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俺達の神妖乱戦  作者: 前タナ
1章 出会いと別れと妖怪と
1/2

1話 混乱新入生!

入学式、今日この日は誰かにとっては眠れない程待ちに待った日か

もしれない、また誰かにとっては夢への第一歩かもしれない、なんにせよ

色々な思いの詰まった1日となる事に間違いない

ここ、如月高校でも

俺?

俺にとっては…とてもではないが、良い日とは言えないな

…何故なら


「待ちやがれぇぇ!!そこのいちねぇぇえん!!!」

「勘弁してください!ぼk……俺これから入学式なんっすよ!!」

「この顔の傷の落とし前付けてから行きやがれぇ!」


顔を真っ赤にし、目の周りに青あざが出来ている猪のような先輩に

現在進行形で追いかけられているからだ。

そもそもこうなった原因も、あの先輩の自業自得だ

勝手に因縁付けて、追っかけて来て、石に躓いて転んで…

…完全にとばっちりもいいとこだ…そろそろ適当な所で撒きたい


「ここを曲っ…んなぁあ!?行き止まりぃっ!?」

「やぁ〜っ…と追い…ゼェ…込んだぞ…このゼェ…一年坊が…ぁ!」


膝に手を置き、息を切らしながら俺の前に立ち塞がる先輩

…見た目の割に走る事は苦手らしい

横から逃げようかと思ったが、見た以上に狭く逃げるのは

無理だ…諦めるしか無い

先輩は息を整え、ジリジリと俺に詰め寄り

俺は徐々に壁へと追い込まれる


「へへ…ようやく観念しやがったなぁ?」


指の関節をボキボキと鳴らし、ニヤニヤしながら近寄る

…初日からこんな事に巻き込まれたく無かったけど


「…っ」

「やっと覚悟決めたかぁ?」


拳を構え、左足を引き腰を落とす

一触即発、異様な緊張感が漂う中

お互いがお互いを睨み…駆け出したと同時に


──── チリンッ… ────


決して大きな音とは言えないがハッキリと耳に、鈴の音が鳴り響く

それは、先輩も同じだったみたいで辺りを見渡す

鈴の音の主はどんどん近づいてくる様で少しづつ音が大きくなる


俺たちに近づききったのか音がなり止む

先輩は振り向き、俺は先輩の背後を見つめる

だが、そこに人は誰も居ない

居るのは…


「にゃ〜んっ!」

「ね……猫ぉ…?」


そう猫だ、それも何の変哲もないただの三毛猫

強いて言うなら首についてる鈴が少し大きい位だ

甘えたような声を出しながら先輩の足元にすり寄っていく


「んな〜、な〜ぉ」

「あっバカ、そっちは…!!」


先輩の元に行った猫に駆け寄ろうとすると

ひょいと猫がゴツい腕に抱き上げられる


「…コイツぁオレが預かっててやる、怪我の件もこれでチャラだ」

「は…?!待てよ!!相手なら俺がするそのネコは関係ないだろ!!」

「あぁ、だからこそお前はこのネコさ…ネコに感謝するんだな」


猫を抱き上げたまま、そのまま何処かへと去っていく先輩

去り際のその表情は……

とても穏やかで、何なら鼻の下を伸ばしていた


「なんなんだ、あの先輩…というか、あのネコ大丈夫か…??」

「おーい!!」


後ろから呼びかけられ、振り向く

そこに居たのは俺と同じ様に真新しい制服を着た1年生だ


「ん…だよ、お前か颯汰」

「なんだとはなんだ!折角幼馴染が迎えに来てやったってのに」


腕を回し、ぐいっと肩を組んでくるコイツは

幼馴染の香澤 颯汰、付き合いはいつからだったか忘れてしまったが

それほど長い付き合いだ


「つか、お前おじさ…親御さんたちどうしたんだよ」

「なんで言い直したんだよ、親父達はもう保護者席行ったー」

「ふーん…で、なんで俺のとこに?」


そう言った瞬間両頬を思いっきり片手で掴まれ

顔を近づけて…


「待ち合わせしてるのにいつまでたっても来ない綾澤 誠大くんを

迎えにきたんですがぁ!?」

「ふ、ふびばへんれした…」


普通に怒られた後両手で頬を揉みこむ

もう高校生にもなるのだから勘弁してほしい…誰かに見られたらどーすんだ

など考え出したと同時に、ぱっと頬から手を離し

そのままその手を俺に差し出す


「おう、わかった」


返事と同時に俺も手を握り返す


「んじゃ、武道場行こーぜ!」

「それはいいけど…お前場所分かるのか…?」

