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家族三人で異世界転移? 羊な車と迷走中。  作者: 澤梛セビン
二章 シーオマツモ王国
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30話 大図書館

魔導城に入城するよ

 魔導城の入り口は、無駄に広くなっていた。

 オルフェナと一緒に上を見上げる。

 そこには、見上げるほど大きな扉が外に向けて開かれていた。


「なぁ、この無駄に高さがある門は、なんのための門なんだ?」

『まじめに答えるか、遊びで答えるかによって見解が変わるが、どっちがいいんだ?』

「やめたげて……」


 城門をくぐると、そこは既にエントランスになっていた。

 その造りは、まさに荘厳華麗な装飾と言う言葉が似合う、無駄に豪華な内装になってている。

 壁には精緻な装飾がされ、金銀が煌びやかにあしらわれていた。様々な宝石も埋め込まれている。

 正面に大きな扉があり、その扉の左右には、二階に上がる階段が緩いカーブを描いていた。まさに、ザ・エントランス。


 なるほど、日本人がイメージしている城の構造か。

 本来、城というのは政を行うと言うより、防衛の拠点としての役割が大きい。そのため……いや、やめよう。オルフェナの視線が痛い。





 そのエントランスの真ん中には、星のモニュメントが建っていた。

 どうやらそれが、案内板になっているようだ。


 このまま、まっすぐ行くと謁見の間。左右の階段を上がったところが執務室になるようだ。見上げれば、天井には立派なシャンデリアが吊り下がっていた。

 そして、右に行くと城主の住居、左に行けば今日の目的地、国立蔵書安置殿に行くことができる。


 ……まぁ大図書館でいいか。

 今日の目的地でもある、大図書館に向かうことにした。





 入り口のプレートにスマートフォンを翳すと、扉が音を立てて開いた。

 そこは小部屋になっていた。小部屋の奥にもう一つ扉があって、今は同じように開いていた。


 部屋に入ると、急に身体の動きが重くなった。

 何となく頭も重い。思考が引き延ばされているように感じる。

 進むにつれて徐々に、身体が軽くなっていき、奥の扉をくぐる頃には身体の動きが戻っていた。


「なぁ、オルフ? 今のは何なんだ?」

『あれか? あれは時間を調整する空間だな。

 そもそもこの……我も大図書館と言うが、大図書館は外界とは時間の流れが違う話はさっきしたな?」

「ああ、確か100倍の差があるんだったっけ?」

『うむ、そうであるな。

 外の1時間は、この大図書館の中では100時間になるのだが、それだけの時間差があると、慣らし空間が必要になるのだよ』


 ドアが軋む音とともに、入ってきたドアが閉まった。

 近くの壁にさっきと同じようなプレートがあることから、出るときにそのプレートにスマートフォンを翳せば、また扉が開いて外に出られるのだろう。


『篤紫は時間停止の法則は知っておるか?』

「それくらいはな。光より速く進めばいいんだったかな。

 てもそれって物理法則じゃないのか? この魔法がある世界でもいっしょなわけ……あるのか?」

『物理法則自体は、全く一緒だな。魔法でも、それほど物理法則を逸脱することはできんのだよ。

 では篤紫よ、止まっていた物が一瞬にして光速になると、どうなるか分かるな?』

「待って、イメージしてみる。

 光速に近づくには、より光に近い早さで動く必要があるから。

 ……そもそも、身体が耐えられるのか?」

 空気抵抗とかかかって、前に進めないイメージ。速く進もうとすると、絶対に壁にぶつかるよな。

 ああ、そうか。


「あの空間を経由することで、身体への負荷を最小限にしているってことなのか?」

『ふむ、正解だな。

 よく篤紫が読んでいた本では、魔法を使って簡単に時間を止めていただろう。

 だが実際に時間を止めるには、いくつかの段階を経なければ人間の軟弱な身体なぞ、時間が動き出したとたんに崩壊する。

 それだけ生身の身体で、時間を操ると言うことは難しいのだよ。

 もっとも、停止空間で一切動かなければ、何の影響も無いがな』


