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いちゃらぶ王城記

作者: Wana-wana
掲載日:2026/05/12

「貴様のほうがよく知ってると思うが──私はチョロい」


 俺の恋人がなんか言い出した。

 ここは王城であり、つまり俺たちの職場なわけで、今俺たちは職務時間なため、要はそんなことを話している場合ではないはず。

 ただ、俺は職務に全く忠実ではなく、恋人との雑談を優先したいタイプだった。

 

「チョロ、い…………?」


 あなたを口説き始めて、4年の月日を必要とした俺からすれば、チョロさは欠片も感じられないんですけど。


「逆に考えろ。貴様との出逢いは、4年ほどの月日が必要になるほど最悪極まりないものだった、と」

「入学式で席が隣だっただけだよ」

「え?」

「え」

「同窓生……?」

「どんだけ学生時代の俺のことが、眼中になかったの!?」


 確かに、会話量とかは、卒業してからの方が圧倒的に多いけども。

 

「私が高嶺の花だったばかりに」

「高嶺の花側は、高さを自認しないで欲しいなあ」

「あと、身分差」

「それはそう」

「平民出身だからな、私は。貴族様の貴様とは、低みが違う」

「高いのか低いのかもうわかんねえな」


 どうして彼女が高嶺の花をやれていたか。

 端的にいえば、才能だった。女神様たちから加護を受けまくっていたがゆえ、凄まじかった。

 本来、女神様の加護なんてものは、ひとつでも一生暮らしに困ることはない。積極的に、国が囲いに来るからだ。

 それを、まさかの複数。

 結果、各家子弟から求婚を受けまくっていた。それはもう、相当に受けていた。そりゃそうだ。加護もちなんて珍しい存在は、みんな家に欲しい。そのうえで、女神たちの一人が、求愛の加護を授けていたものだから、もうわけがわからなかった。

 女神の一人が、規律の加護を授けていなかったら、学園は崩壊していただろう。


「というか、よく、断れたよね、あの求婚の群れから」

「結婚の女神様が、あの連中の大半に唾を吐いていてな」

「ええ……」

「いわく、『うちの旦那に似てる。だめ、絶対。ろくなやつじゃない、本当に!!!』と」


 俺は彼女に向けて剣を刺す。彼女は、首を傾ける。

 悲鳴が聞こえた。


「旦那の主神ぇ……」

「で、貴様に至った訳だ」


 しゅぱぱんと軽い音を立てて、俺に向かって魔法の火矢が、彼女から放たれた。半歩身体をずらした。ぼたぼたと天井から人が複数落ちてきた。火矢に焼かれたらしい。


「どう考えても、あなたは、チョロくなかったよ」


 よく俺は彼女を口説けたな。


「うん?話がズレてるな」


 彼女が床を踏んで軽く飛び上がる。俺は上体を折り曲げる。

 彼女は俺の背中の上を半回転しながら、天井に再度魔法を放った。どぱたんと人が落っこちてきた。


「チョロいのは、今の私だ」

「そうかな」

「そうだぞ」


 地面に降り立った彼女は、俺のすぐ隣に立った。顔が近い。

 そこで、気づいた。


「ネックレスしてくれてるじゃん」

「嬉しかったし、気づいてほしいから、な」


 はにかむ俺の恋人。俺は照れた。

 ついでに、思いっきり右脚で蹴り上げた。ぎゃっと、短い悲鳴。


「どう思う?」

「似合ってるし、さすが俺って思った」

「素直に、私を褒めろ」


 彼女は呆れたように笑う。気づいたらめちゃくちゃデカい魔法陣が構築されていた。その魔法陣が、城全体を覆った。






「なんでもいいんだが。余がいることを、忘れないでほしい」

「なんだ、護衛対象」

「ちゃんと守りましたよ?」

「お前らな。余が学園の同窓生だからって、気軽にいちゃいちゃしながら、刺客どもを掃除するのはやめてくれよ、本当に」

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