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少女はそれを恐怖と呼んだ  作者: ハマグリ
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日常

 



 『日常』

 それは誰もが保持しているもの。それが当人にとって平和で穏やかなものであっても、苦しくつらいものであっても、それは自分以上に自分の生活を支える。一時の非日常はいつしか日常に代わり、特別でなくなっていく。




 『~脱獄犯はいまだ逃亡を続けており~』

 『~続いてのニュースです。国内の水族館で~』


 別段興味を引くことのないニュースが流れていく。


「...つまんないな。」


 朝のニュースは天気予報さえ見れればいいのだが、それでもスマホなどで天気を見ようとしないのは朝から陰鬱な静けさの中にいたくないからだろう。


 『~続いてお天気です。今日のお天気は~』


 天気予報が終わり、またニュースが流れ始める。パンを口に放り込みながらそれを眺める。何も特別なことはない。いつも通りの朝の時間がだらだらとながれていく。


 テレビの中から8時を伝える音声が聞こえると、それを合図に家を出た。


「行ってきます。」


 テレビを消した部屋の中からは返事が返ってくることはない。


 マンションのエレベーターを降り、駅へ向かう。08:11の電車には同じ高校に向かうであろう制服も見えた。しかし、私に話しかける人はいない。家の中では静かなのが嫌で、テレビをつけているのに外では静かなほうがいい、と思ってしまうのはなぜだろう。一人暮らしには慣れたはずなのに...。


 スマホを開いてみてもすることはなく、また閉じる。


「早く着かないかな...。」


 誰にも聞こえないような声で小さ。


 学校は好きじゃない。行ったところでつまらない授業を受け、ただ下校時刻を待つだけ。でも、嫌いじゃない。やるべきことがあり、それをこなし、時間がつぶれる。それだけで幾分かマシだ。


 そんなことを考えているうちに目的の駅にまで着いた。私の少し後ろを歩く同じ制服を着た女子生徒たちの話声が聞こえる。とても楽しそうだ。うらやましい。私にも心が許せる友人がいればこのつまらない日常が少しは楽しくなるのだろうか。...こんなことを考えていてもしょうがないか。人は自分と違うものを嫌い排除しようとするのは当然のことなのだから。


 幼い頃から自分の見た目が他人と違うことは理解していた。金色の髪、くすんだ青色の瞳。父も母も純日本人なのにそんな見た目をしているのは幼い子供だけでなくその保護者にまで異様にみられていたことだろう。


 両親は私が5歳の時に離婚をした。当然だろう。特に父親はつらかっただろう。母親はどんな気持ちだったんだろう。今となっては聞くこともできない。両親は二人とも私を欲しがらなかったそうだが、親権は父に渡った。父はとても冷たかった。誰の子供かもわからない子供をそだてなければいけないのだから当然だろう。小学生くらいまではそれが悲しかった。中学生になるとそれを受け入れた。高校生になり私は父に一人暮らしをしたいと提案した。父はあっけなくそれを承諾した。

 ...すこしだけ、寂しかった。




 学校についてもすることはいつもと変わらない。1限目が終わり、2限目が終わり、3限目が終わり、4限目が終わり、昼食をとり、5限目が終わり、6限目が終わり、途中で買い出しをして帰路に就く。


「ただいま。」


 家に帰り、夕食を作る。今日は先生に頼みごとをされていたせいで帰えるのが遅くなってしまっていた。


「いただきます。」


 テレビをつけながら夕飯を食べているが、朝とたいして変わらないつまらないニュースが流れてくるだけだった。


『本日14時頃,○○市内の一家5人が惨殺されており、警察はこれを未だ逃亡を続けている脱獄犯の仕業だと~』


「...怖いな。」


 本当に自分がそう思ったかはわからなかった。ただ、一般的には怖いと思うのが普通だろう。そう思った。







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