「知らね!だからここに着いた☆」

「お前さっき迎えに来たって言ってなかったか?」


颯汰は『細かい事は気にすんな!』とあっけらかんに笑い飛ばして

俺の後ろを歩く


「…俺も高校生か…」


後ろの颯汰に聞こえない様に呟く

見上げる空には綺麗な桜の花弁が舞っていた


―――――――― ……


『はぁー…終わったぁ…』

『ねー、部活見に行っていい!?』

『夕飯何にする?』


教科書を買い終わって教室からゾロゾロと出てくる新入生と保護者達

颯汰も例外なく両親と一緒だ

声を掛けようと近づくが…


「颯汰ー、明日はどうする?」

「お!明日コンビニ前で待ち合わせしようz」


颯汰が言い切る前に

颯汰の両親が割って入る…いや俺なんか居ないかのように話しかける


「颯汰、帰るぞお爺ちゃん達も、待ってる」

「明日からは笹村に送迎させるからね」

「は?()なんだけど!?ちょ、親父離せよ!せいたー!明日な!!」


颯汰が親父さんたちに引っ張っられて行くのを見送りながら手を振る

前から颯汰の両親があぁだったかと言われるとそうではない

俺の両親が行方不明になるまでは、優しい人達だったのだが

…流石にあぁも露骨だとキツいものがある


「…帰って、叔父さん叔母さんに電話しねぇとな」


一人で持って帰れる事が出来る量だが

何故だか岩を持っているかのように重く感じた


教室から歩いて行き、朝先輩に追い詰められた校舎裏に差し掛かった所で


『うわぁああぁ!!助けてくれぇええっ!!』


思わず足が止まり辺りを見渡す

叫び声が響きわたる、先生達も駆けつける様子が無い

震えそうな足と体を抑え込むように声のする方向に歩く、近づいていく程

鉄臭い匂いが強くなる、自分の体から嫌な汗が噴き出すのが分かる

匂いに近づききると同時に、先程まで聞こえていた声が聞こえなくなっていた


角を覗き込むと


朝、追っかけてきた先輩が倒れ込んでいる

血まみれで息も絶え絶えだ


「た…だずげで…ぐえ…」

「先輩だいじょ…ひぃっ!?」


だがそれよりも先輩の倒れている後方に

()()()が…いる


その何かはこちらに振り返ってきた

4、5mはあるであろうか


真っ白な肌に血がこびりついているのか赤黒く変色している

大きな目がついた頭が重いのか首を左右にユラユラと動かし

口元はぱっくり裂けていて嬉しそうな表情にも見える

場所の入れ替わった腕と足で俺達を追いかけようと姿勢を変えだした


「っ!!これっでも喰らぇっ!!」


先程買ったばかりの教科書、その中でも一番重そうな本をヤツの目玉にぶつけた


み゛ぢゅ……


と嫌な音が聞こえた後に声が響く


『お゛おおぉぉみ゜こぉあおおおお!!!』

「は、は!バケモンでも痛いんだな!!っ先輩逃げますよ!!」

「う…げぶ……ずぁ……」



奇妙な叫び声をあげのたうち回っているうちに先輩をどうにか背負い

その場から離れる、いや離れようとしたが

すぐに目玉の潰れたヤツに追いつかれた


『ぁある!!わえのほしへをぎぁぁああ゜!!!』

「何で追いついてっ…!っぐぉえっ!?」


足で俺を蹴飛ばす、俺も先輩も吹き飛ばされる

体全体に、ずくり…と重く鋭い痛みが走り出す


「いだいぃい、骨がっ、痛いぃだぁいいい、いだっ!!いだい!!!血が血が」


パニックになるには十分すぎる痛みだ

先輩はもう生きているか如何かも分からないレベルだ


ヤツはそんな事はお構い無く、むしろ嬉しそうにはい寄ってくる


「いやだ、やだやだやだ!!!しにたくない!!くるなっくるなぁ!!」


もう俺には泣き叫ぶ事しかできない、どれだけ命乞いをしても

目の前のヤツはニタニタと笑うだけ

痛みとヤツから逃れようと必死に暴れてはみるものの、

軽々とつまみ上げられ、腹を潰れない程度押されたり、足を持ち

顔を体を品定めするように人形で遊ぶかのように


「え…おぶっ…うぐぁえぅうう…ぶっ…!!」

「っくひゅ、いやだ、だれか、だれでもいいから、だすげでぐれぇっ!!」


両手で俺の右半身と左半身を掴みだした

嫌だ、こんな死に方嫌だ




やっときょう、入学しき、だったんだ、しにたくない、だれか助けてくれ

やだやだやだやだ、いたいいたいいたい、たすけてたすけっ





ーッドンッ!!!



