表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

真紀とマキシミリア様

私の前に、イザーク様が跪いている。

ハンバーガーチェーン店で、指輪を捧げられた事を思い出さずにはいられない。

イザーク様は、約束を守る義理固い人だった。


「お立ちください。アラルカン大魔王様、公的なお立場を忘れていらっしゃいます」


「何を言うのだマキシミリア、いや、マキ、私の気持ちは変わらない。私は心からマキと生涯を共にしたい。それ以外の望みは無いのだ」


イザーク様の表情は真剣そのものだ。


「私は魔法も使えません」


「マキは私に、マキを愛する魔法を掛けたのだ」


それは魔法と違う。

でも、そう言ってくれるイザーク様の優しさが嬉しい。


「ただ、もしマキがマキシミリアとロベールの子孫なら、私と結婚することでマキは生まれないのではないか?」


「はい、そうかもしれません。でも私は、私が住んでいた便利で豊かな世界にいるよりも、イザーク様とこの世界で暮らしたいのです」


「では、マキ、返事は?」


「はい、イザーク様、私で良かったら、結婚してください」


「私はマキが必要なのだ。他の誰でもない!」


イザーク様は私を抱きしめる。

熱のこもった低い声で、私の耳に囁く。


「マキ、心からのキスを私にくれないか」


私はイザーク様の瞳を見つめ、爪先立ってイザーク様の唇にそっと触れる。

心臓のドキドキが止まらない。


「これがマキの『心からのキス』か? 全然伝わらないぞ」


私は思い切って、もう一度イザーク様に顔を近づける。

その時、イザーク様は私を抱きしめる腕に力を込め、私の(うなじ)をがっしりと掴むと、私の唇を食い尽くすようにキスした。


三十秒? 一分? 二分? 永遠にも思えるキスが終わると、私は腰が砕けて一人で立っていられない。


「これが私の『心からのキス』だ。マキに伝わったかな?」


さすがはイザーク様、『闇と光を抱く大魔王様』の二つ名は伊達ではありません。


「それでマキは、このようなキスをして、私を封印から解いたのだな?」


「......最初からお話します。イザーク様は婚約の宝石箱に封印されて、私の部屋に飛び込んで来たのです」


「宝石箱が封印の箱だったと?」


「はい、千年経っていたせいか、箱は真っ黒になっていました。でも、箱の形、大きさも同じで、箱の表面に『イザーク・アルファ・トビリシニ・エル・アラルカン』と彫刻されていましたので、間違いありません」


「マキシミリアは私が浮気したと誤解して、婚約の品に嫌がらせで私を封印したのか」


「もしかしたら、マキシミリア様は別の目的があったのかもしれませんが」


「ふん、だが結果的に、マキとこうして出会えたのだから良しとしよう」


「私がイザーク様のお名前を読みながらその名前をなぞると、箱が消えてイザーク様が現れました」


「『心からのキス』で封印が解けたのではないのだな?」


「はい、そうです。イザーク様が現れたので、私はイザーク様とあちらの世界で数日を過ごしました」


「そうか、私は千年後の世界で、既にマキと暮らしていたのか」


「封印の箱の中から、イザーク様の声は最初から聞こえていたので、封印が解ける前も声だけでお話していました」


「私はマキに、ずいぶん世話になっていたのだな」


「イザーク様と話すのは私も楽しみで、何も負担に思っていません。イザーク様が姿を現した後は、同じ部屋で過ごすのが心臓に負担でしたが、とても幸せでした」


「私はマキと同室で過ごしていたと? それはつまり?......」


「あ、いいえ、同じベッドで眠った事が一度だけありますが、何もありませんから!」


「何もない、だと! 私は千年後にそんな腰抜けになっていたのか!」


「あ、いや、その、色々な訳がありまして、決してイザーク様が腰抜けだったのではありません」


「そうか、それで『心からのキス』をしたのだな?」


「その時ではありませんが、お互いの心が通じ合って、キスをしたのです」


「このようにか?」


イザーク様は、また私にキスをする。

心臓がもたない。このままでは今日死んでしまいそうだ。


「お願いです。話をさせてください。息がもちません」


「わかった、しばらくは我慢しよう」


「『心からのキス』をすると、私はイザーク様の瞳の中に落ち込んで気を失いました。次に気がつくと、私はマキシミリア様になってベッドで寝ていました」


「なるほど、それで私が見舞いに来た時に、マキシミリアの態度が変わっていたのだな」


「私の気持ちでは、つい昨日イザーク様と『心からのキス』をしたはずなのに、イザーク様の態度が冷たかったので傷ついて泣いてしまったのです。」


「本当に、知らなかったとは言え済まなかった。お詫びをしよう」


イザーク様は、また私にキスをする。


「そんな話を聞くと、ますますマキが愛おしくなる。これからマキと離れて暮らせるだろうか? 陛下に結婚の許しを急いでもらわなければならない」


イザーク様の熱がどんどん高くなる。

私はイザーク様の過熱を防ぐために(そしてわたしの心臓を労るために)別の話を振る。


「ところで、私と中身が入れ違ったマキシミリア様は、いったいどこに飛ばされたのでしょうね?」


「さぁ、どこだろう? 入れ代わったとすれば、マキが元いた世界ではないか?」


マキシミリア様はかなりわがままな性格らしい。

そんなマキシミリア様が、私の身体に宿ったら、お気の毒、と言うほかない。


「マキが私の側にいてくれれば、マキシミリアがどこにいようと私は構わない」


イザーク様のオッドアイに見つめられて、私はただただ溺れてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