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転生悪役お嬢様は諦めている  作者: 雪菊


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2月にはバレンタインデーがある。お小遣いとカタログとを交互に見ながら慎重にまるをつける。右上には「おじいさま」「椿さん」など名前が記載されている。その様子を微笑ましく見ながら桃子は清子と一緒に「あの子たちには内緒にしておきましょうね」と言い合った。


そんなわけで、現在元正と椿は仲間外れをくらっていた。心なしか元気のない二人だったが、可愛いお嬢様が必死にチョコレートを選んでいるのを知っている人間ほど口を噤んだ。


薫子はお友達には友チョコを配るつもりだったのでその辺りも何をあげようかと考え込んでいる。

椿と諾子には特別なものをあげたかった。

諾子とも一緒に話し合ったりしているが本人に渡すものは秘密である。



(友チョコでも男の子に渡すのって初めてね。緊張するわ)



あくまでも友チョコである。

今の薫子は全然恋愛とか考えていない。

なんなら、一応ではあるが攻略対象組も仲良しなので彼らの分も用意している。


そして当日に届くように配送手続きをして、家族と諾子、椿にだけ手渡しすることにした。

いくら白桜会という特権階級の薫子たちでも、基本的には校則を守るべきだろうという判断である。学校にはおやつを持って行ってはいけない。

とはいえ、白桜会サロンには完備されているし、給食にはデザートがつく。

白桜会のメンバーはおおよその事は許されるが、あまり横暴なのも顰蹙を買うだろう。かといって、配送で済ませてしまうあたりもどうなのだろう思われているが、薫子はその辺り気にしていない。メッセージカードつけた、オッケー!と思っている。


購入したチョコレートを清子に頼んで隠してもらうと薫子は「当日喜んでもらえるかしら」と弾んだ声で言った。



「もちろんですとも。皆様、薫子お嬢様が大好きですからね」



清子には狂喜乱舞する椿の姿が目に見えるようだった。これが薫子が大きくなって手作りとか始めたら彼は感動しすぎて死ぬんじゃないかと思う時もある。椿は良くも悪くも熱烈だ。とはいえ、彼らはまだ幼いので、薫子にとっては初恋という青春の1ページになる前に終わる可能性もあるけれど。




そして、当日。

チョコレートを期待してサロンまで行った雪哉は「(ここには)ないけれど」と言われて撃沈し、家に帰ったら届いていた可愛らしいラッピングのチョコレートに戸惑った。それは諒太と朔夜、葉月も同様である。



「直接渡してくれ」、それが彼らの総意であった。



一方で諾子と椿は放課後に家にお呼ばれして楽しそうな薫子に直接チョコレートを渡されていた。



「ありがとー!!でもなんで学校で渡さなかったの?」


「校則違反でしょう?」



白桜会はみんなの規範になる存在だと言われている以上、そういうことはよくないと真面目な顔をして言う彼女に諾子は薫子はそういうタイプだったなぁ、と頷いた。他の面々は「特権階級なんだからイイよね!」とばかりにチョコレートを持ち込んでいたが。



(好きな子とかできてもお家に渡しに行きそうだなぁ)



そんなことをしみじみと思っていたら感動のあまりフリーズしていた椿が嬉しそうに薫子にお礼を言う。その姿はまるで犬である。ご主人様に構ってもらえて嬉しいと全力で尻尾を振っているようにすら見える。

犬は犬でもそんなに可愛いものではないが。



「気に入ってもらえてよかったわ。びっくりさせたかったから内緒にしていたの」



ふふ、と照れたように笑う薫子を見て椿はしばらく女性組に距離を置かれていたその間の全てを許した。

薫子が可愛い。

彼にとってはそれが全てである。



「今からおじいさまとおばあさまに渡しに行くの」



ついてきてくださる?と首を傾げた薫子に彼らは笑顔で頷いた。

そして、元正は嬉しくて数日薫子たちが渡してきたチョコレートを飾って桃子に微笑ましがられた。



「あなたも随分と丸くなったこと」


「うるさい」



その言葉に耳が赤くなった元正を知るのは桃子だけであった。

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