第五話 1人目、深き絆を巡らせるために
泊まる民主からほど近い所、冒険者ギルドメーレン村支部。受付窓口に着いていた。
「すみません、ちょっと調査を依頼したいことがあるんですけど」
「はい、今日はどのような調査でこられたのでしょうか?」
僕の担当になった受付嬢さんは民宿の受付係とは違く、冷静に対応し僕の話を聞いてくれそうな人だった。
「今回調査してもらいたいのはこちらで保護した迷子の子についてで...」
「はい、分かりました。それでは詳しく聞きたいので、まず場所と日付をお聞かせください」
30分後...。
「はい、ご協力ありがとうございました。まさか、一時指定危険区域のメーレの森から発見なさるなんて。そうとう運がよろしいかと思われます」
思ったより受付襄の要約が上手く聴取が黙々と進み、おかげで早く民宿に戻れそうな雰囲気になった。
「調査の前に最後の確認事項がございます。その迷子の子はどのような種族でしょうか?」
「一応、エルフ族です」
「………………………」
僕がこの単語を発した瞬間、さっきまでの穏やかな表情の受付嬢が一気に強張った表情へと変化した。
「もう一度、お聞きしますね。本当にエルフ族なのでしょうか?ハーフエルフではなく」
「はい、本当です」
すると、受付嬢は呆れた声でこう言ってきた。
「はい。では、お出口はあちらになりますので、ここからお早く退出してください」
「え?、どうしてですか?」
「いいですか対応者様、ここではこのような冷やかしはいけません、れっきとした役場です。それにこの他方ではこの冷やかしは通用しません、また本当の緊急時のみお越しください。」
「でも、その理由が」
「まだ、たくさんの対応者様達がおりますのでお早く退出ください」
後ろを見ると先ほどよりも、受付を待つたくさんの人集りができていた...。
ここで担当の受付嬢と長く揉めるだけで、多くの人様に迷惑をかけてしまう。
……理由も深く聞かされないまま退出は納得できないが、ここの調査依頼は諦めて。残るのは、自衛自治体《国の警察》に任せるしか...。
「はい、、相談していただきありがとうございました……」
「ありがとうございました。またの相談に」
失望した僕はギルドの出口に大股で向かって歩き、ドアに手をかける。
「ま、まってください!」
「え?」
突然、背後から女性の声が聞こえた瞬間。 僕の腕が強く掴まれ、受付窓口近くにある小さい会議室へと強い力で誰かに引っ張れた。
「はぁ、はぁ、はぁ。緊張した」
僕を引っ張てきた人は、先ほどの事情聴取
中に後ろで分厚いファイルを番号ごとに整頓していた受付嬢だった。
「あ、あの?僕に何か用でも...」
「は?!、ごめんなさい、ごめんなさい。何も言わずに急に腕を引っ張って!。でも、聞いてください!。先ほど、エルフ族のお話をミネ先輩にしておりましたね!」
「は、はい」
「それでなんですけど!できればそのエルフ、私に見せてほしくて!」
その受付嬢の唐突なお願いに驚いた。
だって、この村の様子を見る限り誰も興味を持たなそうじゃないか。
理解が追いついていない僕を尻目に、彼女は次々と独りよがりで話続ける。
「ミネ先輩と転勤したばかりで、まさかエルフ族に出会えるかもしれないとは。今日はなんて良い日でしょう。はっ、そうすれば早く上がらせてもらわなきゃ」
「ちょ、ちょっと待ってください。テンポが速すぎて全く理解が追いつきませんでした!」
興奮して走る彼女を呼び止める。
「え?、はっ、そうでした紹介まだでしたね。私の名前はリーベ=エアレープニス総務管理課の第二受付嬢です。んで、可愛い君の名前は・・・リヒトちゃんだよね!」
元気な彼女は地方冒険者ギルドの中でもかなり高い階級の人だった。
「……すごいですね。でも、なんで僕なんかに話を」
すると彼女は僕の肩に両手を乗せ、目を輝かせながら言う。
「だってエルフだよ!。何百年と現れていない珍しい種族だよ!。それに、君の話を聞いて訳がありそうと思ったからだよ!」
「え?訳?」
「そう、君の事情だよ」
5分後...。
リーベさんの長い話をまとめるとこうなる。
・エルフ族に会いたいから。
・エルフの種類を確認したいから。
・僕の助けになりたいから。
まとめて言うと、僕らを助けてくれるみたい。
「本当にいいのですか?!、仕事だってまだあると思いますし」
「いいのいいの。どっちにしろ私がいようがいないかなんでギルド長には関係ないから。それじゃ、今私服に着替えてくるからここで待ってて」
「あの!」
「え、なに!?」
「ありがとうございます」
「・・・誰だって助け合いで生きているんだから。その言葉はまだいらないよ」
