第30話【脱走ブレイク】
広い刑務グラウンドで弟が言った。
「兄貴、久しぶりだな」
兄貴が言った。
「な、何しに来たんだ!?」
「兄貴をここから脱獄させる為にやって来た」
「本気か?」
「本気だ。俺はこの刑務所の設計に携わって来た。携わって来たと言ったところで、派遣の工事のバイトだが、携わったのは携わったので、他の奴よりかはこの刑務所内に詳しいと思う。それに、この刑務所内の図面もちゃんと体に書き込んで来てある。ここが入り口でここが出口。それから、これはお母さんの誕生日。そこは、やっぱし、忘れたくないからねー。油性じゃないから、消える前に何かに書き写さなきゃいけないんだけど、何か書くものとかある?」
「いやいや!ちょっと待て!そもそも俺は脱走をする必要があるのか?明後日、出所するんだぞ?」
「兄貴!そんなんで良いのかよ!」
「何がだよ!?」
「これまで兄貴はここのやり方に散々付き合ってやってきた!最後までそんなんでいいのかよ!?最後に自分は違うぞってとこ見せたくねーのかよ!」
「見せたくねーよ!いいだろ!そこは!べつに!」
「兄貴!随分と変わっちまったな!」
「オマエはなんにも変わってねーな!」