衝撃と大きな音がほぼ同時に響き、俺はバケモノの腕から逃れていた

だが、高すぎるこのままだと死んでしまうが、もう受け身も取れそうにない


「あ……」


ぼんやりとした視界に映ったのは…

巫女さんの格好をした子供だ、何か言っているが聞き取れない

そう思っているとほぼ同時に


ざぶんっ


と水の中に落ちた後すぐに抱きとめられる

心なしか少しだけ痛みが和らいだ気がする、姿を確認しようと顔を動かす

そこには、鎧を纏った男の人が居た


「っぶない!!ギリギリ間に合ったな…坊や大丈夫か?」


怪我が怪我なので『いたい…』と言いながら首を振る

男の人は『そりゃそうだ』と言うと俺をゆっくり降ろす

隣には先輩がいる、よく見ると先程の怪我が消えていて安らかに眠っている

死んでいるのかと思い手を伸ばそうとする


「せ…んぱ……!?」

「大丈夫、今は眠ってるだけだ…さぁこれを飲んで」


鎧の男の人に制され頭を撫でられる、安心感で意識が飛びそうになるが

手に置かれた冷たいもので意識が戻る、何が置かれたのかと思い見ると


「かい……が、ら……み…ず…?」

「薬水だ、飲んだあと少し痛むが…すぐに良くなる」


鎧の人は微笑み、俺に水の入った貝殻を握らせる

だが、すぐに後ろの方でヤツと誰かが戦っている


『おぉぉおこおおぉ!!』


「ひぃっ」


さっきまでの事がフラッシュバックして、危うく貝殻を落としかける

鎧の人が手を支えてくれたが、直ぐに険しい顔をして後ろを見る

よく見ると俺達は水のドームのようなものに包まれていた


「…マツリちゃんだけじゃ厳しいか」


小さくつぶやくとまた、俺に向き直りまた優しげな表情で


「坊や、それを飲んだら…怖いかもしれないがここから出ちゃ駄目だぞ?」

「あ……でも…」

「大丈夫だ、見た目はこんなんだがかなり頑丈だからな」


そう言うと、頭を撫で…横に置いていた杖を持ち出し外に駆け出して行く

残された俺は…渡された水を飲み干す。少し痛みはしたがその痛みはすぐに消えた。


「…魔法使いかよ…」


そう呟き、水のドームの外側を見る。先程の鎧の男の人と巫女服の女の子がバケモノと戦っている、魔法のようなものなのか火や水などが飛び交っている


「きれー…だな…」


安全圏にいる事と、見慣れない…まるで絵本や小説の様な事が目の前で起こっている事に見惚れていた…が、すぐに現実に戻される事になる


「っぐぅ…!!」


水のドームにさっきまで戦っていた男の人が叩きつけられていた

かなり強く打ち付けられた様で少し意識が朦朧としているみたいだ


「大丈夫ですか!!?」


俺の声に辛うじて頷くが、立ち上がろうとしてもすぐに倒れ込む

それをバケモノが見逃すわけが無かった

巫女服の子を振り払い真っ直ぐこちらに向かってきた

このままだと全員、あのバケモノに殺される


『誰かに迷惑を掛ける彼に生きる価値があるとでも?』


ふとそんな言葉が頭に響く、背中に冷たい感覚が走る

颯汰を助けた時で…病院で颯汰と颯汰の親父さんが言い合いしていて…

颯汰の親父さんが…あの時しっかり俺をみて


そんな事を思い出したとほぼ同時に俺は走り出していた


「…っ!!」


俺が出たところで何もできないのはわかってる

誰かの役にたちたい、認めてほしい、そんな気持ちもある