* * *
エルフ族。
魔王、魔物よりも遥か古代に存在していた種族。魔襄の源といってもいいほど魔力は膨大で、才能に優れている。
そして特徴的な耳、髪、目を身体に宿しており、特に目と髪の色。レッドアイ、純白の髪を宿すエルフは同じく古代から存在しているドラゴン族長と互角に張り合えるらしき。
だが、いつしきかエルフ族の消息は急に途切れどこかに族を作って生活しているのか、それとも滅びたのか...。世界の危機、突如出現するした魔王による覇王戦争にも現れなかった。
「て、考古資料読んだの!」
「へぇー、、、」
知らなかった。エルフ族に関する歴史がこれほどまでに、深かったとは。
「でもこれ、この地域と深い関係があるの」
彼女は続けて喋る。
「この地域は、エルフとの深い関係があり。
なぜならここは、エルフ族の奴隷地域。そして、ここの住民は元々はエルフ族に飼われていた人間。
だから、純エルフ(純血なエルフ)やエルフの血が入った人間に敏感で差別的な意識、行動があるの。
特に純エルフとなると、その恨みは凄いごとになる」
「……………………」
まさか、ここに理由があったなんて。
……受付係のおじさん、服屋の店員の行動が全て、過去の出来事のせいで相当な念を抱いていたとは...。
「あ、この部屋じゃない「187」は!」
リーベさんと話し歩きをしていたらもう、彼女がいる部屋へと辿り着いた。
「はい、ここです」
僕はドアノブに手をかけ、そっとドアを引っ張る。
「ただいま、、、」
「………………………」
ベットの方には、シャワー浴び終わり新しい服に着替えていた彼女が座ってじっと壁を見つめていた。
「あー、凄い!アルビノ種だ!!!」
後ろからその様子を見ていたリーベさんが驚くように大きな声を上げた。
そして、僕をよしのけて彼女へと近づき手を握りながら挨拶をする。
「こんにちは!ギルドから来たリーベ=エアレープニスお姉さんだよ!リーベって軽く呼んで!!」
「……………………」
「あなたの名前はなんと言うの、ぜひ教えて!!!」
「……………………」
「・・・助けてリヒトくん!どうすればこの子お話してくれるの?!」
「ごめんなさい。この子何かの事情があってまだ口が開かないんです。それに、感情表現も無くてなかなか意思疎通が取れなくて...」
彼女の状態を軽く伝えたら、リーベさんは慣れた手つきで顔、足、腕の順番を確認していった。
「…………なるほどね。ね?リヒトくん、この鉄の腕輪は元々からついていた?」
「はい、そうです」
リーベさんは少し息を吐き、先程の友達感覚の距離ではなく真剣な眼差しで僕に説明をしてきた。
「この子は、"奴隷の子"です。」
「え?、、奴隷の子、、」
奴隷...、魔歴書で書かれていた言葉。
この世界だけとは限らず、前世の世界でも存在していた忌まわしき憎しみの言葉。
そんな言葉がこの9歳くらいの子供に掛けられているなんて。僕は信じたくなかったが、それは裏付けもできない確証的な説明だった。
「……鉄の腕輪に貴族らしき紋章がありました。文字はどこかの他国の言語で分かりませんでした。
この子の身体を見る限り、とくに回復ポーションで治せないほどの暴力は受けられていなさそうですが。何かの精神的暴行がすごく、今は感情が無くなっていて記憶が薄い状態だと思います」
……この子はきっと辛かっただろうな、私利私欲的な大人が勝手に自分の人生を決められ。
ドール人形のように使われて、、、大人に遊ばれる行動。僕も痛いほど経験したことがあるから分かる。
……だからこそ、僕のような子供達を減らすために大学へと進学し、、、助けるための知恵をつけたんだ。僕はリーベさんに紋章の特徴を聞く。
「リーベさん。僕に教えてください貴族名を」
「・・・王家直属、オールチャラライナ家」
その言葉を聞いた瞬間、あいつらが森にいた理由がはっきりとわかった。
あいつらは、逃げた彼女を捕まえるために来ていたんだと。
僕は歯を強く食いしばり、湧き出る怒りの感情を抑えた。
「……オススメはしないけど、一応言うわ。この子を孤児として登録、保護し、孤児院に入れることは可能よ。
これは覇王戦争が終わった時、世界加盟連合は世界の法律、第4条として正式に奴隷制度を禁止して、全国奴隷解放宣言を出したことがきっかけ」
「そうですか、、、、、」
少しほっとした、この世界にもこのような法律があったことに。
「……ただ、先ほどもいったとうりこの地域はエルフ族にとてつもない偏見を持っている。
この子を施設に入れたらいじめや暴力につながる可能性だってあるし。もしかしたらそれが度を過ぎれば、自害する可能性だってある。
