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秋が来たかと思えばあっという間に冬である。季節の移り変わりは早い。夏から一気に冬になった気すらした。


白桜会では中等部・高等部まで含めたクリスマスパーティーの話で盛り上がっていた。ドレスが必要ですね、と家では祖父母が資料を取り寄せている。

買い物に行くというよりはそのブランドの担当者などが家に来たりする。薫子のために薫子の趣味っぽい服飾品を売りにくる。百貨店に行けば春宮家専門の担当者がついたりする。金銭感覚が狂うわ、と思いつつも春宮家ではこれが普通なので右に倣えしている。


そんなわけでこの度も、家に薫子のためのドレスやアクセサリーがずらりと並べられた。何着買おうと、冬場は年末年始のパーティーやらご挨拶があるので無駄にならないと祖父母も乗り気である。着物もいいわね、なんて桃子が言った暁には着物まで並べてくるのだから担当者の本気を感じる。


結局、何着かのドレスとそれに合わせる靴やアクセサリーの購入が決まった。

薫子のものが決まると次は元正と桃子のものに移る。特に散財するわけではないが、名家で相応の格好を求められるために動く金額はそれなりだ。

担当者はホクホク顔で帰っていった。



「クリスマスパーティー用のドレスを買って頂いたの」



翌日、椿にそう言うと彼は「どんなものを用意したのですか?」と返す。

合わせようとしている。



「とても素敵なの。驚かせたいから、当日まで秘密よ」



そう言って楽しそうに笑う薫子がレアだったので、椿は「薫さんが可愛いからいっか」と思った。



白桜会の初等部用サロンでも誰がどんなドレスを買ったか、何色の服を選んだか、アクセサリーはどんなものか等話し合われているけれど、女子サイドで薫子が「可愛くして椿さんをびっくりさせたいの」と可愛らしくはにかめば、お姉様方は秘密にしようと口を噤んだ。


当然、男子メンバーはその内容を当日まで知ることはなかった。




「まぁ、似合う衣装を適当に着せてもらうのが無難だよね」


「サクはなんでも似合うからなぁ」


「安い服着てても、どこのブランドですかって聞かれるしね!」


「そういう意味じゃないよ」



投げやりにそんなことを言う朔夜に諒太は苦笑した。実際、良家との繋がりを意識して白峰学園に入学、白桜会入りを果たした彼ではあるけれど、今はまだ普通よりちょっと裕福くらいの家なので他の家の人間に比べると衣装自体は劣るものを着ることになる。本来なら結構浮く。



「顔がコウキってなんだろうね」



すっと細めた目の色は冷たい。周囲が自分の顔にどれだけの価値を見出しているのか、と考えようとしたところで彼は首を振った。理解がまだ及ばない。


諒太は父方の祖父母が用意した。両親が弟ばかりに構っているのを流石にやばいと思ったらしい。

気がつけば体が弱かったはずの諒太は元気に走り回っているし、今のところ問題行動も見られない。名家の子女とも仲が良い。どう転んでも良いように諒太の教育に口出しを始めているが、弟ばかりにかまける両親は気がついていなかったりする。母親と夏目の祖父母はあまり仲が良くない。余計に祖父母が気合いを入れている感じがして少し嫌な気分になる。



「まぁ、興味あるだけマシでしょ?」



なので、若干彼も荒んでいた。

あと、薫子が椿を驚かせたいからなんていうからちょっぴりイラッとしてもいる。できれば自分にも目を向けてもらいたい。



(それも我が儘なんだろうけどね)



前はともかくとして、現在両親と仲が良い朔夜にも少しの羨ましさを持ちつつ、落ち着こうと用意されたお茶を飲んだ。


雪哉は自分から細かくどのブランドだとか色だとか全部教えてくれる。今のところ微笑ましげに見てもらっている。

ただ、うるさくなったのか、たまに上級生がその口に一口サイズの菓子を放り込むなどしている。彼は良いところのお坊ちゃんらしく食べているときは口を開かないので静かだった。


椿はというと。



「薫さんと並んで邪魔にならない衣装なら何でも良いです」



そう言って親を困らせた。

当の本人は「両親に任せておりますので」と周囲に言っている。



「今年の一年、キャラ濃いなー…」



初等部の白桜会会長はそう言って苦笑いした。

椿はいつも褒めてくれるのでちょっと驚かせて見たかった薫子。

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