 なにそれ時間停止怖い。

 そもそも、そんな高尚な魔法なんて使えないから、心配する必要は無いか。魔法なんて生活魔法で十分さ……しくしく。





 そこは、さすが大図書館、と言うべき蔵書量だった。

 空間も拡張されているらしく、オルフェナいわく学校の体育館100棟分の蔵書量を誇るらしい。わからん。

 またここに収められているのは、世界中の書籍、過去一万年分なのだとか……また意味の無いほど盛大なスケールだな。


 いずれにしても、このままだと目的とする書籍が探せない。

 そのために、本を読む机にある、この空間専用のソウルタブレットを使うことで、目的の本を検索することができるのだとか。


 いや、すごいハイテクなんですけど。

 いわゆる、インターネットの原理に近い物がある。検索をかけると、手元に本が転送される様は、スマートフォンでブラウザ検索していた感覚と全く一緒だった。

 考えなくても、感覚で使えるのは非常にありがたかった。



 もちろん休憩室もあり、簡易キッチンやベッドルームなどもあった。

 魔石の自動販売機もあるぞ? どこで使うのだろう。


 ……まて。


 …………まさか、これか?

 まさかまさかの、マッサージチェアがあるではないか。

 目眩がしてきた。


 ともあれ、ここに入ったのは確か2時30分位だったか。

 夕食は5時からだったから、4時くらいまで1時間半か……中の時間でなんと150時間。すごい。


 じっくり、ゆっくり。魔道具に関する本を漁ることにした。

 途中の、オルフェナの解説が地味にありがたかった。







『ふむ、桃華が時間を停止させたようだな』

 休憩や睡眠を挟みながら、140時間ぐらい経過した頃だったか。オルフェナの呟きにはっとして顔を上げた。


「ちょっと、意味が分からんぞ」

『空間の揺らぎと、膨大な魔力が動いたのが分かる。

 む、電話がかかってきたな』

 オルフェナが、虚空を見つめてじっとしている。


『うむ。桃華どうしたのだ?

 待っておれ』

 何かが起きたらしい。珍しく電話に出るのに、いつもの念話のような出方ではなく、声に出していた。

 オルフェナが目を閉じて集中し出した。


『――――――』

は?

何かものすごい高速で喋ったのだが。

全く聞き取れなかった……。


『あとは桃華次第だが、おそらく車の我に転送されるだろうな』

 ……あの。さっきから話について行けない。

 よほど変な顔で口を開けていたらしい。


『何を呆けておる。しっかりせんか。

 夏梛とカレラ殿が暴漢に襲われて、桃華が時間停止の魔法を使ったようだ。

 5日前の話は憶えているだろう?

 停止した時間の中で、かなりの距離を強引に動いたようだ。桃華が時間の流れを戻すと、身体が崩壊する』


 つまり……。

「桃華が……死ぬ?」

『率直に言うと、そういうことだな。そのためにわ「嘘だ!」――』

 思わずオルフェナの言葉を遮った。


 そんなのあり得ない。

 意味が分からない。絶対に嘘だ。


 涙が流れてきた。

 身体が震える。思うように力が入らない。


 こんな場所で油を売っている時間なんてない。助けに行かなきゃ。


『篤紫よ、どこへ行くのだ。

 もう、間に合わんぞ。とりあえず落ち着け』

「ふざけるな、これが落ち着いていられる状況か?

 桃華が危ないんだ、早く行けば間に合うかもしれない。今からでも間に合うはずだ。急がなきゃ」

『駄目だ。時間の流れが違いすぎる』


 篤紫は、その場で崩れ落ちた。

 もう、だめなのか……。視界が真っ暗になる。


 その時、大図書館の扉が開く音が、静まりかえった世界に響いた。

 思わず篤紫は顔を向けた。


「んん? ここに人がいるなんて珍しいね」


 そこには一人の女性が立っていた。

 長い黒髪のその少女は、絵本の魔女がよく被っている黒のとんがり帽子に

、黒のローブ。手にはひん曲がった杖を持っていた。


 まさに魔女の装い。


 その姿は、テレビでよく見た魔女っ娘そのもの だった。


既視感を感じますね……

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