(13日目)タケシと飲みに行く
仕事が終わり、タケシと合流し、駅へと歩いた。
タケシはテンションが高かった。
明日休みだからか、それとも久々に俺と話すからなのか。
おそらく両方だろう。
最近の仕事の愚痴、マッチングアプリで知り合った今週末初めて会えそうな女の話。
俺は聞き役だった。
この様子を見ていると、宝くじの事はバレていないか。
とにかく俺は安堵した。
大阪駅の焼き鳥屋に入り、ビールを注文した。
タケシ「最近なんか調子良さそうっすよね」
不意なタケシの発言に少し戸惑った。
俺「え?なにが?」
タ「なんか結構いろいろ頑張ってるじゃないすか、店内放送とか接客とか。」
他人からはそう見えるのか。
確かにスーパーのような低学歴が集まった職場で、張り切って仕事してるやつのが珍しい。事実、俺もこれまで指示された事しかしなかったし。
俺「まぁ、たかがスーパーだけど、せっかく入った会社だし、頑張りたいじゃん」
タ「偉いっすね、俺も見習いたいっすよ」
俺「じゃあ何でもやってみればいいじゃん」
タ「いや、俺はいいっす(笑)」
”高卒と大卒の違い”とはよく言われるが、俺は「心の余裕だけ」だと思う。
高校生は、まだ自分が子供という認識があり、逆に言えば周りは大人に見える。
それが大学4年間をたとえ遊んで過ごすだけでも、どこか心の余裕ができて、単純に歳も取る事で変わる。例えば大人に冗談が言えたりする。
案の定、高卒のタケシは部門の上司からも子ども扱いされているのは俺の目からもわかった。
俺「まぁ仕事増やしてもろくな事ないし今のままでいいと思うで」
俺は宝くじの件もあって、タケシの機嫌を取るような発言が多くなりそうなのをぐっとこらえ、逆に少し偉そうに振舞った。
長いようで短いような2時間が無事に過ぎ、俺は安心した。
お会計へと向かう。無意識に俺がお会計の札を持っていた。
『今日は俺が・・・(お金出すよ)』
と言いそうになった。
馬鹿か俺は。