でも、何よりも自分自身が"自分に生きてて良いんだ"と思いたい

こんな行動は意味を成さないかもしれない


「それでも…!!死にたくないし…死なせたくないんだぁあ!!」


男の人の前に出る、腰を落とし低く拳を構る。もう目と鼻の先までバケモノは迫っていた

効きっこないが、それでも拳を振りきった


「…は、へ…?」


大きな衝撃と共にバケモノが吹き飛ぶ、自分の拳を見るが当たった感触も痛みも無い、前を向き直すとそこには先程まで戦っていた女の子が俺の目の前に…


「う、浮いてる!?」

「む、妖が浮遊を使ってはおかしいのか?」


驚いて指を刺されたのに気を悪くしたのか、巫女服の女の子…いやよく見ると

猫耳に猫の尻尾…が2本ある


「猫又…なのか…!?」

「いかにも!妾は猫又族の長、名をマツリともうす!」


腰に手を当て偉そうにふんぞり返ったあと、手を差し出す

俺の名前を教えろとでも、言いたいらしい


「…誠大、綾澤 誠大だ」

「よろしい、では誠大1つ御主に尋ねる」


ニコニコした表情から一転、獣の目を鋭くこちらに向ける

その目に思わずたじろいでしまう。


「アレは神じゃ、信仰…存在を忘れ去られた荒神じゃ」

「あれ…がみ…?」


校舎にめり込んでいるバケモノ…荒神を目で追う

そして、次に後ろに居る鎧の男の人を指差す


「そして吾ら妖怪と人間が契約を交した者達が"神殺し"じゃ」

「神殺し…神様を殺すのか…?」

「端的に言えばそうじゃ」


『もっと言えば役目を終わらせてやるじゃがな』

マツリという妖怪の少女は頷きつつ付け加える

荒神は深くめり込んだのかまだ抜け出そうと悶ている

だが、それも時間の問題だ


「綾澤 誠大」

「な、なんだよ」


驚いて少しどもった声が出て、マツリの方に向き直る

マツリのその手には金色のブレスレットに水色の宝石2つに赤い宝石が1つ

ついたものを差し出している


「頼む、妾達に力を貸してくれ」


先程の恐怖が蘇る、自分があんな奴らと戦うかと思うと足が竦む

死への恐怖が体の中をぞわぞわと暴れ回る


「俺には…!」


俯き無理だと、言おうとした瞬間フラッシュバックした言葉


『誰かに迷惑を掛ける彼に生きる価値があるとでも?』


あの時の冷たい声、表情

…俺が、僕が何したんだ?あの時、颯汰が危なかったから助けた

結果怪我させちまったけど…あそこまで、言われる道理は何もない筈だ

なぜかは分からないが、今になって怒りが沸々と湧き上がってくる


顔を上げるとマツリが悲しそうな顔で項垂れている

少なくとも今ここで悲しむ奴が居る…


「…俺にでも…」

「…?」

「こんな俺でも誰かを…助けられるか?」


情けないと自分でも思ってしまう質問だが、それでも誰かを助けられるなら

待っていたと言わんばかりにマツリの広角が上がる


「…出来るとも、妾と御主と共になら!」

「っ…!わかった、やるぞ!!」


手を取り、ブレスレットを手にはめる少し緩かったそれは、俺の手首にしめつけ過ぎない程度に締まる


「これで契約は成立じゃ…さぁ反撃開始じゃ!!」

「っ…おう!!」

「誠大、御主が戦える姿を思い浮かべ…妖化と云えば妾の力を貸してやる」


ブレスレットに手を起き、姿を思い浮かべる

小さい時に読んだ小説の主人公みたいに…強く、速く戦える奴に…!!


