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しききみの舞台となる学校は初等部からのエスカレーター式である。初等部から在籍している子息の方がより多くの権力を持つ。

薫子は5歳。翌年にその学校の初等部を受験をすることを祖父母が決めた。


桜子はというと、とある男と浮気をしていたらしく離婚して三ヶ月で再婚した。その間、全く薫子には会いに来なかった。

祖父母は非常に憤ったものの、うっかり話を聞いてしまった薫子が「じゃあ、かおるこは、ここのこどもでいられるのね」と珍しく心の底から安堵の笑顔を見せたため、親権を譲り受ける代わりに金銭を渡して絶縁することとなった。薫子は祖父母の養子となった。


6歳以上の子供であったなら完全に縁を切るということはできなかったが、薫子は5歳。特別養子縁組が適応された。だが、祖父母に引き取られた以上親戚関係ではあったりする。

桜子は相続拒否などしないだろうということで、少しずつ資産を薫子に移すことにしたのだが、そこまでやっていることは薫子の知らぬ話だ。


薫子には優秀な家庭教師が付いた。真面目にやっていれば捨てられないかしら、と薫子は真面目に取り組む。


祖父母はまだ両親が恋しい年頃だろうに文句を言わず、日々を勉学等で真面目に過ごす孫娘に段々と愛着が湧いてきていた。

結果的にそれは薫子に精神的な安全基地を形成することとなり、薫子にとっての居場所となった。この時点で薫子の破滅フラグが一つ減っている。

乙女ゲームの春宮家が薫子を追い出しても痛くなかったのは薫子が手のつけられない我が儘娘で、祖父母にも、跡取りとして育てられた攻略対象であったはとこにも失望されていたからである。とはいえ、努力もしていたようで表では完璧な女の子として振る舞っていたが。


現在の薫子はと言うと、我が儘は言わず、祖父母を家族として慕い始めた出来も良い可愛い盛りの孫娘である。そのことから春宮家の跡取りも彼女に婿取りをさせれば良いと祖父母は考えはじめている。

攻略対象であった少年もそのことから両親に厳しい躾を加えられたり、ヒロインと仲良くなったがために薫子に糾弾され精神的に追い詰められる、というような未来は回避できているので旧家の跡取りという条件からは外れるが平穏に暮らせている。


薫子はブラック企業で働いていた記憶があるからか、特に教育を厳しいと思わず、時間がないのは困るくらいにしか考えずにお稽古事や受験に強い幼稚園に通ったりしていた。


幼稚園での薫子は地味に人気があった。

美しい容貌もそうであるが、穏やかな性格が周囲に安心をもたらした。結果としてそれは、桜子との性格の差を示すことになる。子供たちの両親の多くは薫子との交流を嫌がったが、薫子の側にいる子供たちは安定するのでそのうちに多くは何も言わなくなってくる。


だが、口さがない人間もやはりいた。



「そんな捨てられた子供に近づくんじゃありません!」



母親はヒステリックでないといけないのかしら、と薫子は無理矢理引っ張って行かれてギャン泣きの夏目(なつめ)諒太(りょうた)を見つめながら手を振った。


しききみでの夏目諒太は明るく快活なスポーツマンだ。幼い頃、身体が弱く寝込みがちであったところから体力作りのためにスポーツを始め、ストーリー開始時にはバスケットボール部でエースを務めていた。


その通りの現在は身体があまり強くなく、引っ込み思案で、薫子にひっついていた。他の子供と比べて外に引っ張り出したり無理をさせたりしない事で懐かれてしまった。

薫子は別に恨みもないので放置している。


夏目母を筆頭に、「春宮桜子の娘なんて」と薫子を嫌う人間もやはりいる。それを見ながら普通そうだろうと納得する程度には、薫子は諦めが早かったし、母親の事を碌でもない人だと思っている。



「薫子お嬢様、今日は何をしましたか?」



清子は引き続き、薫子の世話をしてくれている。そんな清子に、どんなことをしたか、友人との会話などをゆっくり話す。

薫子は興味がないので言われた悪口のことなどは何も話していないが、職員は言われている場面や、八つ当たりのように怒鳴る保護者を見ている。職員は薫子が恐怖で何も言えないのだ、と考え、義憤に駆られている部分もあり連絡ノートにバッチリ全部記載しているのだが、薫子は基本的に見ないのでそれを知らない。



「怖いことや悲しいことはありませんでしたか?」



清子は連絡ノートで知っているのでそう問うと、薫子は少し考え込んで、そういえば引きずられていった諒太は痛くなかったかしらとその話を少しすれば、清子は眉を顰めた。



(自分以外のよその子供のことまで心配するなんて清子は優しいのね)



迎えの車の隣の座席に座りながらそう思っている薫子だが、無論違う。

捨てられた子供等と面と向かって本人に言う成人に対して眉を顰めていた。あまりにもデリカシーがなさすぎる。


連絡ノートを主に読んでいるのは祖父母だ。当然、全て知っている。

春宮は桜子が好き勝手できたくらいには大きく、古く、権力のある家だ。

薫子が破滅フラグを知らず知らず解消していくと同時に地雷原でタップダンスを踊る人間が現れ出したのだった。

確認したら5歳ならまだ特別養子縁組いけましたね…。

親子関係の絶縁はこれでできるらしいんですけど、他人のとこ行ってるわけじゃないからなぁ。って思ったり。


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― 新着の感想 ―
[一言] 読み始めたばかりなので、諦めて流されているのか受け入れてるのかは分からないけど、主人公って擦り切れてるとか壊れてるといった印象を受けますね。
[一言] 絶縁に法的根拠はあるけどね。
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