第一話 フリーデンフォルト村のお悩み
心が現れるような景色を堪能した後。僕は今、ゾネの日差しがポカポカ暖かく照らす中。
幻想の森付近にある村。出店での数で有名なフリーデンフォルトにやってきていた。
「えらっしゃい、えらっしゃい。今ならこの、スネークウッドのバック。1000モイだよ!」
「この剣は!魔鉱石も断つことができるー!!。ウォー、りゃー!!」
街並みの感じは、大学のドイツ留学イベントで訪れた。ミルテンベルクに似ていて。
市場もすごく賑やかで。村の人達も全員、楽しそうに笑い過ごしていた。
そんな素敵な村にあるものを買うため、今は市場を通り過ぎ。
メモ用紙を見ながら、とある店に向かっていた...。
「ここであっているのかな?」
そこは、蔦に覆われた看板に、薄く"ファトリーテ"と書かれた。書房店だった...。
「すごく、、、古典的なお店みたい...」
僕は少し疑心暗鬼になりながらもメモに書かれていたとうり、そこに入ってみる。
店の中はロウソクが無いのか店の奥が薄暗く、隣にある本棚にはたくさんの古い魔導書がずらりと汚く並べられており。
店の角には、店主らしきお爺さんが座っており。ずっと魔導書と目を合わせていた。
たぶん、魔導書が大好きなお爺さんなんだろうなと思いながら。店の奥へ歩き出した。
「えーと、ここが。魔歴、薬草、魔王...おっ、本当にあった!。地図が!」
そう、ここに来た目的は。ここの地図を買いにくること。
まさか、あの人が大好きな魔歴書と魔導書しか入っていなかったなんて想像できてなかったからな...。
最初はどうやって近くの村に迎えばいいんだよ、って思っていたけど。
こればかりは、僕の確認不足であるから責められない。
本当に、行商人のリューガーさんと出会わなかったら。今頃どうなっていたのか...。
"エルデ"の全容と書かれた、小さな地図本を手に取りお爺さんのいる所へ向かおうとした。
「…ん?なんだこれ、」
地図本コーナーの隣に、「全1000種!魔族、動類、草類、純人類総集編」と書かれた、見たことが無い分類の分厚い資料本が山程置かれていた...。
そのタイトルを見た瞬間僕は、こう思った。
(「なんか、面白そう!」)、と。
ついでに、その本も買うことにした。
「合計で15モイね。まいど」
雑に扱われた銀貨をその場で受け取った後、店の外に出て。賑やかな市場へと向かった。
「そりゃ、そりゃ!グレートウルフのステーキだよ!!!」
「泡たっぷり。ストロフビーフとの相性が良い、ヴァッサーはいかがですか?」
ちょうど昼間になったからなのか、先ほどの時間帯より人が増え、さらに賑やかな雰囲気を作り出していた。
「地元にあった。小さなお祭りみたいだ」
グ〜、、、。
……、ここに来るまでかなりの距離を歩いたからな。
お腹の音が鳴っても、無理もない...。
僕は腹ごしらえをするため、どこか美味しそうなお店がないか。辺りを見渡した。
「……、おっ?アレは、もしかして!」
見覚えのある料理が売られている、屋台を発見したので、そこに行ってみた。
「脂身たっぷり。ヒューナーコイレの串焼きはいかがですか?」
やはり、そこに売られていたのは紛れもないもも肉の焼き鳥だった(しかもタレ付き)。
速攻で串焼きを2本注文した。
「すみません、串焼き2本下さい」
「まいどねぇ!」
「一般魔襄、フラム」
注文した串焼きは第一魔襄ですぐに焼き上がり、僕の手元に出来立てのまま渡された。
「3モイね。ありがとうね!」
「………、なが、、、、」
渡ってきたそれは、僕の身長が164cmとするなら、それの4分の1くらいあるかないかの長さだった。
そんな驚きもありつつ、楽しみでもあった串焼きを大きくかじり、味わった。
(「あつ!。でも、う〜〜〜ま!。タレが染みる〜」)
(「今までこんな、ジャンキーなもの森の中で余り食べる機会がなかったから最高すぎるー!」)
その上、一日中休憩なしに歩き回っていた政なのか。味は感動するほど美味しかった。
「あはは、こんな美味しそうにこの串焼きを食べるお客さんは久しぶりだねぇ!。そんな嬉しい顔。見れるのも今年で、最後かもね」
「ふお、んぇ?ん!、、、なんでですか?」
なぜか、それが気になり店主に問いかける。
* * *
「カクカクしかしかでこうなのよ」
どうやら、店主の話によるとこうらしい。
王都や隣町に続く主要道(近道)が、グレートウルフの集団に数ヶ月前から占拠されていているせいで、誰も通行できず全員困っているらしい。
しかも、その影響がなんと5ヶ月も続いているらしく。ここ含め、他の店も観光客不足と材料費値上がりのダブルパンチで経営不振だとか。
