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前編 叶えたい夢は諦めないこと

 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、」 


 「ここなら、きっと、大丈夫」


 「………、ごめんなさい。成長するあなたのそばにずっといられなくて、、、」


 「「「 こっちに行った形跡があるぞ! 」」」

 

 「!!!。私から離れていても、元気にするのよ」


 《テンポ アトランティス イエ、》


  ビシッ!!


 「キャッ!!」

 

 「ぜーはぁ、ぜーはぁ。やっと捕まえたぜ!!!」

 

 「うむ、後はこの子を今ここで始末するだけな」

 

 「すまぬ幼き子よ、これはエルデの未来のため。許してくれ」


 「お願いやめてぇぇ!!!!」


 《シュッツ グランツ!!!》 

 

 

 

 『 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 』

 

 

 

 「——————!!!。はぁ、はぁ、」

 息を大きく荒げながら、ベットから勢いよく起き上がる...。

 レースカーテンから差し込む光。

 それと、外から聞こえてくる小鳥のさえずりのおかげで、取り乱した心はどこかに消え去ってくれた。

 「・・・あさ...、さっき見ていたのは...、」

 どうやら僕は悪い夢(悪夢)をみて、起こされたらしい。



 * * *



 あの悪夢のせいで普段より早く目覚め、洗面所の鏡を見ながら歯磨きをしている、少年。

 名はリヒト=シュリッセル。日本に住んでいた、転生者である。

 転生する前は、とても情け深い学生で。

 家庭の事情により、地元から遠く離れた大学に進学、上京し。そこで死に物狂いになりながら高度な学問を学び。

 その結果、首席で卒業を迎えようとしていたのだが。

 卒業式を控える1週間前、それは古びたゼンマイ式時計の針が突然ピタリと止まるようにやってきた。

 建設中のタワーから、突如大量に落ちてきた工事部材によって彼は下敷きになり圧死(即死)した、のだが…。

 この現象は世界の仕組みなのか、それとも"神の気まぐれ"だというのか...。

 その後、彼の意識が暗闇から戻ると。

 なぜか架空の世界(異 世 界)に転生しており。

 しかも、まだ喃語でしか発せない乳児(生後7ヶ月くらい)の状態であった。

 

 そんな信じがたい状況の(せい)なのか、彼はただひたすら何も考えず。

 ただ誰かに自分の存在を気づかせるため。

 ざんざんと雨が降る中、何度も何度もそのか弱い声を発した。

 その行動が功を奏したのか、今後彼の師となる者が、偶然彼がいる森道を通ったおかげで。

 泣き声に意識がゆき、運良く見つけてもらうことができた。

 そして今、その師の下で様々な修行やこの世界に関する知識・魔襄(ましょう)の勉強漬けの日々を、ここ幻想の森(リューグ・スコゲン)で共に暮らしながら過ごしている。


 寝ぼけた目が完全に覚めるほど、冷たい水で数回洗面した後。キッチンに移動し、朝食担当である僕がいつも通り二人分の朝食準備を始める。

 トン..トン..トンと右手で鋭い包丁を持ちながら。

 キャベツによく似た食材。

 "ラウンドグラス草"を猫の手で押さえながら、半分だけ細く切り。

 切り終わったら溶き卵と細切りベーコンを一緒にバターで塗ったミニフライパンに入れ、オーブンで焼く。

 メインディッシュを焼いている間に、パンとスープを作る。

 

 昨夜のうちに用意しておいた乾燥パン生地に、塩水で濡らした布をポンポンと優しく叩くように、軽く水分を染み込ませ。

 高温な石窯いしがまに入れる。

 やや手抜きだが、これでパンは完成する。

 そしたら、次にスープの調理工程に移ろう。

 

 まず初めに包丁で薄く切れ目を入れた"トビ・トマト(略してトビト)"を、沸騰しはじめたスープ鍋に入れて。

 数秒経過したらトビトだけを取り出し、冷水に浸す(取り出したら、鍋の火力は弱火にする)。

 そしたら、冷水によってシナシナになった薄皮を手で剥ぎボウルの中へ入れ。 コンソメの素とオリーブオイルを投入し、トビトが完全にペースト状になるまで一緒に、棒でかき混ぜる...。

