表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生悪役お嬢様は諦めている  作者: 雪菊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/122

19



諾子が宿題を終えた頃、薫子は祖父母に連れられて避暑地へと来ていた。

観光で訪れたそこは木々に覆われた洋風の別荘だった。


庭には色とりどりのバラが咲いており、その中にテラスが作られている。

物語に出てくるような光景に、薫子は胸を弾ませた。


祖父母に連れられて中に入ると、広い玄関から続く廊下の先に先程の庭のバラが見えた。

全てが規格外なこともあり、薫子は「お嬢様ってこんなすごい別荘に来れるものなのねぇ」と感心しきりである。お金持ちはそれなりにいても、その中でも一部の人間しか観光名所で避暑地の一等地にこれだけの邸を維持できる者はいないのだが、今の薫子にそんな情報をガッツリ吹き込む大人はいない。もう少し大きくなってからでいっか、なんて思いながら可愛い少女が立派な大人になる時を待っていた。



「気に入ったか?」

「はい、おじいさま」



ほぉ…と興奮したように頬を染めて笑う孫娘を見て、元正は満足そうに頷いた。

そして、一方でどうしようもなく育ってしまった娘も初めてここに連れてきた時にそうやって笑ったことを思い出した。

今の薫子と同じく、ふわふわしたワンピースとリボンのついたつばの広い帽子を被ったかつての桜子はとても愛らしかった。


娘に捨てられた孫娘にはとてもではないけれど思い出話もできないな、と苦笑もする。


何がいけなかったのだろうか、と考えたことは一度や二度ではないけれど、今は薫子がこのまま育ってくれればと思う。


今回は椿や諾子は数日遅れて来ることになっている。祖父母との観光も楽しみにしている薫子は清子に「あの辺りは何があるのかしら」「おじいさまとおばあさまはどういった場所がお好み?」とパンフレットを取り寄せてあれこれ聞いていた。清子は「旦那様も奥方様も、薫子様のお好きな場所に行きたいかと存じます」とニコニコと答えた。



(たしかに、おじいさまとおばあさまは毎年行くと言っていたもの。全て見尽くしているのかもしれないわねぇ)



逆に少し困った。薫子にだって確かに好みはあるけれど、彼女は自分で決めるのが得意でなかった。前世で大抵のことが裏目に出たせいである。


別荘に来ながらも、どこに行きたいかを考えていたがまだ纏まっていない。

有名なのは水面に映る木々や、カルガモが泳ぐ池だろうか。子どもらしくはないと思うが、薫子は割とそういう静かで落ち着いた空間が好きだ。ゆっくり散歩できればさぞや気持ちがいいだろうと思う。


アップルパイが美味しいカフェなんかも気になっている。静かな場所であれば、祖父母と行った方がゆっくりできるかしら、と赤で丸を入れた。

美術館とローズガーデンにも同じように丸を入れると、桃子に「赤の丸と青の丸があるけれど、違いがあるのですか?」と聞かれたので、「青の丸は椿さんと諾子さんもご一緒できれば嬉しいところです」と笑った。


薫子は特に諾子に甘いのでショッピングプラザや食べ歩きスポット、レジャースポットなどがメインだった。これがもし椿だけであれば彼女は容赦なく教会や滝等、鑑賞する美術館の数を増やすなどしていた。椿なら一緒に楽しんでくれるだろうと薫子は勝手に思っていたりする。

椿は基本的に薫子が居れば他の有象無象なんてどうでもいいのでとても幸せそうに付いていって薫子「を」鑑賞しただろう。


祖父母と一緒に行きたいと言う場所は静かな場所であったので彼らは諾子を思い出して静かに頷いた。この歳にして適材適所が分かった子であると感心している。本当は単に薫子の中の成人女性による価値観で選ばれているが、そんなことなんて知る人はいない。


お出かけ用に選んだフリフリの可愛らしい服たちを並べて使用人たちもニコニコしていた。

薫子は後ろにそうやって並ぶ彼女たちにまだ気づいていないが、10分後には着替えさせられる事となる。


そして、薫子は祖父母との落ち着いた楽しいひとときを過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