「そんな重大事件、自衛自治体や冒険者ギルドはなんで動かないんでしょうか?」
「そうよね、でもここ最近なんだ王都の方に全員集合されているらしいわよ。その影響、ここも人数不足だから下手に動けないんじゃないかしら...。
本当は、この時間帯。ここも人が埋め尽くすほど多いんだけど。今じゃこのとうり、、」
後ろを見てみると、さっきまでどこもお客さんが山のようにいたはずなのに。今となってはほぼいない状態に等しかった。
「さっきまでのは王都からきた建築視察団の昼休憩。こうゆうのがあればそこそこ儲かるんだけど。毎日あるわけではないからね。最近だと、これが普通なの」
「おかげで利益は以前の半分以下、、食材や材料の仕入れも馬鹿にならない」
「これが現実。だから、私の店も再来月には閉じようかって考えてるの。50年連続出店だったのが途切れるのは、悲しいけど。運命には逆らえないのね...」
…………、僕はこの話を聞いて、どうしてもこの店、村を守りたいと思った。
だって、こんなお客さん思いの素敵なお店は、こんなことで無くしてはいけないし。
そして何より、この町の大切な文化だから...。
「僕がなんかしてみせます!」
店主はこの発言に一瞬、困惑の様子を見せていたが、すぐに先ほどの笑顔に戻り。大きな声で笑った。
「はははは!!、嬢ちゃんがそんなことしてくれたら。この村のみんなが、あるだけの酒樽を飲み尽くすほど喜ぶだろうね」
すると店主は焼きたての串焼きを一本取り、それを僕に渡してきた。
「はいこれ!、嬢ちゃんが私の愚痴を聞いてくれた"お礼"」
「………、ありがとうございます!」
貰ったその串焼きを大きくかじり、この味をよく噛み締めた。
* * *
あの串焼きを食べた後。
グレートウルフの群れがいる王道5番地。メーレの森付近に僕は向かっていた。
店主の言う通りなら、ここは馬車や歩いてくる観光客で埋め尽くされているらしいんだが。
その光景は全く見えず、歩く人の姿すらも一人も見当たらなかった。
そのせいか、土で舗装された幅広い道が森の奥までずっと続いていると思うと、逆にその光景がとても不気味に思えた。
そんな状況でトコトコと人けのない道を歩いていると、奥からだんだんと見覚えのある巨漢の姿が視界に映ってきた。
「あれは?リューガーさんだ!おーい!!!」
「おっ!わがともリヒトでわないか!」
なんと、こんな人けのない道にまさかの恩人にまた出会えるなんて。
運が良いのか、それとも悪くなる前兆なのか...。
どっちにしろ今ここで安心できる人に会えたことが、とても嬉しかった...。
「おう、わがともリヒト、6時間ぶりだね!!!」
リューガー=ヒントルさん、たくさんの商品をマジックリュックに入れ、世界を股にかけるすごい人だ。
しかも、僕が道に迷っていた時。近くにあるフリーデン町とあの書房店の場所も教えてくれた超親切な人でもある。
「また、あったねリューガー!さん.......」
・・・、僕はこの状況に突如疑問を持った。なんでリューガーさんがこの道を使って、フリーデン町に戻ろうとしたのか、そしてなぜ少し涙目になっているのか。
「リューガーさんにお聞きしたいのですが、もしかしてこの先で嫌なことでもありましたか?」
元気だったリューガーさんは急にしょんぼりした様子に変わり、近くにあった岩にゆっくり腰掛けると、その理由を淡々と僕に教えてくれた。
隣村に行きたかったリューガーさんは近道である、この王道を使って行こうとしていたらしい。
だけど、森の玄関近くでこの国の中で位の高い貴族であるオールチャラライナ家所属の騎士達に突然こう言われてしまった。
「「おい変態!お前怪しい格好だから。ここ通るな!」って怒鳴られてよ!、その発言があまりにも辛すぎてここに戻ってきたというわけでよ、くーー!」
…………確かにリューガーさんの格好は独特で、誰かに怪しまれても仕方がないと思ってしまう。
たが、いくらなんでも貴族直属の騎士とはいえ。そんな横暴は許せざるおえないなと、リューガーさんに一部強く共感した。
「リヒトはなんでこの道を通るんだ?。ギルドの話によると、この先グレートウルフが出るらしいわよ」
「・・・まぁ、ちょっとした要件で、、、」
リューガーさんは僕の顔を軽く見た後、なぜか急に立ち上がり、元気づけるように話してくれた。
「…………、ふ!。リヒトなら大丈夫!!!このわたしですら勝てるんだから、その剣でウルフをふっちゃらかしちゃえ!」
「・・・、はい!やってきます!!!」
やっぱりこの人はとても心優しい人だなと、この発言で再認識させられた...。
その後、僕らはその場で互いに強くハイタッチをし、それぞれ向かう方向へとおさらばした。