 完全にドロドロになったら、スープ鍋と一緒にラウンドグラス草の余りを中に入れる。

 後はダイニングに設置してある時計が、7時に鐘が鳴るので。

 それまで鍋の火力を弱火で維持し、ラウンド草から出る出汁(野菜のダシ)をたくさん出させるために放置するだけ。

 もし今みたいに余った時間ができれば。

 さっき使用した調理道具の後片付けでもしてればちょうどいい感じに焼きあがって、え?・・・。

 僕の目の前には考えられない事象が起きていた、それは。

 

 さっき調理に使用した道具全てが、鏡のようにキレイになっている...。

 これは良いことではあるだよ、だけど。今この時にこの良いことはいらない、だってこの時間の暇つぶしがなくなってしまうから。

 僕は頭に思考を巡らせ、次の仕事が思い浮かんだ。

 ・・・じゃぁ、皿でも用意するか!。

 こうゆう時こそ、教えてもらったとうり冷静沈着に物事を対処しなければならない。

 ・・・、うそ。もうすでに置いてある...。

 じゃぁ、部屋の掃除!。・・・ホコリすらない...。

 じゃ、食後のデザート作り!。

 木刀の手入れ!!。薪の補充!!!…。

 

 「ハア、ハア、ハア...」

 なんでだ...。やろうと思ったことが全て先に終わらせてある...。

 僕がこの状況に不思議がっていると、背後から馴染みのある鳴き声が聞こえた。

 

 『ふっさ、ふさふさ』

 その声の正体はヨル師匠のペット(・ ・)である。

 プチ悪魔ミニメフィストの、マフマフであった。

 「あっ、おはようマフマフ。師匠より先に起きてたんだね、早起きで偉いね」

 早起きしてきたことを、撫でながらたくさん褒めた。

 すると、マフマフは僕に何か伝えようとジェスチャーしながら、マフマフ特有な言語で語りかけてきた。

 『ふさふさ?、ふっさ!』

 「???。んー・・・、あっ...」

 マフマフが薪を切るポーズや皿を用意する仕草で。

 記憶の一部が、複雑なパズルのピースが急にピッタリと。はまるようにして鮮明に蘇った。

 「そうだった、「明日は例の日で、1日中忙しくなるよな」って、思って。昨日のうちに重い作業を終わらせていたんだっけ...」

 ...、いやでも昨日のうち面倒作業を終わらせたとしても、今できる皿出しや掃除をついでに終わらせるなんて、そんな非効率なこといつしていたっけ?

 『ふっさ!』

 (「・・・そいえば、マフマフも一緒に昨日の作業を手伝ってくれていたな、、、しかも早起き、」)

 ふとそう思った瞬間、頭に一筋の閃光が走る。

 そうか、だからマフマフは知っていて。それを僕に伝えようとジェスチャーしながら発していたのか。

 つまり、この失念していた原因はただの"ど忘れ"...。

 

 「………………」

 『ふさふさ?』

 「はっ...!。教えてくれてありがとう、マフマフ。君が掃除を終わらせていてくれたんだったよね」

 『ふっさー!』

 

 ゴーン、ゴーン。

 

 マフマフに感謝を伝えた直後、鈍い鐘の音が背後から響き渡る。

 その心臓に響く音に、僕とマフマフは釣られ共にその方向へと身体が反射的に振り向く。

 そしたら、ダイニングの壁に設置してある時計の針が午前7時を知らせる真ん中を刺していたんだ。

 「…あっ、もうこんな時間に。早く取り出さないと焦げちゃう」

 急いで隣のテーブルに置いていたオーブンミットを手に付け、灼熱なオーブン扉を開る。

 「うん、いい香り」

 オーブンから中身を取り出し、それを真っ白な皿にのせ、周りに野菜を盛り付け。

 石窯から焼きたてのパンを摘み、鋸歯状きょしじょう型なナイフで二等分に切り、空の器へスープを注いだら。

 バター香るベーコンオムレツとトビトのミネストローネスープの完成。

 (「残るは、あの人を外の光で起こすだけ」)

