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2年生になった。
白峰学園は3年に一回のクラス替えなので今年は去年から持ち上がりだ。4年生でようやくのクラス替えとなる。
なので今年も同じクラスになれないと椿はテンションを下げている。
そういうことで特に変わりなく学校生活を送っている。変わったことがあるといえば、6年生が中等部に上がり、新一年生が入ってきたことくらいだろうか。
「薫子お姉様!」
キラキラした瞳で薫子に駆け寄ってくるのは新一年生の女の子。白桜会に入ってきた良家の子女である。
くりくりのまあるい瞳とクセのついた栗色の髪が愛らしい。くるくるの縦巻きロールヘアーがトレードマークになっている、十月くるみという少女だ。
ぎゅっと抱きつくと、薫子は可愛いなぁという表情でその頭を撫でた。
「お姉様!私、ちゃあんとサロンに来るまでお姉様に抱きつくのを我慢いたしましたわ!」
褒めて褒めて、という様子のくるみだが、そもそも彼女は妹じゃないし親戚でもない。ただの後輩である。
なのでちょっと椿はイラッとした顔をしている。
「えらいわ。お友達もできたのかしら?」
「くるみにかかれば、友だち100人も夢じゃありませんわぁ!!」
ほほほ、と笑う彼女の襟元をひとりの少年が掴む。頭が痛いというように額に指を当てている。
「お前のそれは友だちじゃなくて取り巻きっていうんだよ!」
「お友だちですわ!だってあの子たちもそう言ったもの」
「友だちは金ばらまいてできるもんじゃないの!!ごめんなさい、春宮さん。くるみがごめいわくを」
どうやら薫子が思っていたようなお友だちじゃなかったらしいことに苦笑するけれど、自分たちの家や立ち位置で友人作りが困難なのも実感しているので何とも言いづらい。
「葵!」
彼の言うことが不服なのかくるみは声を上げた。
彼は白鳥葵。くるみの幼馴染である。
薫子の前でぎゃんぎゃんと喧嘩をする二人を見つめて2回ほど手を叩く。
「公共の場で喧嘩はダメよ」
困った顔をした薫子に気が付いた二人は、しょんぼりしながら「ごめんなさい」と呟いた。そんな二人の手を引いてお茶を用意し始める薫子を手伝うように椿も動いている。
「やっぱり薫子お姉様と椿様は特別に仲がよろしいのよ!」
「それはまぁ……僕にもわかるよ」
後輩二人からカップル扱いされている事を知らぬまま彼女たちはお迎えが来るまでサロンでゆっくりとお茶とお菓子を楽しんだ。
後輩ができただけで白桜会は騒がしくも賑やかになり、楽しそうな薫子に椿も喜んでいた。