つまり、この子がエルフなのがまずいと言うこと、しかもアルビノ種なんて金目的でこの子を里親として引き取りやられる確率の方が高い。そうなったら助ける手段が一つも無い」
「……………」
「あ、・・・もし、孤児として登録したい時は。自衛自治体に行って、そしたらこの子を引き取ってもらえると思うから、。
私だったら絶対に守るけど、、そこはリヒトくんとこの子でよく話し合って決めてね。
それじゃ、もう暗くなりそうだから帰らせてもらうね。バイバイ」
………ゆっくりドアが閉まった。
けど、開いた口がまだ塞がらない...。
どうすれば彼女を幸せに戻せるのであろうか。
説明的に、大学で習った知識が一部使えそうだが。それ以外は全く役に立ちそうにない。
しかもこの子は一体何を望んでいるのかも分からない、心情を予想するのさえギリギリだ...。
そんな僕がこの子を仲間に誘って、本当の感情に戻せるか、自分に自信が無い。
かと言って、孤児院に入れると間違いなくこの子には笑顔と言う幸せが一生訪れない。
一体どの決断をすれば良いのかが、僕には一生決められる気ががしなかった。
「……………………」
でも、今のこの子の様子を見ているとなぜか不思議なくらいに助けたくなる...。
・・・そっか。よく考えると昔の僕とそっくりだからか。
何かのせいで感情表現ができなくなって、全てがどうでもよく感じる状態。この子は過去の僕とまんま同じ。
………だけどその闇から、僕はある人のおかげでこうやって前に向けている...。楽しいと思えている...。
ならばここでこの子の最悪の結果を考えている場合か、いや違うあの時点で無意識に覚悟を決めていたはずだ。
今度はあの人の代わりに僕が"光の鍵"となってこの子の人生を明るく照らし元に戻したいと!。
オレンジ色の夕日が窓から刺してくるなか、僕は彼女目の前に座りこう言う。
「もしよければ、僕と一緒にこの世界を巡る旅をしてくれませんか?」
その言葉を聞いた彼女は軽く頷いてくれた。
* * *
王都:第一オールチャラライナ邸、王座の間。
「ああ!!なんで君達はそのような簡単なことができないのかな?!」
「「「申し上げございません、ライト公爵様!」」」
「はぁ、はぁ。まぁ今回は許してあげましょう、君達は優秀な私の兵士ですからね。
だけどこれだけは覚えといてください、あの特別なアルビノ種が手に入れたら我が公爵家は永久に魔襄技術の上位へと君臨できるのです。あとはいい、下がりなさい君達」
「「「はい、失礼致します」」」
「はぁ、緊張した。ライト公爵今回ピリピリしてましたよね」
「でも、言い方は他の貴族と比べたら優しいよな」
「ですよね、イヅナ隊長?」
「ん?あぁ、そうだな」
「どうしましたイヅナ隊長?」
「いや少し考えことを、お前たち今日は先に引き上げていいぞ。休憩所の鍵閉めは俺がしとくから」
「お!まじすかイヅナ隊長!!では、お先失礼します!!!」
「失礼します、イヅナ隊長」
………あの小娘は一体何者だ、背後から一切気配を感じずグレートウルフではなく伝説の生き物フェンリルに疾風を放ってきた。
しかもその貧弱そうな体で、牙を抑えて優勢にとっていた。
それと森の中で見た深い傷、もしかしてアイツの仕業か?
俺は深くあの出来事を考えながら、休憩所の扉に鍵をかけるため取手にかけようとした。
ギイーー。
(「開いた?、もしかして窓が空いているからか?」)
そう考えた俺は中に入り、空いていた窓を閉めた。
ギィーーーィィィ。
風が一切入ってこない状態で、後ろからまた扉が開く音がした。
(「………これは、違うさっきのは風では無い。罠だったか!」)
腰にかけている大剣を取り出し、行き良いよく振り向く。
「・・・お前は、」
「うわぁ、バレちゃったw」
後ろには見覚えがある姿、服装、立ち方。
全国要注意人物、三騎士のオルカだった。
「オルカ殿一体どの要件で?」
「いやぁーw少しね、君に用があるんだよ。森の中で深い傷見つけただろ、あれはボクがやったんだ」
やはりあの傷跡はオルカによるものだったか。
俺はオルカに警戒しながら問いをかける。
「…………んー。ある理由を作るためにかな」
「理由だと」
「そう理由、ボクが伝説の生き物フェンリルに傷をつけたことを仲間に分からせないため。そして、仲間に少し癒着ある君を今ここで始末するため」
「さようならだ」
(「くる!!!」)
「ふん!!!」
バァーーーン!!!……………………。
「よし、終わりっと。帰りに天神屋の氷みんなに買って帰るか」
1週間も遅れたぁー!!!
ごめんなさい!!!!!!