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家族三人で異世界転移? 羊な車と迷走中。  作者: 澤梛セビン
二章 シーオマツモ王国
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27話 魔導城

篤紫はギルドカードを作っただけで満足した(マテ

 ギルドを出ると、すでにお昼になっていた。

 一旦、宿に戻ることにする。


「そう言えばさっき、何の気なしにスワーレイド湖国の銀貨で払ったけど、大丈夫だったのかな?」

 当たり前のように銀貨を渡して、受付嬢のオルガさんも問題なく受け取っていた。

 地球の常識では、国が違うと大抵貨幣単位が変わっていたから、その都度、その国のお金に換金していたはず。


「それなら大丈夫よ。通貨に関しては、世界共通なのよ。

 大きさが精密に決められていて、材質も鉄貨から始まって、銅貨、銀貨、金貨、白金貨まで共通硬貨なの。それぞれの国の紋章のみ打刻が許されているから、コレクションとして集める人もいるわ。


 実はね決まっている大きさでさえ揃えれば、勝手に作ってもいいのよ。

 金属自体に価値があるって考え方かしら?

 ただし、鉱脈がある場所は凶悪な魔獣がいたり、ダンジョンの深部だったりするから、実際には現実的では無いけれど」

 そう言って、シズカさんは手をヒラヒラ振った。


 偽造貨幣の存在自体が無い代わりに、そもそも材料を揃えることが困難とは、なるほど良くできた仕組みのようだ。




 宿に戻ると、夏梛とカレラちゃんが起きていた。

 3人でおなかすいたから、ご飯を食べに外に出かけようか話していたところだったようだ。


「ここの宿は、お隣の料理店と中で繋がっているのよ。お城の二人以外はみんなそろったから、お昼にしましょうか」


 ロビーを横切るときに、フロントの受付嬢に呼び止められた。

 どうやら、宿泊客は食事代が割り引かれるようで、人数分のチケットを渡してくれた。


 考えてみれば、昨日のお昼辺りからゆっくり座って食事ができなかったな。食料自体は桃華が屋台飯を大量にストックしていたため、食いはぐれる心配とは無縁だったけれど。

 さすがに、次から次に出てくる調理済みかつ、調理し立ての食材に、全員目をまん丸くしてたっけ。


 食事のメニューは、日本のファミレスメニューだった……何だろう、作為的なものを感じるのは、なぜだろう。

 スワーレイド湖国でも城前の喫茶店しか寄っていなかったから、ほとんど比較対象がないのだけれど。





 そして、なぜか午後は女性陣と男性陣で別れることになった。

 新しい衣類が欲しいのだとか。

 確かに、スワーレイド湖国では見られない、華やかな服を着た女性が街を歩いているのを見ると、欲しくなるのも頷けるが。

 でも、間に合うのかな? この世界ってオーダーメイドでしょ?


「それじゃ篤紫さん、迷子にだけは気をつけてね」

『安心するがいい、我がいれば篤紫が迷うことはない』

「うん、オルフ、お父さんのことお願いね」

「オルフちゃん、あそこに見えている尖塔が街の中心だから、迷ったらそっちを目指せばいいわ」

「また夕方だっこさせてね」

『おぬしらも、気をつけるのだぞ。

 何かあったら、桃華か夏梛のスマートフォンで我に電話するがいい』


 篤紫は空気だった。

 なにこれ、けっこうへこむ……。





 噂の国立魔導学園は文字通り国の中心に建っていた。

 城の形は、おとぎ話のシンデレラ城を一回り大きくした感じか。荘厳華麗な建物だ。

 その城を中心にして、円状に多数の城が建っている。敷地だけでも相当な広さであることが覗える。

 城壁の八方に据えられた城門から中心まで、ざっと見ても20分以上かかりそうだった。


 ……正直言おう。これじゃない。

 シーオマツモ王国の名前の由来は……まあなんとなく分かる。お城の規模歴史からすると、4000年とか5000年の歴史があるのだろう。

 せめて、日本のお城にして欲しかった。

 これ、絶対に大昔に日本人がやらかした後なんじゃないか?