 朝食をテーブルにセットし。僕はダイニングの向いにある部屋へと続くドアを途中つっかえながら開け、薄暗い中へと入った。


 床に落ちている書物のような物を踏まないように足でかき分け、ただ一本の光筋を出している所に向かって歩き。

 それをバァー、と。全開にして、朝から喉が疲れるほど大きな声でこう言う。

 「ヨル師匠、起きてください!!!朝ですよ!!!」

 「ふぁぅ!?」

 

 

 * * *

 

 

 モグ、...モグ、...。

 

 寝ぼけながらオムレツを口に運んでいる貴女、名前はヨル=シュリッセル。僕の育ての親兼、師匠にあたる存在の人だ(母と思えないので、尊敬をかねてヨル師匠と呼んでる)。

 「……、ヨル師匠。また夜遅くまで起きてましたね」

 「んえ?...いやー、昨晩は5時間ほど睡眠したつもりだけど」

 「いつもより1時間早く寝てもあまり変わりませんよ」

 「ははは、次からもう少し早く寝るようにするよ」

 ・・・見ての通り、物凄く気ままな性格の持ち主です...。

 でも、こう見えて。気分屋である僕の師匠は…。

 「ふぅー...、美味かった」

 「食べ終わるのハヤ!!!」

 「ふふん、今日は7中期で1番楽しみにしていた日だからな。じゃ、練習用の木刀持ってくんの忘れるなよ」

 「……先に歯磨きを終わらせてから外に出ましょうか、ヨル師匠……」

 


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 


 ヨル師匠がなぜ、あんなにも子供みたいに興奮していたかと言うと。

 7中期間(前の世界で2週間ぐらい)に1回だけおこなう、外の世界で実戦を想定した模擬戦を僕とやり。 

 それが自分にとってごく少ない娯楽の一つだかららしいです。

 正確には、この短期間で成長した僕と闘うことが楽しいから、らしい...。

 

 「よし、ルールはいつも通り。私の首に掛けているこのペンダントを切り落とす又は手に持つことができれば、リヒトの勝ちだ」

 

 「もし、私に勝つことができたら。約束どうりこの幻想の森から出て、どっかで自由に過ごしていい。

 ・・・後はわかるだろ?。面倒い説明はここまでにしといて。さぁ、始めようか!」

 

 木刀をヨル師匠に構えた瞬間、周囲にある木々が風流の影響で、不気味な音を奏で揺れる。

 すると、揺れる木々から一本の葉っぱがそよそよと舞い降りおりて。

 それが、地面と接した時、両足に力を込め、一気にヨル師匠の懐へ詰め寄り。

 「疾風(しっぷう)!!!」

 と、言いながら。何百何千回と鋼のように重い木刀を振り、突き、振り、突きまくった...。

 

 何千振り目を超えた頃だろうか、ヨル師匠は相変わらず。疲れの様子を見せず当たる直前ギリギリにかわしたり、受け流しの繰り返しだった...。

 だが、僕は知っている。ヨル師匠はいつもここら辺で、何かしらの隙がなぜか必ず生まれてくることを。

 するとヨル師匠は倦怠感(けんたいかん)を感じたのか、剣の持ち手を左から右手に持ち変えようとした。

 (「きた!、今なら押しきれる!!」)

 僕はそのチャンスを逃さず決め手の一撃。「水竜(すいりゅう)」を、首元へ突き立てるが。

 「うーん、前回の初速より0.5秒ぐらい早くなったかな」

 全ての技が華麗に避けられ。最後は箸で豆を摘むように、簡単に受け止められてしまった。

 「体勢を早く治せる"疾風"、滝の流れのように速く突く"水滝"の安定コンボ。

 1019回中、1通りの最善作を考え編み出したことは褒めてやろう」

「だーが、身体がこの体勢になってしまうと。だいたい戦闘知識が豊富な相手だと。こうやって、簡単に反撃してくるっぞ!」

 そう言うと、失神するかと思うぐらい腹部に強い衝撃が伝り。

 約8,9m、後方くらいまで、蹴り飛ばされてしまった。

 「がはぁ、はぁ、はぁ」

 分かっていた。。。分かっていたんだ。

 ここので下半身に力を込め衝撃を緩和することぐらい、でも体が反応できなかった...。

 ……それもそうか。だって今、目の前に立っている人は、こう見えて最強なのだから…………もう...。

 「おや?リヒトくん、もう倒れちゃうのかな???。お前はその程度で倒れないと私は知っているぞ」

 ………、こんな弱音ごときで諦めるな。

 いつもみたいに、勝てるイメージが全く湧かなくとも。

 最後の最後まで最強という鉄壁に立ち向い、少しでも。壁を崩すんだ!!!。

 「いきます!!!」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◇ ◇

 

