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アベレージヒッター~平凡な俺の異世界生活~  作者: 勝地瑛星
第1章 アベレージヒッター
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5.郷に入っては郷に従え

 解体作業はほとんどクレアがやってくれた。熊の解体、というか動物の解体なんて平凡な生活を送ってきた俺に出来るはずがない。ただただクレアが手際よく捌く様子を眺めていた。


 解体作業が終わると目的の毛皮が手渡される。ずっしりと重い。10㎏はありそうだ。あの巨体を覆っていたのだから当然か。生まれて初めて見た熊の毛皮を右手に抱える。これで、得体のしれない異世界人から金髪美少女の荷物持ちに無事昇格。やったぜ。


「じゃ、行くわよ。まだ辺りに魔物がいるかもしれないから離れるんじゃないわよ」


「分かった」


 颯爽と歩くクレアに俺はスタスタとついていく。


 町へ向かう道中はクレアが色々話をしてくれた。そのほとんどはクレアに見蕩れていて聞いておらず、何度も「ねぇ、話聞いてるの?」と言われた。断片的に聞こえた話を要約するとこうだ。


 ここら一帯はノブレス王国の支配下にあり、近くの町はランスというらしい。そしてさっきクレアが言っていたように、この森は現在、魔物が異常発生しており、関係者以外立ち入り禁止となっている。クレアは「冒険者」としてこの森の魔物退治を依頼されていたため、この森にいたとの事。


 やっぱり異世界というだけあって冒険者という夢のある職業があるようだ。もちろん魔物退治っていう需要ある仕事があるので遊んでいる訳ではないはず。しかし、都会の喧騒の中出勤し、7時間近くパソコンと睨めっこしている仕事をしていた俺からすれば、華のある仕事に感じる。冒険者かあ……。俺も魔法とか使えたりしないかなあ。


 などと考えていると、今度はクレアが質問をしてきた。


「ショウタがいた元の世界どんな所なの?どんな事してた?」


「え、えっと……」


 俺は元の世界の事や自分の職業などをそれとなーく教えた。あまり沢山の事を教えても情報過多だと思うので、魔法の代わりに科学が発展していること、自分がサラリーマンという職業であるということなど最低限の事のみ教えた。


 クレアは、俺の話を終始目を輝かせながら聞いてくれた。俺然り、クレア然り、知らない世界や物事は往々にして人をわくわくさせるみたいだ。


 またひとつタメになった所で城門らしき建物が見えてきた。中世ヨーロッパ風の城門は石で造られており、門の前には甲冑を着た兵士が2人立っている。門を通るにはあの2人を倒す……じゃなくて許可が要りそうだ。


「お疲れ様、クエスト帰りか?」

 1人の兵士が尋ねる。


「ええ、ちょっと時間かかったけれど楽勝だったわ」


「そうか、アストラルベアーを楽勝と言うとは流石A級冒険者だな。ところで、後ろの男は誰だ? 見たことない顔だな」


 兵士は俺の事を不審者のような目でジロジロと見てきた。まずい、怪しまれている。何か言った方がいいのか? でも下手なこと言ったら追い返されそうだし……


「ああ、この人は途中であった商人よ。この辺は初めて来たらしくて道案内を頼まれたの。代わりに毛皮を運んでくれたわ」


「そうなのか?」

 ギロリとこちらを睨む兵士。


「ああ、そうだ。森で迷っていた所を助けて貰ったんだ」

 

「まあいい。町中で騒ぎは起こさないでくれよ。さあ、通りたまえ」


 ゴゴゴゴゴと音を立てながら城門が開く。クレアの機転で咄嗟についた嘘だったがなんとかなったようだ。


「ありがとう。さあ、ショータ行くわよ」


 クレアの後に続いて門を通る。目の前にはこれまた中世ヨーロッパを彷彿とさせる街並みが拡がっていた。大勢の人で賑わう大通りには、貴族の様な服を着た人で溢れかえっている。大通り沿いの店に目を移すと野菜や果物らしき物を売っている店、辞書みたいに分厚い本を売っている店などが並んでいる。さながらフリーマーケットのようだ。近くを通り過ぎる人々は皆、俺の事を物珍し気に見ている。なぜだろう? 俺、なんかしたかな……。


 クレアに連れられ、まず向かった先は「銀の盾」と書かれた看板がある大きな建物。看板の文字は見たことなかったがなぜか読めた。転移特典というやつのようだ。「銀の盾」というのは、ギルドの名前らしい。クレアと一緒に中に入ろうとしたが、手前で止められた。


「毛皮を買い取ってもらうんだろ? もうすぐそこだし運ぶよ」


「い、いやいいの。それぐらい私でも運べるし、それに……」


「それに?」


「とにかく、ショウタは大人しくここで待ってて。すぐ戻るから」


「ああ……」


 何か訳があるみたいなのでここは素直に従っておく。5分程でクレアは戻ってきた。


「お疲れ、高く売れたか?」


「え? うん、まあまあね。相場より少し高いぐらいかしら。ここまで運んでくれた報酬代わりに何か買ってあげるわ」


「いいのか? 道案内してくれただけでも十分な報酬だと思うんだが」


「いいのよ、人の好意は素直に受け取りなさい? まずはその恰好から何とかしないとね。それじゃあ目立ってしょうがないわ。私がいつも行く仕立屋さんで服を着替えましょう」


「あ、ああ、そうだな。お願いするよ」

 そうか、この格好が珍しいからそんな目で見られていたのか。彼らからしたら違和感でしか無いのだから当然だな。『郷に入っては郷に従え』、『When in Rome, do as the Romans do.』だ。ここはローマではないが。


 また歩き出すクレアについていく。本当に何から何まで至れり尽くせりだな。クレアには足を向けて眠れない。

前回から大分時間が経ってしまいました。ギルドの名前は私の好きな某ゲームから拝借しました。「銀の盾」と聞いて何のゲームかピンと来た人はすごいと思います。

また、一応この世界は独自の言語があり、日本語とは違います。しかし、主人公は転移特典で文字の読み書きができます。看板に書かれた文字などはその独自言語ということを覚えていただけると幸いです。


最後まで読んでいただきましてありがとうございます。


「いいね」やブックマーク登録をして頂けると執筆へのモチベーションが上がり、投稿頻度も多くなりますので是非ともご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。


また、誤字脱字等ございましたら、報告していただけると幸いです。

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