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最強の魔法使い(マキシミリア視点)

今回で完結します。

小さな箱から出る声は、私を『マキ』と呼びました。

私をマキ、と呼んだのは、まだ少年だったイザーク様だけでございます。

今の私をマキ、などと呼ぶ無礼者を私は知りません。


「失礼ではありませんか? まず名を名乗るべきでしょう?」


「えっ、何言ってるの? マキ、私は綾香だよ!」


私に無礼な呼びかけをするのは、『アヤカダヨ』と言う者らしいのです。


「アヤカダヨは、いったい私に何の用があるのでしょうか?」


「何の用って? 仕事の日でしょう? 忘れた? 二日酔い?」


「仕事? そこで私の仕事があるというのですね?」


そこに行けば、呪いの理由がわかるかもしれません。

私は台所の側の靴置きから、靴を見つけて履きました。


「今、そちらに行きますから、そこで待っていなさい」


私は心の中の魔力を集めます。

『アヤカダヨ』の痕跡を辿って、一気に距離を詰められるのです。


次の瞬間、私は『アヤカダヨ』の前にいました。

『アヤカダヨ』は、栗色の髪に黒い瞳をした異国風な若い女性でした。


「マキ、ビックリしたぁ! なんだ、もう来てたのね、てっきり遅刻かと思って電話したんだけど」


「私がここにいるのは、どんな呪いか、わかりますか?」


「呪い? ああ、そうね、会社という呪いかな......さぁ、急がないと、始業時間になっちゃうよ」


私は『今日のマキはどうかしている』と言うアヤカダヨに案内させて、『カイシャの呪い』を解くために見知らぬ建物の中を進んで行きます。

どんな呪いであろうと、この私に解けない呪いなどあるわけがないのです。


アヤカダヨは、ある部屋のドアを開けて入っていきます。

この部屋に『カイシャ』が住んでいるのでしょうか?


私も『カイシャの呪い』を解くために、緊張しながら部屋に入ります。

そこには驚くほど大勢の女性が、机を並べていました。


部屋に一人の中年の男が入って来ると、女性達が立ち上がり、その男を注目します。

特別な力を持った魔法使いには見えませんが、彼が「カイシャ」なのでしょうか?


「朝礼を行います。今週はクレームになるフレーズを使わないように気をつけましょう。では、皆さんで唱和します」


「はい」


「お待たせいたしました」「かしこまりました」「ありがとうございます」


それぞれの言葉を、声を揃えて全員で話している。

馬鹿馬鹿しいけれど、これが呪いの言葉なのでしょうか?。

こんな召使いの言葉使いを練習して、何になるのでしょう?


「それでは、仕事を始めてください」


そう言うと、男性は端にある席に座ります。

特別な席でもないので、その男が「カイシャ」ではなさそうです。


アヤカダヨは、自分の席の隣を指差しています。

そこに座れと言うことでしょう。


私が座ると、アヤカダヨは「ヘッドセット」と言いました。

アヤカダヨは頭に奇妙な髪飾りを付けています。


私が手にとって困惑していると、アヤカダヨが髪飾りを付けてくれました。

口元にまで飾りが伸びていて、実に奇妙ですが、周りの女性達が皆同じ髪飾りを付け、机の前にある鏡のような物を覗き込んでいるのです。


次の瞬間、ベルの音が部屋中で鳴り響き、女性達が一斉に話し始めました。

彼女たちは机に向かっているのですが、誰と話しているのでしょうか。


突然、私の頭の中にもベルが鳴り響き、目の前の箱に光が点滅しました。

何の魔法かと呆然としていると、アヤカダヨが手を伸ばして、私の机の上の箱を押しました。


私の頭の中に、中年の男のだみ声が響きます。


「何度掛けてもちっとも繋がらない! どれだけ待たせるんだ、お前の会社は!」


「カイシャ? カイシャに用事があるのでしょうか?」


「用事があるから、掛けているんだ!」


「では、まず名を名乗るべきでしょう」


「名を名乗れだと! 誰に向かってそんな偉そうな事を言うんだ!」


「誰かわからないから、名を聞いているのでしょう?」


「なんて失敬な! 上の者を呼べ!」


「上のもの? たかがお前ごときが、王妃様を呼び出せと言うのですね?」


「何を言ってるんだ、お前は! お前こそ名を名乗れ!」


「私? 私はこの世界に君臨する最も偉大な魔法使い、マキシミリア・エル・ニコレンカです」


「お前は、頭が沸いているのか? ふざけて俺を馬鹿にしているんだな!」


男の怒号が煩い。

私は、こんな男に構っている隙など無いのです。


「大声を出さないでいただけますか? それ以上喋ると、口を閉じ付けてしまいますよ?」


「なんだと! やれるものならやってみ......ろ......」


男の声は聞こえなくなりました。もう大声や暴言は口に出来ません。

よろしい。人は礼儀を弁えるべきです。


ふと、隣を見ると、アヤカダヨが口をぽかんと開けたまま、私を凝視しています。

私の魔力は、魔法が使われているこの世界でも、飛び抜けて通用すると確信いたします。


私は世界一の魔法使い、マキシミリア・エル・ニコレンカなのですから!

どんな世界に飛ばされようと、私に怖いものなど何もないのでございます。




      〔終わり〕



最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


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