 

 「うん、前回の時よりスピードと力は格段と上がったな...」

 「だが、今回も大事な点を見逃している」

 「そこさえ見つけることができればな、攻撃魔襄が使えないおまえも優位に戦うことができるし、応用だって使える」

 「今日は日が暮れてきたから、これで模擬戦は終了。結果はもちろんダメだ」

 「まぁ、今回は本当によく頑張った。身体が疲労しているだろうから今日、明日はベットの上でゆっくり休め。今日明日の当番は私が全部やっとく」

 ・・・、赤と黒が染まるコントラストの空。

 また僕はヨル師匠に勝つことができなかった。

 


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 


 暗いあたりを上で"イデアル衛星"が煌々と照らすなか。

 模擬戦でヨル師匠に言われた発言をまた模索するため、その外へ手に木刀を持ち玄関からこっそりと出た。

 あたりは静まり返り、微風(そよかぜ)すら吹いておらず、不気味だったが。

 そんなことはおかまえなしに僕は、大木へほど近い所で、持ってきた木刀を全力で振る。

 「う、、、」

 振った直後。右腕が蜂に刺されたと思うぐらい、激しい痛みが広がり。

 その場で腕を強く押さえてこみながらしゃがんだ。

 (「痛い。つらい。この13年間ヨル師匠に掠り傷すらつけたことがない人間が本当にこの世界を周れるのか...」)


 僕は、どうしても叶えたい夢があった。

 それは、この見知らぬ世界で新たな仲間作りとその仲間と共に世界を巡りたいという欲望だ。

 きっかけは僕が5歳の時、ヨル師匠の書斎入ってしまったこと。そこで「エルデの伝承」と表紙に書かれた本を発見して、興味が湧きそれの内容を確認した。 そこで、たまに貯めていた知的探究心が一気に開花した。

 全てが見たことがない習慣、生物、国が記載されており。想像もできないほど最高だった。

 所々難しい言語でイメージができないところもあったが、それでも本が破けかけるほど面白かった。

 

 6歳ころかな、実際にヨル師匠にお願いして外の世界に出させてもらおうとしたのは。

 最初はなにも取り合ってくれなかったんだけど、僕の勢いが全く途切れないせいか、「私に勝つことができたら外に出させてやる」って言くれて。喜んだな。

 いつもこっそり庭で剣技の修行を自主的にしていたから勝つのは簡単だと思っていたが。

 初めてヨル師匠と闘い、結果は今日みたいにボロボロに負けて。ベットの上で一晩中泣きまくった。

 そこから、毎月の7中期間に当たる日に勝負を挑んでは返り討ちにされ、また挑んでは返り討ちにされる日々。

 いつのまにかそれがヨル師匠の娯楽になっていたなんて。・・・なんでまた、いつのまに過去の出来事を一人で語っているんだろう。

 やっぱり、もう限界がきてるのかな...。

 涙がほっぺに溢れてくる感覚がする。

 

 ううん、これぐらい。今日のあの蹴りに比べたら、痛くない!

 立ちあがろうと涙を服で軽く擦った後、その目を無理やりこじ開け。前を向こうとした。

 「・・・これは...」

 するとそこには、足跡が二つとも地面に残されており。

 それは僕に何かを伝えようとするメッセージにも見え、安直な考えにもとらえることができた。

 (「この足跡は...。両方とも深く残っている...。たぶん癖的に僕のモノかな。

 それじゃぁ、すぐ隣にある足跡は………」)

 右足が僕と同じくらい深く残されており、逆に左足の方が浅く残っている状態だった。

 ・・・・・そうか。僕が足りなかったのはこうゆうことだったのか。

 もしかしたら、いや。次こそ絶対にいける!!!

 ご覧いただきありがとうございます。

 後半も見てもらえたら嬉しいです。

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