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ロベール様の求婚

ロベール様は、手に持っていた花に口づけする。

花に口づけしながら、私を流し目で見る。


「マキシミリア、親に決められたから、君は何のためらいもなく結婚するんだね? 愛情はなくても構わないんだね」


ロベール様は口づけた花を、私に渡そうとする。

私は受けとらない。


「ん? マキシミリア? 俺は君を愛しているんだ、一生君だけを愛しつづけるよ......俺の瞳にはマキシミリアだけしか映らないんだ」


こんな歯の浮く台詞を話しても、金髪ハンサムの騎士様が言うと、それなりに様になるのがおもしろい。

もし私がマキシミリア様の年だったら、うっとりとして、だまくらかされてしまうだろう。


そうだ、私は二十五歳だったのに、まんまと優斗の甘い言葉に引っ掛かった。

人は信じたい言葉を言われると、無批判に信じてしまうのだ。


真紀さんはとても若く見える、とか、真紀さんは魅力的、とか、頼りがいがあって甘えさせてくれるとか、とか、とか......。


私は、聞きたい言葉をくれる優斗が好きだったのだ。


ロベール様は花を放り投げて、私の手を掴む。


「マキシミリア、俺と一緒に隣の国に逃げよう! マキシミリアの魔力があれば、どこに行ってもやっていけるよ」


イザーク様が以前言っていた、マキシミリア様が結婚した騎士は、口がうまくて軽薄そうなこの男なのだろうか?

だとしたら、残念過ぎる。


私はロベール様の手を振り払う。


「触らないで! 貴方なんて、好きじゃないです! 私はイザーク様の許婚です。貴方よりイザーク様の方が、ずっと信頼できます!」


「マキシミリア、待って、君を愛しているんだ! 君のためにすべてを捨てる覚悟をしているんだ!」


私はロベール様に構わずに、建物の中に戻る。


「マキシミリア、結婚してくれ! 結婚してくれないと、俺は......破滅だ......」


勝手に破滅してください。

だけど、この金髪の軽薄なロベール様も私の先祖なのですよね。


マキシミリア様とロベール様が結婚して、生まれた娘の千年後の子孫が私なのだとしたら、二人が結婚しなかったら、そもそも私は生まれないのでは?


だけど、私は同じ過ちを繰り返したくない。

ここでロベール様と結婚したら、きっと一生後悔する。


昨日、イザーク様ときつく抱き合ったとき、私はその瞬間に世界が終わっても後悔しないと思ったのだ。

いまさらイザーク様をロベール様に取り替えたりはしない。


私は急いで階段を上ると、部屋の前につながる廊下に侍女のオリガが立っている。


「マキシミリア様、どこにおいででしたか? 部屋にいらっしゃらないので、お探ししておりました」


「ごめんなさい、中庭に行っていたのです。でも、もう部屋から出ません」


「イザーク様が、マキシミリア様を部屋の外に出さないようにと私に言い置かれました。マキシミリア様は中庭でどなたかとお会いになりましたか?」


「......えぇ、実は近衛騎士のロベール様と言う方と......」


オリガは眉をひそめる。


「ロベール様、ですか......」


「ねぇオリガ、正直に言って欲しいのだけど、オリガはロベール様をどう思うの?」


「マキシミリア様はロベール様がお好きなので......」


「そんなことはないわ!どちらかと言えば、嫌いなタイプだけど!」


「そうでございましたか、私はてっきり......ロベール様はあのご容姿ですので、令嬢達やご婦人がた、侍女の間でも、それは人気でございます」


「そうね、とてもハンサムなのは認めるわ」


「それに、何と言ってもお話がお上手で、少しでも関わりを持ったお嬢様方は、みな虜になってしまわれるのです」


確かにロベール様は、甘い言葉をすらすらと口にできた。


「ところが、私の侍女仲間から聞いた話では、ロベール様はメリュジーヌ様の侍女のリザベラ様と特別な関係なのだとか」


「えっ、リザベラ様?」


「リザベラ様はロベール様と結婚の約束をしていると言っているようですが、私は嘘だと思っております」


「なぜ嘘だと思うの?」


「ロベール様は、ご自分に利益のない結婚はなさらないと思うからです」


「オリガはそう思うのね」


「はい、マキシミリア様に取り入ろうとしているのも、マキシミリア様の強い魔力を利用したいだけのように思えてなりません......あぁ、もちろん、お嬢様のお美しさに惹かれているのが一番だと思いますが」


「オリガ、気を使わなくて良いのよ、私もそう思うもの」


「マキシミリア様、雷に打たれた後、お嬢様は変わられましたね、私にお話しくださる態度も丁寧ですし、イザーク様に対しても以前とは違います」


え、そんなに丁寧に話しているつもりはなかったのだけど、マキシミリア様はかなりのわがままお嬢様だったのだろうか。


「ええ、自分でもちょっと記憶が曖昧で......あ〜、ところで、イザーク様にまた相談があるのだけれど、一日に何度もお呼びしたら、失礼かしら? きっとイザーク様は、とてもお忙しい方よね」


「何か急用でございましたら、私がお聞きして参ります。今すぐは無理でも、時間を見つけておいでいただけるかと思います」


「そうね、こちらから出掛けていけないので、オリガにお願いしようかしら? もし用件を聞かれたら、リザベラ様の事でと、イザーク様だけにそっと伝えてほしいの」


オリガは出て行き、イザーク様の返事を持って帰ってきた。

遅くなるかもしれないけれど、必ず行くと言うので、私は午後をジリジリと過ごした。



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