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転生悪役お嬢様は諦めている  作者: 雪菊


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紗也の献身の結果として、大分争いから外れた薫子は呑気にしているけれど、大部分の人には距離を置かれている。大人しくしているかと思えば「椿から離れろ」と言った瞬間「じゃあ潰しても良いかしら」とでもいうような判断を即座にしてくるタイプだと学んだからだろう。

即座に薫子たちをターゲットから外し、特に椿と諾子には手を出さないと改めて誓う人間も多かったが、やはり時既に遅しな人間もいる。その辺りは自業自得というものだろう。



「薫ちゃん、自分含めた私たちの面倒を減らしたかっただけで脅す意図あんまりなかったのに結果としてそうなってんのが残念だよね」


「何もしなければ何もされないと学べてよかったんじゃないかなぁ。薫子さんを巻き込もうと計画を立ててた人たちも人柱の大変さを見て諦めたらしいし」



破滅か、仕事か。

どちらか選べと言われれば後者を必死に頑張るしかない。

けれど、その中身は過酷だ。特に何もしていない薫子に喧嘩を売るのがそもそもの間違いなのだが。

気が弱ければ、権力も使えず脅しに屈して泣いていたかもしれないが、薫子はそこまで気が弱いわけではない。大人しくしているのは興味がないのと、下手に関わると利用されて面倒になりかねないからだ。



「薫ちゃんが割としっかり罰になること言ってくれて良かったよね。椿がどうするか決めてたら我妻くらいなら消えてたし」



すっかり風紀委員のような存在と化した紗也。薫子の代わりにせっせと働かされているせいで教員からの評価は上がっている。家では「あいつら人の言うこと全く聞かないしもう無理!!」と泣き言を言っているが、全員から「無理でもやれ!!」と言われて追い詰められている。なお、やれと言った薫子も手伝わない。

ちなみにだが、薫子に泣きついていたら椿はせっせと楽しそうに破滅への道筋を立てていたことが予測されるので、気合で頑張っている彼女は人知れずぎりぎり命拾いをしていたりする。



「椿くんは……本当に薫子さんしか興味がないものね」



薫子のためにならないものは本気で存在する価値を疑う男である。



「でも、去年より今年同じクラスだった方が良かったなぁ。一緒にお泊まりって何回やっても楽しいし」



頬杖をついて拗ねるように頬を膨らませる諾子に葉月は少しだけ声を出して笑う。その姿は可愛らしい。それが少しだけ嫌だったのか、机に伏せるとポニーテールにした髪が頬にかかって表情の印象が変わる。



「いいなぁ、葉月は」



嫉妬。

諾子の言葉に感じたそれになんだかいけないものを見た気分になって胸が高鳴る。



(この気持ちは、なんだろう……。今ものすごく諾子さんの隣に薫子さんをおきたい…!)



ここに居るのは自分ではないのだという気持ちを噛み締めながらそう考えていると、「諾子さん、葉月さん」と彼女たちを呼ぶ声が聞こえる。

黒い髪が彼女が歩くのに合わせて揺れる。



「薫ちゃん!」


「ごめんなさいね。せっかく来ていただいていたのに待たせてしまって」



申し訳ないというような表情の薫子。その隣を陣取って諾子は嬉しそうに笑った。



「じゃあ、林間学校のお買い物しに行こっか!」



一気に表情が明るくなった諾子と隣で柔らかく微笑む薫子を見ながら、葉月はなんだかとても嬉しくなって、諾子のもう片方の隣へと並んだ。

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