そろそろ始まります!」

「あ、あぁ」

 武器を手に誰かが闘う。つい先日までは思いもよらなかった展開。

 浩介は息を呑んで事の顛末を見届ける。


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