 篤紫は大通りの真ん中で四つん這いになってうなだれた。

『のう篤紫よ、いつもの儀式は構わんが、目立っておるぞ』

 う、うっさい。






 跳ね橋を渡り城門をくぐる。

 城壁は前後が深い堀になっているため、もう一度、跳ね橋を渡ってやっと敷地内に入ることができた。

 深い堀には綺麗な水が湛えられていて、中を色とりどりの魚が泳いでいる。覗き込むと、底から水が湧き出ていた。

 おそらく要事にはかなり有用な防衛拠点になりそうだ。


『真ん中のお城が、魔導城であるな。この国の王族貴族が政を行っている場所だな。

 それと同時に、あそこは大図書館でもあるぞ』

「図書館? お城じゃないのか?

 いや待て、あれって国立魔導学園じゃないのか?」

『うむ。魔導学園はあれではないぞ? あくまでも中心にあるのは魔導城だ。

 今は見えぬが、あの城の周りにある建物の一つが、国立魔道学園だな。


 それにあの城自体は、今でも個人のものなのだよ。

 太古の大魔導師メルフェレアーナ・メナルアが今でも所有しておる。一万年ほど前に世界を導いた女傑として有名であるな』



 魔導城へと続く道を歩きながら、周りを見回す。

 城壁の中は公園になっていた。

 見える範囲には、たくさんの池がある。そのそばには、必ず小山があって、岩と樹と滝が綺麗に配置されていた。

 それぞれの池のそばには林もあって、その池のテーマに合わせているのか、それぞれ植えられている樹の種類は異なっていた。


 ……これ、日本庭園じゃね?


 テーブルとチェアーもあちこちに設置されていて、家族連れが思い思いの時間を過ごしているようだった。

 子ども達が、積もった雪で雪だるまを作っている。

 完全に和洋折衷で違和感はあるけど、風景自体はテレビ番組とかで見たことがある。



 もう一度言おう。日本庭園が再現されている。

 ただ、林の隙間から見えるのは、西洋のお城なんだよ。

 ああ、もうこれ、訳分からんぞ。



「で、そのメルフェレアーナさんは、さすがにもう没してるわけなんだろう? いわゆる歴史的建造物のくくりで国が管理しているわけだ」

『いや、まだ生きておるぞ?』

「はっ? マジで?」

『うむ、今は世界旅行に出ておって、行方はわからんようだがな』

 うわ、なんてチートだよ。


「しかしオルフは何でも知ってるんだな」

『うむ、我のデータベースに入っているだけだぞ』

「そですか」





 魔導城に近づくと、今度は周りに建っている城に目が行く。

 そこは、まさに城博物館だった。

 見える範囲でも、建築様式が全て違っている。

 あからさまな城だけでなくホテル様式のものもあれば、ギリシアの神殿様の建物まである。ちなみに、頑なに日本の城はない。


 目がクラクラしてきた。


『ホテル様の茶色い建物が国務機関。国の運営自体はそこにいる役人連中がやっておるぞ。

 神殿様の建物が国立魔導学園であるな。

 他にも、ここからは見えぬが、全部で8つの建物があって、それぞれに国の重要な機関が入っておる。


 全ての施設に特に入場制限はされておらぬから、入ったからと言って追い出されることはないな。

 もちろん、魔導城にも入れるぞ。

 むしろ、篤紫が今必要としているのは、魔導城の大図書館ではないか?』


 さんざん勧められたからか、国立魔導学園に用事がある気になっていたけど、確かに自分は本の虫。大図書館の方が性に合っている気もする。


「ちなみに大図書館には何か制限があるのか?」

『入場にソウルメモリーの読み取り機があるだけだ。

 だが、それが最大のセキュリティーだな。中の時間も100倍に延ばされておるから、食料や寝袋を持参していかないと大変らしいがな。


 読み取られた情報だが、出るときに異常がなければ自動的に消えるようだ』

 想像を絶するセキュリティーだな。

 むしろ、地球のような個人情報ダダ漏れのザルセキュリティーに比べたら、恐ろしく高度だ。

 これが魔術による制御なのだろう。夢が広がる。


「ちなみに、異常ってどんな状態が異常と判断されるんだ?」

『蔵書の破損や、中の設備の損壊、あとは本を盗んだりすると記録に残るぞ。

 いずれにしても、後で城主から請求が来るだけだが』

 それが一番怖いです……。


 ともあれ、オルフェナの案内で、篤紫は魔導城に歩みを進めた。



 てか、オルフェナのデータベース、なんなの?


次回、その頃の女性陣は……?

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