「…妖化っ!!」


そう叫ぶと同時にマツリの姿が炎の様な姿になり俺を包み込む

驚き一瞬後ずさりしてしまうが、炎そのものは熱くとも何ともない


ぐるぐると俺の俺の体を取り囲み服が真っ赤な水干の様に変わり、マツリと同じ三毛猫の猫耳と尻尾が生え、変身が終わった


「お、おぉ、何だこれ、うぉっ耳だ!?尻尾だ!?」

『うむ、無事成功したようじゃな!』


耳と尻尾に驚いているとアタマの中にマツリの声が聞こえてくる

大音量で音楽を聞いているみたいに頭と耳がガンガンと響き渡る


「うっわ、五月蝿え!?」

『うむ、すまぬ…これくらいじゃの、さぁ実戦じゃ…来るぞ!!』

「え?」


後ろを見ると抜け出した荒神がこっちに猛スピードで向かってくる

同様しているとマツリから指示が出る


『誠大飛べぇっ!!』


マツリの指示にしたがい真上に飛ぶ

いやもう、飛んだ、軽く10m程だろうかそのまま空中で浮遊している


「あ゛ぁぁあ!?たっけぇええ゛!?」

『これくらいで狼狽えるな!!その高さからの勢いで殴れ!!』


こんな高さ死ぬだろう!?…など思いながらもどうにか拳を構える

…俺の落下位置と、荒神が俺を探している様だ


「どこ狙えばいいんだっ!?てかどう攻撃したら!?」

『妾の攻撃手段は爪か打撃じゃが、基本は(ぬし)の想いをどれだけ具

現化できるかじゃ』

「…俺の想像力次第ってとこか?」

『そうじゃ、して狙うのは…背中じゃ』


荒神の背中を見るとミイラのような白いものが埋もれてくっついている


「あれは…?」

『元の"神"じゃ、原因は分かっておらぬが…皆あの様に死に絶え荒神へと成

り果てる』

『…誠大、アレを終わらせてやってくれ』


少しだけ悲しそうな声に頷き落下する、風圧が呼吸をしずらくする

その中で思い浮かべるのは、太く鋭い炎を纏った爪で切り裂くイメージで…

距離にして1m程、荒神も気づいて攻撃の為に脚を振り回してくる

だが、それよりも速く強く攻撃を


「当たれぇ!!」


大きくなり過ぎた爪の重さに負けそうになりつつ、神だったモノを切り裂く様に焼き払う。カラカラに乾いていたのか、あっと言う間に灰となってしまった。

同時に奇声を上げながら、荒神は燃え盛る。周りの何もかもを巻き込んでしまいそうな程暴れ苦しみ、そして最後は…また同じ様に灰へと成り果てた。


「は…っ…は…っ…わぁっ」


呆然として呼吸を整えていると急に妖化を解かれ、思わず尻餅をつく

目の前にはマツリが立っていて、荒神がいた所を見つめていた


「お…わったのか……?」

「この荒神との戦いは終わった、だが信仰を喪った神がこの様に荒神となる事態が頻繁に起きておる。其方ら人間の為にも、我ら妖怪の為にも」

「誠大、これからも妾と伴に神殺しとして戦ってくれるか?」


再びマツリが手を差し伸べてくる、今度は先程とは違い悲しげな表情ではなく、何かを確信している…そんな表情だ


「…一度した約束は破らねぇよ、これからよろしくなマツリ」


俺は改めてマツリの手を握る

ここから、俺が神殺しとして…妖怪や神に翻弄される人生が始まるのであった


ー1話 終了ー

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