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戦天女の黙示録  作者: 平平
プロローグ
2/37

其の一

 遥か昔、天上界の須弥山(しゅみせん)と呼ばれている場所で大きな戦があった。

 その中心にいたのが、忉利天(とうりてん)の王、天龍八部衆(てんりゅうはちぶしゅう)が一人、名を帝釈天(たいしゃくてん)

 対するは、天龍八部衆(てんりゅうはちぶしゅう)が一人、名を阿修羅王(あしゅらおう)


 二人の戦いは、熾烈を極めた戦いになり、須弥山(しゅみせん)全土を戦乱の渦に巻き込んだ。

 結果は帝釈天(たいしゃくてん)の勝利で終わり、阿修羅王(あしゅらおう)修羅界(しゅらかい)へ落とされる事になったのだが、その戦が原因で、須弥山(しゅみせん)の上空に位置する空居天(くうごてん)への道が閉ざされてしまった。


 悠久の時を経て、修羅界(しゅらかい)に一通の文が届いた。そこには。


――喜見城(きけんじょう)にて待つ。


 という一文だけ書かれてあった。

「ふむ、どうしたものか……」

険しい顔で阿修羅王(あしゅらおう)はその一文を見つめていると、娘の桃華(とうか)が背後から覗き込んでくる。

「今更会いたいなど、何か企んでいるのかもしれません! 無視するのがいいのでは?」

 阿修羅王(あしゅらおう)はしばし考えた後、

「そういう訳にもくまいて。――桃華(とうか)よ、直ぐに旅支度をせい! お前に護衛の任を授けるとしよう。舎脂(しゃちー)に会えるかもしれんぞ?」

 舎脂(しゃちー)という名を耳にした瞬間、桃華(とうか)の眼光が鋭くなる。

「一族の裏切り者に興味はありません。私は旅支度があるので失礼します」

 早くその場を離れたいのか、桃華(とうか)はそそくさと立ち去っていった。

「……裏切り者か」

 深く溜め息をつきながら、重い腰を上げた。


自室に向かう桃華(とうか)は、ブツブツと文句を言いながら、歩いては通路の壁を殴り、また少し歩いては殴りを繰り返していた。

「どうして私が姉様に会わなきゃいけないの? 大体、父様は危機感がなさすぎなのよ!」

 自室に戻った桃華(とうか)は、鎧を身に纏うと、父から譲り受けた一本の刀を手に取った。

 その刀の名は〈修羅刀(しゅらとう)

 阿修羅(あしゅら)一族の象徴と言うべき宝刀。

「いい機会だわ。私がこれで帝釈天(たいしゃくてん)の首を、――斬ればいい」

 旅支度を終えた桃華(とうか)は、阿修羅王(あしゅらおう)と共に天馬に跨ると、大空へと駆け上がる。


 桃華(とうか)は思う。帝釈天(たいしゃくてん)をこの手で討つ絶好の機会が訪れたと。

「私はそのために鍛錬を重ねてきたのよ……一族のためにも須弥山(しゅみせん)を、――手に入れる!」

 その声を聞かないふりをして、阿修羅王(あしゅらおう)は天馬に鞭を入れた。


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